見出し画像

馬鹿な僕は、明日に続くため。過去へと手紙を宛てた。

今さっき下ろしたばかりのお金。……で買った食パンにかじりつきながら、くだらない案件を処理していた。

文字を連ねるほどに掌に浮かぶすじが凝り固まって、手首から先は電池の切れかけたラジコンでも操作しているような気分になる。
きっと僕が小学生の頃に流行っていたゲームのキャラクターの方がまだマシなレスポンスをしてくれると思う。

零れ落ちたパンくずを拾おうとして、足下の暗さに気づいた。
ずり落ちたメガネがほんの一瞬、窓から射し込む駐車場の灯りを反射する。
ようやく日が落ちていることに気づかされて、暗いのは足元だけじゃないことに夜の有り難みを知った。
ブルーライトをカットするしか能のないレンズを労るように拭きながらカーテンを閉めに重い腰をあげて。
真っ暗闇な僕の部屋。
けれど部屋の灯りをつける気にもなれない。
いろんなものが暗がりに紛れているくらいで丁度いい。

そろそろPCと向き合うのも疲れた。
安っぽくて見返りも安い案件と向き合うのは疲れるし、そんなものに生き死にの全てをにぎられている、なんて現実にもっと疲れる。

ソファに体重とその他もろもろを預けて、久々にTVを点けた。
録画の容量が少なくなっています……とかなんとか告げられて、いちおう消化しとくかと深夜アニメのタイトル群に向き合って疑問符が浮かぶ。なんでこんなの録ってるんだ?
ほんの5,6ヶ月前まではこいつらの視聴が趣味で、実益で。か細い糸だった。

生きる理由なんてそんなものだと思う。
意味なんて、与えるまでは0のままな筈だから。

あの作品の続き。あのタレントの続き。あの事件の続き。

そんな『くだらない』ことに興味をなくしてしまった瞬間。
僕達の人生はまた一歩、終わりに近づく気がする。


メガネを外して、何かが多少色づいた気がして。ようやく部屋の暗さに気付かされて。
あまりにもくだらない記事を書いたなと、無意識がため息をついて。

元々、コネもない。実績もない無名のライター。
くだる案件なんて回ってくるはずがないな。
……と我にかえって、ようやく日が落ちていることに気がついた。

灯りをつけると明るくなってしまうこと。
夜の嫌いなところは、それくらいだ。

変化を嫌うのはきっと本能としては正しい。でも夜にしか棲めない人間だっている。
万物の霊長だとかいうけれど、欠点が一番多い生き物こそおまえだろう。

外で鳴いている名前もわからない鳥たちのほうが、よっぽど賢い。
よっぽど、強い。
よっぽど、正しい。
彼等はくだらないなんて考えない。その時点でその命は、一生は、くだるのだから。


意味を与えないと。明日に続くために。
明日も与えないと。明後日を迎える為に。

水槽の金魚に餌でも放り投げるように。

青白く照らす知らない深夜番組。
音量を、少しだけ上げた。

創作活動にのみ、大切に使わせていただきます。サポートしてくださった方のリクエスト等に添った記事も執筆いたします。出資に見合った創作を行いたいですね。