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「味の素、投資と還元に2000億円超 『稼いだお金は使う』」に注目!

味の素、投資と還元に2000億円超 「稼いだお金は使う」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

味の素が2025年3月期に成長投資や株主還元へ2000億円超を投じます。過去最高を見込む営業キャッシュフロー(CF)を上回る規模になります。利益増と効率改善に力を入れ、本業の投資に対する収益性を示す投下資本利益率(ROIC)は2026年3月期に資本コストの倍以上の水準に高める狙いです。

財務担当の水谷英一執行役常務は日本経済新聞の取材で「稼いだお金は株主のもの。積極的に使い現預金を圧縮する」と強調しました。今期の連結純利益(国際会計基準)は値上げ浸透や調味料の販売増などで9%増の950億円と最高益を見込みます。本業の稼ぐ力を示す営業CFは4%増の1750億円と2期連続で最高を更新する見通しで、これを上回る規模のお金を成長投資や還元に充てる方針です。

今期の設備投資は前期より4割多い約1080億円を予定します。過去5年間では毎年800億円程度でしたが、今期以降は成長を優先します。水谷氏は「グループ全体で絞っていた設備投資を中心とする資本的支出(CAPEX)を解き放つ」と話します。人手不足の中、工場での自動化投資などに充てます。M&A(合併・買収)も積極的に検討します。

配当と自社株買いを合わせた還元は、最高だった前期(約1300億円)に近い規模になる可能性があります。1株あたり配当は年80円と前期比6円増やし、配当総額は400億円強を見込みます。自社株買いは5月上旬に最大500億円を公表しました。市場では最終的に前期並み(900億円強)になるとの見方があります。

配当方針については、配当を原則減らさない累進配当を2023年に導入しました。同時に税負担などを引いた本業ベースの利益から求めた1株利益(EPS)の35%を目安に配当を実施するという基準も設定しました。

還元で資本効率を改善させるだけではなく、成長投資で利益も着実に伸ばし、ROICは2026年3月期に13%(前期は8.7%)まで高めます。株主や債権者らが期待するリターンである加重平均資本コスト(WACC)の6%を大きく上回ります。自己資本利益率(ROE)は来期に18%(前期は11%)を目指します。

中長期でも成長投資は緩めません。2031年3月期までの8年間では設備投資を計7500億円程度と前の期までの同期間から2割増やします。M&Aでも同期間で3000億円程度の枠を設定しました。成長投資を通じ、通常のEPSは2031年3月期に2023年3月期(175円)の3倍にする目標を掲げています。利益増に伴う配当拡大も見込めそうです。

現預金は前期末に1700億円程度と前の期から約400億円膨らんでいました。2023年12月に米遺伝子治療薬の新興を買収した影響やグループ会社の配当が予測を上回ったことが要因です。一連の投資拡大で、現預金は2026年3月期末に900億円程度に減る見通しです。会社側は当面は投資を優先し、2031年3月期まではこの水準を維持するといいます。

味の素の足元の株価は高値圏にはありますが、1月の上場来高値からは1割近く安い水準にあります。1年前比の株価上昇率では1%高にとどまっており、食品大手の中ではキッコーマン(13%高)や明治ホールディングス(9%高)を下回ります。

市場では「2024年3月期の業績は会社計画に対しては未達だった。今後実績を積み上げて、実行の可能性を高められるかが市場の評価を分ける」(東海東京インテリジェンス・ラボの荒木健次シニアアナリスト)との声があります。今回の資本コスト改革がどこまで浸透するかが注目されます。

味の素は中期ASV経営(経営方針)にて、2030年度のROEを約20%、ROICを約17%、オーガニック成長率を5%~、EBITDAマージンを19%に設定し、経済価値指標、社会価値指標、またそれらを支える無形資産強化指標により成り立つASV指標の達成に向け、従業員一人ひとりが挑戦を続けることで企業価値を継続的に向上させていく計画を掲げています。

また、本日の別の記事にあったテックマジック(東京・江東)が中心となり、キユーピー等食品5社が食品工場で使う省人化ロボットの開発で連携とありましたが、このテックマジックには味の素も出資をしています。味の素が今後も投資や還元をして成長が継続できるように期待しています。

※文中に記載の内容は特定銘柄の売買などの推奨、または価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。