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矢印の話:Next Phase

新型コロナウイルス感染症の影響で、世の中のいろんなことが停滞しました。大きなダメージを受けている方も多いと思います。私自身も、コロナ感染症の直接の影響ではないものの親族を亡くし、悲しみに沈む期間を経験しました。

それでも時間は必ず過ぎます。良くも悪くも必ず変化していくので、私たちはそれをうまく利用して生きていくしかないと思っています。

さあ、もう次に行こう!という気持ちで作ったのが、2021年3月8日生まれのNext Phase(CNo38)です。画像で表すと冒頭の写真なような上向き矢印の気持ちです。まだまだ感染が収まらない時期ではありましたが、いい加減もう嫌になってきて、ポストコロナを具体的に考えたくなってきた時期でもありました。

新しいことにチャレンジする緊張感と期待感、だけど時々頭に浮かぶ古い時代の懐かしい光景、など、コロナ禍を経て現在に至る自分の心情を表現しています。この曲に関連して、今日は矢印についてお話したいと思います。

矢印は共同注意

矢印はとてもよく見かける記号ですよね。教科書にはよく出てくるし、交通標識や道標にも様々な種類があります。パワーポイントにも様々な矢印が準備されています。この記号はいつから出現し、子供はいつから矢印に従うようになるのでしょう。矢印はごく身近にあるのに、学問的に扱った本というものがほとんどありません。以前、仕事上必要で検索したところ、日本語で一番詳しく書いてあったのは「矢印の力」という本でしたが、これも学術本というわけではありません。どなたか知っていたら教えていただきたいところです。

矢印というくらいだから、矢の歴史についてはよく書かれているものを英文などで見かけます。しかし、矢印の使われ方を見ていると、矢よりもむしろ人間の「指差し」がもとになっているのではないかと私は思います。昔、お通夜の場所を示すのなんかに指差しの絵が使われていましたよね。

指差しは、赤ちゃんが生後1年前後で行うようになり、同じ頃初語がみられることで知られています。指差しをすることで、赤ちゃんは自分が興味を持っているものに大人の目を向けさせてコミュニケーションをとることができます。このように他者と注意を共有する能力を共同注意といい、社会性のもとになる能力です。指差しをまだしないもっと小さい時には、大人の目を見て,大人がどこを見ているのか、その視線の先を追って、大人と同じものに注意を向けることができるようになります。これも共同注意です。

矢印は最強

こうして考えると、視線追従ー指差しー矢印というのは一連の類似機能だと思うのです。小さい子も(いつのまにか)使うし、認知症の人でも矢印に従って行かなくてよい方向に行ってしまうことがあります。それくらい強力な威力をもった記号だと思います。そして自然発生するデザインとは異なる、極めて人為的なデザインですよね。

矢印は、一見コミュニケーションと関係ないように見えますが、そこには書いた人の見えない意図が示されています。あるいは、自分のメモに使った矢印でさえ、未来の自分に向けた現在の自分の意図があるはずです。指差しはどこを指しているか曖昧ですが、矢印ならピンポイントで示すことができます。また、矢印の太さや形を変えることによって量を示したり動きを示したり、自由自在に表現することができます。そんな意味で、矢印は言語に匹敵するくらい最強では、と私は思っています。

矢印はグレードアップした共同注意?

今日はちょっと学問的な話になってしまいましたが、少し意識して世の中の矢印を眺めると、いろんな人の意図が見えてきて面白いと思いますよ。

最後に、私の曲は別に矢印をテーマにしたものというほどではなかったのですが、Eテレ「デザインあ」で流れていた「やじるしソング」は秀逸です。


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