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「ダイキン『アフター井上会長』探る 内外の幹部275人集う」に注目!

ダイキン工業「アフター井上礼之会長」探る 内外の幹部275人集う - 日本経済新聞 (nikkei.com)

ダイキン工業は10月に創業100年となるのを控え、次の100年を見据えた成長戦略を描こうとしています。22日から4日間、国内外の幹部275人が出席するグローバル経営会議を鳥取市で開き、30年にわたり経営を担い6月に会長を退任する井上礼之氏の後の会社のあり方を議論します。22年ぶりに刷新した経営理念の浸透も課題です。

「当社の競争優位がこの先も続く保証はない」。日本海を望む研修施設、ダイキンアレス青谷で22日、井上氏が口を開きました。

前日、大阪市内で開催した創業100周年記念式典では和やかな雰囲気が流れていましたが、この日は一転して会場の空気は張り詰めていました。2025年3月期も増収増益を見込むなど連結業績が好調ですが、井上氏は危機感を隠さない。「事業モデルの『賞味期限』が短くなる中で、自社の事業モデルの賞味期限を虚心坦懐(たんかい)に見つめ直すことが大事だ」

開いているのは「グローバル・マネージャーズ・ミーティング(GMM)」で、最も重要な会議の一つに位置付けています。12の分科会にわかれ、経営幹部らが泊まり込みで議論します。新型コロナウイルスの感染拡大で休止していたこともあり、6年ぶりの開催となりました。

今回のGMMは2つの理由で転換点になります。1つ目は井上氏が2002年に会長に就いた際に策定した経営理念10項目を6項目へコンパクトに整理し、井上氏が唱えた「人を基軸におく経営」を明文化しました。「グローバル化が進み、海外の人にも理解しやすくした」(植田博昭執行役員)。これをグループに浸透させる契機とするためです。

2つ目は30年にわたり経営トップとして率いてきた井上氏が会長として参加する最後の会合だからです。7月以降も井上氏は「グローバルグループ代表執行役員」という肩書が残るものの、経営の最終判断は会長兼最高経営責任者(CEO)になる十河正則氏と社長兼最高執行責任者(COO)に就く竹中直文氏が下します。円滑な移行が試される場となります。

「変化の激しい時代にあって、足りない技術は外部から積極的に補う。M&Aで『人』と『時間』を買い、イノベーションを実現していく。オープンイノベーションを積極果敢に進めていかなければならない」。GMMで井上氏はこう強調してみせました。

ダイキンを成長させてきた多くのM&A(合併・買収)を主導してきた井上氏の会長退任後、十河氏と竹中氏はさっそく手腕を問われます。井上氏は会長を退いても「海外出張はするだろう」(幹部)との見立てがありますが、十河氏は「M&Aは(竹中氏と)2人で判断したい」と言い聞かせるように語りました。

M&Aをめぐっては、新規案件の開拓に加えて、目下の課題は2018年に約1100億円で買収したオーストリアの業務用冷凍・冷蔵器メーカー、AHTの立て直しです。関係者によると、欧州の景気低迷もあり「苦戦している」といいます。

大きな節目を迎えたダイキンの経営は何を変え、何を守っていくのか。竹中新社長をはじめ経営幹部の真摯な議論で導き出したアクションが、市場へのメッセージになるだけでなく、一線を退く井上氏の期待も背負います。

ダイキンの会長を退任する井上礼之氏は1994年の社長就任以来、30年間にわたって経営の指揮をとり続けました。M&Aに累計約1兆円を投じて米国の大手空調メーカーなど50社超を傘下に収めるなど、積極的な海外展開でダイキンを世界一の空調メーカーに押し上げた方です。

今回、井上氏が約1時間のスピーチで何度も強調したのが「グローバル競争」でした。社長就任当時、ダイキンの主力市場は日本で海外売上高比率は15%でした。証券アナリストからは苦戦していた家庭用の撤退を提言されていましたが、井上氏は大型の工場・ビル用も含めた「空調三本柱計画」を打ち出しました。家庭用空調から生まれた先端技術を業務用に応用するなど、技術的なシナジーが生み出せると考えたためです。三本柱があれば「空調の世界トップを目指せる」との確信もありました。そして、推し進めたのが海外でのM&Aだったとのことです。そこでのこだわりが「相手の経営陣の立場を考えてM&Aをする」でした。

ダイキンは1924年10月25日に創業して、今年で100周年を迎えます。井上氏は「空調で世界一になる」というスローガンを掲げ、2010年に目標を達成しました。次の100年も成長が続くように、ダイキンの戦略に期待しています。

※文中に記載の内容は特定銘柄の売買などの推奨、または価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。