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コンプさんのエッセイ

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マジシャンコンプレッサーのエッセイ。活動を通じて感じたことを書いています。毎月発行している「コンプレッサー通信」で連載しています。
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記事一覧

人生初のマジックライブで学んだこと

十年以上前、人生初の「単独自主ライブ」を開催、活動を飛躍させる大きな節目となった。 マジシャンになったばかりのあの頃、ステージの無い路上、泥酔の観客しかいないパーティーなど環境が整っていないところでの出演が多かった。 プロとしての現場力を磨くありがたい場ではあったけれど、ウケない理由を環境や観客のせいにしてストレスを感じることが多かった。 「場は自分でつくるもの」 落語家師匠のお言葉をきっかけに、自由に演出ができる、言い訳ができない環境で行う自主ライブの定期開催を決め

本物と偽物

vol.71/コンプレサー通信2022年8月号掲載 一ドル銀貨を大量に使うマジックを演じたくってマジックショップにアクセス。 本物を買えば一枚九千円ほどの銀貨も手品用の偽物コインならば一枚六百円。 本物かどうかは関係のないマジックだからレプリカを注文してみる。 届いたコインを見てびっくり、本物を知らない人がみたら偽物だとは気づかないのではないかと思う仕上がり。 ずっと使っている本物の銀貨と見比べてみたら真新しい偽物のほうがキレイだと感じてしまい、九千円と六百円の価格

本名あっての芸名

vol.70/コンプレサー通信2022年7月号掲載 私の芸名はコンプレッサー。 活動してまもない頃、控室にコンデンサー様とかコンプレッシャー様などと間違えて書かれていた時は笑っちゃったな。 コンプレッサー本来の意味は圧縮機だけど、富山を拠点に長く活動を続けてきたから「コンプレッサー=マジシャン」と認知している人も多くなったなと思う。 それでも、芸名の由来を聞かれることは今でも多い。 〈芸名の由来〉 まだサラリーマンだった頃、同僚とコンビを組んでお笑いイベントに参加す

マジシャンはアスリート?ウォーキング中に思ったこと。

vol.42/コンプレサー通信2019年4月号掲載 マジックで使う銀貨を数枚持って、ウオーキングスタート。 コインマジックの稽古をしながら歩くのだ。 手をあっちこっちに動かしながら歩く姿はちょっと怪しいだろうなと思う。 「おい、俺の指!ちゃんと動いてくれ!」 と叫びたくなる。 新しいテクニックをマスターするにはその動きを繰り返し練習して、手や指の必要な筋肉や神経を鍛えるしかないのだ。 地道なトレーニングをしていると、マジシャンはアスリートみたいだなぁと思う。

「パックスモール・プレイビッグ」小さな道具で最大の効果を

vol.43/コンプレサー通信2019年5月号掲載 山の中にある桜の名所でのマジックショーへ。 あいにくの空模様。 雨が降ったりやんだりの微妙な天気。 あぁ、困ったなぁ。 屋根のない野外のビッグステージ、道具を濡らすわけにはいかないからね。 「傘のイリュージョンはピッタリだね!」 アシスタントのともやんが言った。 小さなダンボール箱にともやんが入って傘を数十本刺すというお得意のイリュージョンだ。 ホームセンターで手軽に材料が揃う使い捨てマジックだから濡れても

失敗を笑い飛ばせ!納車一週間で車をぶつけ、心も凹んだときの話。

vol.44/コンプレサー通信2019年6月号掲載 車を縁石にガツンと乗り上げてしまった。 頭が真っ白、新車のハイエースが納車されてまだ一週間しかたっていないのに。 「私は動揺なんてしていませんよ」 というフリをしながら運転席を降りる自分がおかしい。 確認すると助手席側の下のほうに凹みが。 泣きそうになるコンプさん。 新車を凹ませたという妙な恥ずかしさと後悔で心の中にモヤモヤが広がっていく。 修理までの間、そのまま過ごすことに。 意識しないと誰も気が付かない

ドタバタなステージで「環境のせいにしちゃいけないな」と思った話。

vol.45/コンプレサー通信2019年7月号掲載 公民館祭りでのマジックショー、司会役の女性がコンプさんを紹介している途中にマイクが切れた。 何かトラブルがあったらしい。 そんな中、登場曲が流れたのでステージへ。 一礼して、しゃべろうとしたら司会の女性が再びしゃべりはじめてズッコケた。 このようなイベントでは、環境が整っていないから仕方がないのだ。 マジックショーが始まり、客席の集中力が高まっていくのを感じながら大好きなロープマジックを進める。 一番の見せ所で

