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第2章 オランダのオルタナティブスクール視察

オランダの視察概要 

3日間のオランダ視察のスケジュールはこんな感じ。

Day1
モンテッソーリ教育の学校の訪問(CHR.Montessorischool De Abeel)
・リヒテルズ直子さんによるオランダの教育についての講義
Day2
イエナプラン教育の学校の訪問(Dr.Schaepman School)
    -校長先生によるワークショップ
    -学校の中を見学
Day3
フレネ教育の学校の訪問(Park School)

今回は訪問した3校ともオルタナティブスクール。
前回のnoteでも少し触れましたが、オランダは「方法の自由」が法律で担保されているため、これまでの教育とは「別の方法」を取り入れるオルタナティブスクールが多く普及しています。(オランダだと全体の約10%、デンマークだと27%*、日本だと約0.1%)

オルタナティブスクールなくしてオランダの教育は語れないことから、今回はオルタナティブスクール中心に訪問することに。

ちなみにオルタナティブ教育とは「現在あるもの(画一化された義務教育など)に替わり選び得る新しい教育のスタイル」のこと。また、日本の場合は、「学校教育法等の法的根拠を有さない非正規の教育機関とそこで実施される教育を意味する」とwikiさんには記載されていました。

*デンマークではオルタナティブスクールの割合がオランダよりも実は高いようです。位置付けとしては独立学校という区分で公立とは分けられています。デンマークでは前提として、就学義務ではなく「教育義務のみ」が存在するため、学び方は個人の自由で、オルタナティブ教育にも寛容的という感じ。一方でオランダは方法の自由でオルタナティブ教育を認めているため、公立・私立関係なく、採用されています。

Day1 モンテッソーリ 教育の学校

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1日目に訪れたのは『CHR.Montessorischool De Abeel』という私立のモンテッソーリ の小学校。

リヒテルズさんが「こっちは私立なんだけど裏側に公立のモンテッソーリ小学校があるのよ。学費はほぼ変わらないんだけどね」とひと言。
オランダの自由さがここでもチラリ。

モンテッソーリ教育は、元々医者であったマリア・モンテッソーリ女史が100年前に開発した教育手法です。

モンテッソーリ の特徴は主に2つ。

①五感を刺激するユニークな木製の「教具」たち
モンテッソーリは「こどもからはじめる教育」を大事にしています。
教材と先生の役割は、学びを刺激すること。
教室にはあちこちに、文字を覚える・形を知る・数を揃えるユニークな木製の教具が設置されています。こどもたちはいつでも自分の手に取って好奇心の向くままに没頭することが出来ます。

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先生の役割は「子供たちが”それをちょうど学びたい”という最適な時期が来た時に、その瞬間を掴んで学びを提供すること」 
その瞬間を掴むのはAIには代えられない、人間にしかできないこと、と言っていたのが印象的でした。

②異学年同士のグループ学習
日本だと、1年生・2年生・3年生と学年によりクラスが分かれていますが、モンテッソーリでは、3学年が混ざって同じクラスにいます。

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「社会で仕事をするときに同じ学年の人と仕事をする状況がないのに学校だけ分けられいるってなんだか不思議じゃない?」と先生より。

異学年で一緒にプロジェクトに取り組むことにより、生徒同士で小さな社会が出来て、学びあい・役割分担・成長することへの意欲が刺激されるそうです。

見た中でも、体育の授業時間での光景が印象的且つ納得感がありました。かけっことオセロが合体したようなゲームで、ゲームルールがわからず負けてしまっている低学年の子に対して「一回集合!」と声かけながらルールの確認をしている高学年の姿がありました。どこかで見たことあるなあと思ったのが、日本の放課後の公園での遊びでした。そこでは学年関係なく混ざり合い、でも年齢や発達で自然に遊びのなかでの役割が出来ています。こどもたちは、制限さえなくせばそういう関わりは自然とできるものなのかもしれません。

Day2 イエナプラン教育の学校

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2日目に訪れたのは『Dr.Schaepman School』というイエナプランの小学校。

イエナプラン教育は、ドイツのイエナ大学の教育学教授だったペーター・ペーターゼンが1924年に同大学の実験校で創始した学校教育。

イエナプランの特徴は主に3つ。

①異学齢学習 &自学自習が中心
イエナプランでも3学年でひとつのクラスが構成されています。
では、子どもたちはどうやって学んでいくのか?

