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Complex Catenaryです。旅のこと、映画のことを話したい。note始めました。 旅にまつわる etc. 映画をたどる Something 映画をめぐる Adventure

最近の記事

記憶すること、語り継ぐことの大切さ。映画「返校 言葉が消えた日」を見る。(※ネタバレあり)

はじめに 「返校 言葉が消えた日」は台湾の白色テロ時代を描いた作品だ。戒厳令(1949~87年)のもと、言論の自由が厳しく制限され、相互監視と密告が奨励され、多くの人が政治犯として、投獄、処刑された。白色テロとは、このような政治弾圧を指す。とてもつらい映画である。ホラーの体裁をとった、社会派サスペンスといえる。 1.    発端 教官が監視するなか登校する翠華高校の生徒たち。一人の生徒が呼び止められ、カバンのなかを見せるよう求められる。だがもう一人の生徒、ウェイジョンテ

    • リメイク版から先に見るとオリジナル版の巧みさが光る。映画「一秒先の彼女」を見る。(※ネタバレあり)

      オリジナル版は、2020年の台湾映画である。2021年、日本での公開を見逃したので、2023年公開のリメイク版から見ることに。 1.リメイク版を先に見る リメイク版であると知っている。 オリジナル版とは男女の役が逆転してることも。 監督が山下敦弘、脚本がクドカン。 これはまずい。 岡田将生と清原果耶の役が逆で、 オリジナルと同じだったら、 ストーカーまがいの映画になるところだ。 これは反対が正解。 ではなぜオリジナル版は成立する? 2.ストーリー(リメイク版に基く)

      • 名前が奪われること。言葉を押し付けられること。映画「流麻溝十五号」を見る。

        名前を奪われる   名前が奪われる。 「千と千尋の神隠し」では、 千尋という名が奪われ、千として働かされる。 ハクは名前だけでなく記憶も失っていた。 それまでの自分が消滅し、管理されやすく変えられること。 心理的にも束縛されること。 ファンタジーであるがゆえにシンボリックだ。   「流麻溝十五号」を見た。つらい映画である。 1953年、台湾の白書テロ時代の実話に基づいた物語である。 孤島に設けられた、政治犯収容所である新生訓導所。 そこに収監される少女、女性、少年たちの物語

        • 「世界で2番目に美しい駅」に行く

          2番目とは 「世界で2番目に美しい」と形容される駅がある。2番目とはどういうことか、自称なのか、気になるところである。調べてみると、2012年アメリカの旅行サイトの美しい駅ランキングで、実際に第2位に選ばれたという。こんなランキングがあること自体驚きであるが、カテゴリを微妙に変えた他の調査もあり、結果は上位常連であるようだ。 駅名は「美麗島駅」。名前からして美しさが伝わってくる。後に述べるが、名前に美しいという字が入るには、理由がある。駅の場所は高雄市。人口が台湾で3番目

        記憶すること、語り継ぐことの大切さ。映画「返校 言葉が消えた日」を見る。(※ネタバレあり)

          「悲情城市」九份への旅(※ネタバレあり)

          瑞芳の街並み 台北市から九份に向かう路線バスは、山あいの道路を抜け、やがて市街地に入る。瑞芳(ルイファン)の街である。幹線道路だけではなく、鉄道駅もあり、交通の要衝となっている。景観になんともいえない趣があり、なぜか懐かしさを感じさせる。車窓に寂びれた街並みが続く。九份やその先にある金瓜石で金の採掘が行われていた頃、この街は鉱山会社やそこで働く人々などへ、物資を供給する拠点として発展し、これらの地域と盛衰をともにしてきた。この先また山道が続き、目的地の九份に至る。 「悲情

          「悲情城市」九份への旅(※ネタバレあり)

          「牯嶺街少年殺人事件」をめぐる冒険#3完結編「牯嶺街」(※ネタバレあり)

          これまでのあらすじ 「牯嶺街少年殺人事件」は、1991年に公開された作品である。監督のエドワードヤンは、「悲情城市」を撮ったホウシャオシェンなどとともに、1980~90年代、「台湾ニューシネマ」をけん引した作家のひとりだ。 監督の少年時代に起きた事件に題材を採った。 当時、監督はこの事件に大きな衝撃を受ける。 1960年の台北市を舞台に、建国中学校夜間部に入学した小四(シャオスー) を主人公としてストーリーが展開する。 「大人社会の不安を感じとった少年たちが、脆さを隠

          「牯嶺街少年殺人事件」をめぐる冒険#3完結編「牯嶺街」(※ネタバレあり)

          「牯嶺街少年殺人事件」をめぐる冒険#2屏東編(※ネタバレあり)

          これまでのあらすじ 「牯嶺街少年殺人事件」は、監督エドワードヤンが1991年に発表した映画である。 主人公は、建国中学校夜間部に通う小四(シャオスー)。1960年代の台北市を舞台に、彼を取り巻く幾層もの社会を描く。 ニューヨーク・タイムスは、「この映画には全てがある。」と評した。 そう、全てがある。 少年と少女がいる。 互いの思いの違いは、最後には悲劇に至る。不器用な愛の軌跡が描かれる。 不良少年たちがいる。 グループに分かれ、徒党を組み、小競り合いし、抗争する。出し

          「牯嶺街少年殺人事件」をめぐる冒険#2屏東編(※ネタバレあり)

          「牯嶺街少年殺人事件」をめぐる冒険#1台北編(※ネタバレあり)

          旅にまつわるエトセトラ 台湾を旅した。 目的のひとつは、映画「牯嶺街少年殺人事件」のロケ地を訪ねること。 いわゆる聖地巡礼ってやつだ。 4月の一日、主人公が通う建国中学校に向かう。 映画の何が、これほど人を引き付けるのか確かめたい。 MRT 中正紀念堂駅で降りて、2番出口から地上に上がると、正面には有名な金峰魯肉飯がある。ルーローハンの店で、いつも行列ができる。 右手は数年間の改修工事を経て、昨年オープンした南門市場だ。 ここから南海路をひたすら西に向かう。 「牯

          「牯嶺街少年殺人事件」をめぐる冒険#1台北編(※ネタバレあり)