生まれ変わるきっかけは…壊れていたチャイニーズステッキに学ぶ

vol.46/コンプレサー通信2019年8月号掲載 マジックショーがスタート、少し冒険してみることに。 何度演じても盛り上がらず、納得がいかない『チャイニーズステッキ』を取り出した。 『チャイニーズステッキ』は2本のステッキと糸が織りなす古典マジック。 シンプルなだけに演じ方が難しく、何度も挑戦とお蔵入りを繰り返しているのです。 ちなみに、コンプさんが使っているのは、現在入手困難な日本製で、数年前に運よく手に入れることができたお気に入りのもの。 「古い、パズルのよ

「不安」は怖くない!? 娘がおびえたゾンビの正体

vol.47/コンプレサー通信2019年9月号掲載 「ゾンビが来たらどうしよう」 夏休みのある日、一人でお留守番をすることになった小学二年の娘が不安そうな顔をしている。 ママが帰ってくるまでの、ほんの三十分ほどなんだけどね。 昨夜観たゾンビ映画を思い出したらしい。 「ゾンビなんていないから安心して!あれは映画の中の話だからね」 と、まだ現実と空想の区別が曖昧な娘をなだめるコンプさん。 「冷蔵庫のケーキ食べていいよ、食べ終わるのに十分くらいかかるかな?ユーチューブ

開演時間を間違えてマジックショーをスタートした話。

vol.48/コンプレサー通信2019年10月号掲載 ショッピングセンターでのマジックショーがスタート、三十分間の公演だ。 司会者も不在、すべておまかせという気軽な現場だけど、観客が少なくちょっとさびしい感じ。 そのお客様たちも、なぜか微妙な表情でこちらを見ている。 「今日は少なめのお客様ですね、途中で帰ると目立ちますよ」 軽く笑いをとりながらマジックショーを始めると、どんどん人が集まってきた。 ショーの終盤、会場に並べられた椅子がすべて埋まり立ち見客もでてきた頃

プロマジシャンになったばかりの頃、大先輩のマジシャンからいただいた御言葉

vol.49/コンプレサー通信2019年11月号掲載 佐渡島でのマジックショー、カーフェリーに乗って会場入り。 出番直前、会場前でソワソワしているコンプさん。 台風の影響で、翌朝乗る予定だった船の欠航が決まったのだ。 状況によっては、二、三日本土に帰れないかもしれない。 大きな仕事が立て続けに入っているのに・・・。 「あ、マジシャンの方ですね!」 出演するパーティー会場からフラリと出てきた女性に声をかけられた。 「なんだか不安そうな顏をしていますね!」 ガラ

校歌の効果。あの頃、歌詞の意味なんて考えもしなかった。

vol.50/コンプレサー通信2019年12月号掲載 「ともやん、一曲歌って」 ショーを終えて車での移動中、睡魔が襲ってきたコンプさん。 お世辞にも上手いとはいえないアシスタントのともやんの歌で、眠気を覚まそうというわけ。 「タッタラリラー」 前奏からテンションマックスのともやん。 これは効果がありそうだ。 「はんにゃの~の~」 歌い出したところで、小学校の校歌だと気が付いた。 おもしろい選曲、懐かしいなぁ。 ともやんとは同じ小学校に通った幼馴染。 もう

年老いたら、どんな手品師になりたいかな。

vol.51/コンプレサー通信2020年1月号掲載 大規模なパーティーでのイリュージョンショーを終え汗だくのコンプさん。 剣を刺したり、縛ったり縛られたり。 主催者様のご要望で、大がかりなマジックだけで約一時間の公演を行ったのだ。 手先で演じるマジックとは違い、準備なども含め、なかなかの運動量だけど、客席の反応が疲れを吹き飛ばしてくれるのね。 充実感が半端ない。 汗を拭きながら呼吸を整えていると、年老いたアマチュア手品師さんのエピソードを思い出した。 -----

動揺した時の対処法

vol.52/コンプレサー通信2020年2月号掲載 メールが届き、件名をみて笑っちゃった。 「コンパオフィス様」 なんとご機嫌なネーミング。 「マジシャン コンプレッサー」が芸名だから、「コンプオフィス」が正解ね。 コンパオフィスだったら、皆さんからコンパさんと呼ばれそう。 毎日遊んでそうな名前だね。 以前、控室の表示が「コンデンサー様」になっていたこともあった。 ご担当者様は大慌てだった(笑)。 コンプさんもその昔、司会のお仕事で市長さんのお名前を間違えた