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ちいさなひかり

私の娘には知的障害があります。
娘はお話をすることはとても苦手です。
でも、他の人のお話を聞くことは多少出来ます。
しかし、自分の気持ちをお話することはとても難しいです。
なので、不安になると耳を塞いで大きな声で笑い出します。
 
娘が幼稚園に通っていた時の話です。

娘が通っていた幼稚園は娘の障害を理解した上で娘を幼稚園に入園させてくださいました。なので、普段から十分な配慮を頂いていて、行事などで娘が不安になるようなことがあると必ず事前に私に相談してくださいました。

そして今度、全園児参加の劇の鑑賞会があり、先生がいつものように劇中は “会場を暗くすること” や “効果音がかなり大きいこと” など娘に対しての配慮を確認してくださいました。
それに対して私は「もし娘が笑い出したら会場から出して頂いて構いません」とだけお話しました。
先生は「出来るだけみんなと一緒に何にでも参加してもらいたいので、充分気を付けて参加させます」とお話くださいました。

そして当日、不安的中!
劇が始まると娘が大きな声で笑い出しました。
先生は初め優しく「静かにしようね」と声をかけましたが娘の笑いは止まらず、困った先生は口調を強めに「静かにしようね!!」と娘に言ったその時、近くにいたお友達が

「先生怒っちゃダメだよ!! 優しく背中をさすればいいんだよ!!」

と言って、お友達は娘の背中をさする見本を見せてくれました。
先生はお友達がしたように娘の背中をさすり続けるとだんだんと笑いはおさまり最後まで劇を鑑賞することが出来ました。

と、お迎えの時に先生がお話してくれました。
そして先生は今にも泣き出しそうな顔で
「申し訳ありません。配慮すると言って全然わかっていなかった。とても恥ずかしいです。」とおっしゃってくださいました。

その話を聞いて私の中にも先生と全く同じ感情がありました。
娘のことを考えているつもりが、周りを気にすることを優先させて娘に対する配慮より周りに対する配慮が大きくなっていたこと。それが娘をさらに不安にさせていたこと。

それに気付かせてくれたのは、4歳か5歳位の女の子。
彼女は娘のことをしっかり見ていてくれて正しい考えで正しい行動に移せる。とてもシンプルだけれど難しいことを迷いなくしてくれた心に、私は「とても小さいけれど強くやさしいひかり」を感じました。

その話を聞いた後、園庭で遊んでいる子どもたちが娘を囲んで一緒に遊んでいる姿がありました。
それを見て私は一つの「小さなひかり」がたくさん集まってそれが「大きなひかり」になっていくのを感じました。

それから私は、娘が新しいサービスを利用する際は必ず「娘が不安になると笑ってしまうこと」を伝えます。
でも「背中を優しくさすれば不安は消え笑いがおさまること」を必ずお話しています。
皆さんの心にも、そして皆さんの近くにも、「強くてやさしい光」は必ずあります。
 
                  text/K.M.T.mama

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