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閉鎖病棟と大切な仲間

こもれび文庫

「中学からちゃんとやり直そう」

そう思っていたのに。なぜ、私は今ここにいるんだ?
私は低い天井を見上げて、ため息をついた。

今日から精神科の閉鎖病棟に強制入院。中学2年が終わろうとしていた3月、私は精神科の閉鎖病棟に入院させられたのだ。

私は絶望と悲しさ、悔しさを噛み締めながら、鍵のかかった病室の個室で何もせず、終わる1日を何週間も繰り返した。

ようやく鍵が開いた時には、季節はもう完璧な春を迎えていた。
私は久しぶりに主治医と看護師さん以外の人と話した。

その子は私と同年代くらいの女の子だった。私は思わず聞いた。

「あの、いくつですか?私は14歳。あなたは?」

「私も14歳だよ。よろしくね。」


これが私にとって数少ない心を許している友人、なおとの出逢いだった。

私たちはすぐに意気投合。毎日2人で病棟のホールで話した。話を聞くとなおは自分からこの病院に入院したいと言ったらしい。
当時の私には理解できなかったが、今はその気持ちも理解できる。

ある日なおがホールで勉強道具を広げ、勉強をしていた。

「勉強?なんで勉強しているの?学校行ってないんでしょ?」

「曽根ちゃんは勉強しないの?」

私は首を縦に振る。勉強なんて中学2年の頭からなにもしていない。
そう、私はあの日から勉強をすることをやめた。勉強なんて不登校の私がしても無意味だと思ったのだ。

だが、なおは続けて言った。
「もう私たち受験生だね。」

私はなおに
「高校、一緒だといいね。」

そう言った。

・・・・・・・・


「あ、なおだ!久しぶり!」
私は手を振る。

なおは
「曽根ちゃん!久しぶり。」
私にそう言った。

そう、私たちは偶然にも同じ高校の試験を受けに来ていた。

私は今日という、この日までなおと同じ学校を受験することを知らなかった。なおも同じだ。

私たちは話し合いもせず偶然いや、奇跡的に同じ高校を受験したのだ。

なおは言う。
「曽根ちゃん太ったね。」

でしょー、と私は笑いながら腹をつまむ。
私は閉鎖病棟の入院当初、42㎏だった体重がなんと75㎏になっていた。

こんな過去も今は笑い話だ。私はなおと一緒の学校で良かったと心の中で言いながら試験会場へ向かった。

試験が終わり、なおと話していたら、すっごくスタイルの良い、モデルのような綺麗な顔をした子が隣にいることに気づく。

私が話しかけるか迷っていると、 
なおが

「どこの中学出身?」

とその子に聞いていた。

なおすげー、私は心の中で言いながら
その子の話を聞く。

名前はまみちゃんと言うらしい。
まみちゃんは
「あー、中学生じゃないよ。」

私、なお 「え???」

じゃあ何なの?小学生?(笑)
とちょっとジョークを挟みながら、まみちゃんの話を聞く。

まみちゃんは1つ歳上で、本当はすでに高校生なんだと言った。


まみちゃんは面白い。そして、リーダーシップがある。
自分を呼ぶとき、「俺さ」「わしはな」
綺麗な顔をして言うから面白い。そんなまみちゃんが好きだ。

なおは優しい。とっても。みんなのことをよく見ている。
だからあのとき、誰よりも先にまみちゃんに声をかけたのだ。
そんななおが好きだ。

もう1人、一緒に試験を受けて仲の良い女の子がいる。名前はみかこちゃん。

みかこちゃんは控えめだけど、しっかりしていて自分の世界を持っている。
2人きりで帰り道に駅まで歩いた日、みかこちゃんと更に仲良くなれた。
そんなみかこちゃんが好きだ。

私はこの学校を受験して良かった。
心からそう思えた高校1年を過ごせた。

                  text/曽根碧

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