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読書ノート「なにかが首のまわりに」チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ著 くぼたのぞみ訳

ナイジェリアの女性作家の短篇集。フェミニズム文学らしい。西加奈子さんがおすすめしていたので読んでみた。

物語は、アメリカかナイジェリアが舞台で、出てくる人たちもほとんどがナイジェリア人(たぶん)。
情景描写が細かくて、太陽の色とか肌の色とか質感、しわの深さまで見えるみたい。人間の感情の描写も丁寧でみんないきいきしている。
男女間の差だけじゃなくて、人種間の差、階級の差別も描かれてる。

アメリカでの人種差別社会のなかで、ナイジェリア人同士でも男尊女卑的な構図があったりする。男性の自信に溢れた眩しいような態度と、女性の過敏な感受性と抑圧の対比。そしてそういう差別をしない人もいる。登場人物が差別する側、そういう感じ方をする側になっていたりもする。

印象に残った3つの短篇。

◯イミテーション
妻に家事と子育てを任せて浮気する夫、そのくせに、妻に愛をささやくし妻の新しい髪型にイチャモン付けてくる。どこにでもいる、そういう夫。女性は気付いてるぞ。

◯先週の月曜日に
夫の仕事の都合で引っ越したアメリカで見つけたナニーの仕事。雇い主のアメリカ人夫婦の妻に肌の色とかをほめられたのをきっかけに、どんどん心が惹かれてしまうナイジェリア人女性の話。つまらない夫とミステリアスで魅力的なアメリカ人女性。やっぱり自分に興味を持ってくれてほめてくれる人に自分も興味を持つよね。

◯結婚の世話人
世話人を通じて知り合った新しい夫とアメリカでの生活。夫は、妻のナイジェリアなまりの英語や生活習慣をせせら笑うようにしてアメリカ風のやり方を押し付けてくる。金銭感覚も違うしいろんな趣味も違うし愛せないけど、彼女には金銭的にも精神的にも自由がない。彼女は仕事を持たず彼の庇護下だから。なんて窮屈なんだ。

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