ことのはいけばな’22小満 22候『蚕起食桑』
花を活けるように、言葉を三十一文字他の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。
*鼓膜触れ起きたばかりのお蚕の眠れぬ夜は天井透かし
*ぬばたまの夜の帷のばりばりと桑の喰み音は底なしの沼
*射干玉の夜の帷をばりばりと桑はむ音の終わることなき
*昼となく夜となく食むお蚕のつぶつぶとして眠りへ堕ちる
*お蚕のましろき肌を砕かれし若き桑葉のいくらか染めて
*お蚕のましろき胴をうす染めに千々岩になりし桑の若さよ
松江
宍道湖と中海を囲む残された半島のような土地に人は住む。また歩きたい近江とはまた異なる風体がこの土地にはあるようだ。
橋がつなぐあちらとこちら。
橋を渡っては向こうを眺め、戻ってさっきまでいた所をまた眺める。
*ぬばたまの玄き天地の薄皮にみづを挟みてむきあひてゐる
*ぬばたまの暗きあめつちほとほとに向こうの僕はほとりに立ちて
*ぬばたまの濡れゐし夜のほとりにてただひたすらにゆくゑ追ひたき
*ぬばたまの夜の天地の果てなくて黝き土踏む逆上がりして
*薄皮でふわりと包む暗香の透き間を埋める未発の地雷
*空とぶも水を走るも少年の憂鬱あをく傍らにあり
*イカロスの墜落を知りそんなことかまわぬものか翼よ生えよ
*いつまでも走っていたき水の上に置いてきたものほほえみ返し
置いてきたものたち微笑みて
*雲の上に空島いくつ見えにけり天の光柱たどりつかぬも
*消失を知る少年のことごとくドリームタイムはすべる傍片に
*口角のさもありなむとあがる刻ひとみは星にあの日のままに
*神々のつどう月あり八雲立つ出雲の水海神有りの月
*遠ければみどりもあおく遥かなりさっきまでいた自分をさがす
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?