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例えば「学習(仕事)」の時間。ブロックアワーとインストラクションの2つの形式があるのですが、インストラクションは写真からみてもわかるように、先生は1つの学年に対して行います。その間、他の2学年はブッロクアワー(自立学習)を実施します。インストラクションも全員一律に行うのではなく、理解ができた子からブロックアワーへ移行し、わからない子はわかるまで先生に聞くというなんとも効率的なやり方。子供たちは自分のペースで学びを進めているため、教室全体がとても落ち着いているのが印象的でした。

インストラクション中、つまらなそうにしている子も何人かいて、一方的に説明受けるのがつまらないのは万国共通なんだなとーとも。逆に自習の時はとても集中している様子だった。先生がカリスマ的に説明できるようにするのは限界があるため、子どもたちの"集中続けるためのシステム”が考え抜かれているのが面白かった。

②循環型学習(対話→学習→遊び→催し)
イエナプランでは、科目別に学ぶのではなく、「会話→学習→遊び→催し」というサイクルを繰り返しながら学びます。ペンと紙からだけでなく、他者との会話、遊び、作るということからも学ぼうとします。

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印象的だったのがサークル対話(会話)。イメージはWSでやるチェックイン・チェックアウト。残念ながらオランダ語が分からないので、何を話しているかまではキャッチできなかったのですが、私が見た教室では、学校の終わりの時間にその日学んだこと、感じたことを、サークルになって共有をしていました。(たぶん)緊張している様子もなく、みんな積極的に対話に参加。イエナプランで大事にしていることは「なにもかも、みんなお互いに違っている」ということ。自分の意見を伝え、他者の意見を聴く場があるからこそ、多様性を受け入れるマインドが育っていくのだろうなと対話の様子をみて思いました。

③ワールドオリエンテーション
もうひとつの特徴は「世界」を中心に学んでいく探求型の授業。この授業でとっても大切にしているのは"authenticity"、本物であること。子どもたちは教科書のような"紙"から学ぶのではなく、"モノ"や"人"などといったリアルに触れながら、世界を広げていきます。

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やり方としては、写真のような感じでテーマ別にマインドマップ形式で問いをみんなで書き出し、それぞれが自分の担当の問いを決めて探求していくみたいです。楽しそう!

私たちも実際、"authenticity"とはどういうことかということを体感できるリンゴを使ったWSを体験。詳しいことは割愛しますが、紙のテキストだけで学ぶのって限界があるよねっと腹落ちします。

Day3 フレネ教育の学校

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3日目に訪れたのは『Park School』というフレネ教育 の小学校。(フレネ教育については私も今回のオランダ視察で初めて知りました)

フレネ教育は、フランスの教師であったセレスタン・フレネが自身の勤める公立学校で始めた学校教育。

フレネの特徴は主に2つ。(異学齢で学ぶのはここでは割愛。)

①自由作文中心に学ぶ
フレネでは、生徒が書く自由作文を中心に探求していきます。学校を回っていると、どの教室の前にもその時に学んでいるテーマで選ばれた作文が飾ってあるのが目につきます。

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大人が作った教科書で学ぶのではなく、子どもの「視点」がつまった生徒の作文から学ぶというのがポイント。生徒が綴った作文をひとつ選び、それを生徒同士のディスカションのテキストとして使い、さらに、クラス全体で学びを深め、アップデートしていきます。

そして、作文を書くことで必要なのは「語彙力」。実は、私たちが訪問したフレネ学校は移民がとても多い学校。オランダ語が全く話せない子も多く、授業についていく語彙力がない場合は、特別補修を設けたり、一人ひとりにあった対応をしていました。移民が多いけど、フレネ教育が実現できているという奇跡の学校。それは校長先生や先生の努力の賜物。

②対話や意見交換を重視
書くことだけではなく「対話」をすることもフレネでも重視しています。この学校では、「子ども議会」という制度があり、学校のルールは「子ども議会」を通して作られていくとのこと。民主主義的に他者と意見を交換し、ルールを作っていくということを体感することで、本物の市民が育っていくとのこと。

改めて、「自分たちで決める」という感覚を幼少期から鍛えるのは大事だよなーと。自分の意見を伝え、他者の意見を聴き、そして、共創していくというのは技術であり、いきなり大人になってできることではないんだなと。

印象に残ったキーワード

印象に残ったキーワードはこんな感じ。

・子どもが学びの中心 ・ホンモノの体験 ・子どもが学習計画を決める ・遊びの中での学び ・共同体で一緒に意思決定していくこと ・一人ひとりにあった教材 ・先生は子どもの学びたい瞬間を捉える ・みんなお互いに違う ・民主主義的に意見を伝え、合意形成する ・システムで理解する ・対話で始まり対話で終わる

どの学校も子ども中心に学びが展開され、先生の役割も「教える人」というよりは「学びを深める人」という印象でした。あとは社会という大きな共同体で意思決定していく方法を幼少期からしっかり学ぶことの重要性をひしひしと感じられたのも学びとしては大きかった。(民主主義ってなんだろ?って何度も思った)

次は日本のオルタナティブスクールの動向とかも調べながら、オランダで感じたことをヒントに日本の教育システムについても考えていきたい。

Kaoru









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