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私が影響を受けたビジュアル書 その2


私が現在のビジュアル書の制作仕事で、身をたてるきっかけになった本のご紹介、その2冊目。


『Il Volo Di Sara』(サラは飛んでいく)
ロレンツァ・ファリーナ文
ソニア・M.N. ポセンティーニ絵
(2011年出版 発行:FATATRAC)


イタリアで出版後、ロングセラーになっている絵本です。
全編モノクロのイラストに、ところどころストーリーのモチーフになっている小物やキャラクターに、鮮やかな差し色が添えられています。表紙でいくと、下の方にいるヨーロッパコマドリのオレンジ色。戦火が迫る中、追い立てられていく人々を乗せる機関車のプレートの赤。(たぶん)両親と引き離された少女の束ねていた髪の毛から落ちたコバルトブルーのリボン。私はイタリア語ができないので、絵を見てストーリーを想像するしかないのですが、(たぶん)囚われの身となった少女が、(たぶん)窓辺に現れたコマドリに自由の身となって飛んでいく自らを重ね合わせて、物語は終わります。
この絵本に出会ったのは、十数年前のフランクフルトブックフェア。このイタリアの出版社のブースで絵本をいろいろ見せてもらっていた時でした。絵本の版権売買ビジネスに携わってしばらく経っていた頃でもあり、それなりの数の絵本やデザイン書籍をすでに目にしていました。読めないなりに、ページをめくっていくうちに、涙がとめどもなく溢れてきたのを覚えています。一緒に行った年下の同僚も、本の紹介をしてくれたイタリア人の営業担当も、その場で言葉もなく泣き続ける私をどうしていいかわからない様子でした。
読めない言葉で綴られた絵物語に、感情を揺さぶられた瞬間。すでに何社かの出版社に断られているのですが、この本を、いつか日本語版にしたいという思いは変わりません。英語版も出ていないようなので、それもなんとかしたい。ビジュアル書のパッケージャーとして、叶えたい夢です。Google翻訳とかをかければ、たぶんストーリーの全貌がわかるのでしょうが、あえて訳さないで、今日も絵を見つめています。


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