見出し画像

「タイ大手アマタ、ベトナムで工業団地拡大 丸紅と組み中台の企業誘致、デジタル化・省エネ支援」に注目!

タイ大手アマタ、ベトナムで工業団地拡大 丸紅と組み中台の企業誘致、デジタル化・省エネ支援 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

タイの工業団地大手アマタ・コーポレーションが、ベトナムで事業を拡大します。現地子会社が丸紅から出資を受けて団地を整備します。同国での引き渡し面積を2024年に前年比6割増やします。入居企業のデジタル化を支援するなどして差異化を図ります。中国や台湾などの企業が生産拠点を見直す需要を取り込みます。

ベトナム北部最大のハイフォン港から北へ車で約30分。クアンニン省の田園のただ中にあるハロン工業団地では中国の太陽光発電パネル大手、ジンコソーラーの巨大な工場がひときわ目を引きます。

投資額は7億ドル(約1100億円)強で、2023年10月に稼働しました。周囲を歩いて回ると1時間かかり、構内には見える範囲だけでも数百台のバイクが並びます。「この辺りで一番立派な工場だよ」と従業員は胸を張ります。

アマタはこのハロン工業団地の整備や運営を手掛けます。2018年までに700万平方メートルを整備して開業しました。現時点で入居予定を含めると進出企業は15社に上り、計29億ドルの投資が決まりました。

台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の富士康科技集団(フォックスコン)もその一社です。電気自動車(EV)やIT機器の部品を製造する工場を建設し、2025年までの稼働を目指します。金属部品の切削加工を手掛けるパーツ精工(埼玉県三郷市)といった日本企業も進出を予定します。

アマタはハロン工業団地を拡張します。6月には丸紅から、同団地の運営子会社への20%(約17億円)の出資を受け入れました。丸紅は2021年に同団地の販売代理契約を結んでいましたが、今後は開発や運営にも直接携わります。

具体的には、団地の入居企業に対し、製造現場の効率化を狙ってスマートメーターを使った電気や工業用水の使用量の「見える化」を推進。これらの支払いの電子化も支援していきます。環境対応では二酸化炭素(CO2)の排出量削減に関する助言も想定しています。

丸紅はインドネシアなどアジアを中心に5カ国で工業団地の開発に参画してきました。アマタは丸紅と連携し、ベトナム事業の拡大に弾みをつけます。

1989年設立のアマタは、バンコク近郊の工業団地を中心に開発や運営をしてきました。海外展開の開始は1994年で、初の進出先がベトナムでした。現在はハロン工業団地のほか、南部ドンナイ省で2カ所、中部クアンチ省でも1カ所運営します。

同社はラオスやミャンマーの最大都市ヤンゴンにも進出しましたが、ベトナムが海外の稼ぎ頭です。2023年12月期の純利益は約19億バーツ(約80億円)。売上高は97億バーツで、ベトナム事業が4割超を占めました。

2023年に引き渡した土地はベトナムが60万平方メートルで、タイの66万平方メートルに迫ります。2024年はベトナムで最大100万平方メートルの引き渡しを目指します。

同国に注力するのは、タイに比べ成長が見込みやすいからです。ベトナムは近く人口減少に転じる見込みのタイとは対照的に、2023年に人口が1億人を超えました。2024年1~6月の実質国内総生産(GDP)成長率は6.42%と、東南アジア主要国の中でも高いです。一方で人件費は相対的に安く、投資先として魅力は高いです。

地政学リスクの高まりも、ベトナムに追い風となります。米中対立などを背景に、グローバル企業の物流ハブなどは中国から東南アジアに移りつつあります。ベトナムは特定国に依存しない「バンブー外交」が基本方針で、両陣営から投資を呼び込みやすいほか、中国と地理的に近いことも強みでした。

「アマタはこうした(企業移転の)傾向の最大の恩恵を受ける企業になる」(シンガポールのDBS銀行)との指摘もあります。アマタは今後、安全保障に関わる半導体や電子機器を中心に、工業団地に呼び込む考えです。

ただ、ベトナムでは競合も工業団地の開発を加速します。北部ではシンガポールのVSIPやセムコープが新たな工業団地の建設を計画。タイの同業大手WHAコーポレーションも南部バリアブンタウ省で10億ドルを投じ、1200万平方メートルの敷地に環境配慮型インフラを整備する方針です。50億ドルの投資誘致を目指します。

WHAのベトナム進出は2017年ですが、これまでタイの物流倉庫や工場の屋根に太陽光パネルを設置するなどして工業団地のCO2排出量を削減してきました。団地内のトラック交通量や太陽光発電量などを遠隔操作するデジタル化にも着手しました。今後はこのノウハウをベトナムにも輸出します。

各社の猛追を受けるアマタだが、先行者利益をどう維持できるかが課題となりそうです。

丸紅は6月よりアマタハロン工業団地の開発・運営を行うアマタの株式の20%を取得し、ベトナムにおける工業団地の開発・運営に参画しました。

ベトナムの評価点としては、「東アジア各国との容易なアクセス」「国内外の市場へのアクセスを可能とする交通インフラ」「経済特区指定による税メリット」が挙げられます。

1980年代からアジアの工業団地開発・運営に取り組む丸紅は、これまでにアジア5か国で、総面積約2,500haの開発・運営実績があります。アマタハロン工業団地においては、2021年4月にアマタと販売代理契約を締結し、企業誘致に取り組んできました。丸紅の30年以上の開発・運営により蓄積した環境負荷低減やデジタル化の取り組み・知見と、アマタが持つベトナムにおける工業団地の開発・運営ノウハウを掛け合わせ、入居企業が効率的かつ環境に配慮した生産活動を行えるサービスを提供していくとともに、周辺地域の雇用創出やベトナムの経済発展に寄与していきます。

丸紅の持つ知見がベトナムの発展にもつながると思いますので、今後の取り組みに期待しています。

※文中に記載の内容は特定銘柄の売買などの推奨、または価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。