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「三菱商事中西社長、産業分断『リスク情報、多様性カギ』」に注目!

三菱商事の中西勝也社長、産業分断「リスク情報、多様性カギ」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

米中対立などで世界的なサプライチェーン(供給網)の分断が進んでいます。2023年の世界のモノの貿易量は2022年比で0.8%増にとどまる見通しで、貿易の低迷が鉄鋼や衣料品など様々な分野に及んでいます。分断の時代にどう勝ち抜くのか。三菱商事の中西勝也社長に今後の戦略を聞いたインタビュー記事です。

地政学リスクが深刻になってきていることについては、「2024年は米国や台湾など選挙の年となる。インフレや金利上昇によるコスト高もあり、案件がなかなか進まないだろう」

「経済の分断時代でも、エネルギーは非常に重要だ。データ社会を迎え、エネルギーの消費量は増えるだろう。半導体が『産業のコメ』なら、エネルギーは『産業の水』だ。コメと水がマッチしないと産業が育たない。価格競争力のあるエネルギーを安定供給できるように、事業を構築していく」とコメントしています。

対立が激化する米中では、どのようにビジネスをしていくかについては、「分断の時代でも、日本は米国に重きを置いている。米国には全グループから人を送り込んでいる。我々の得意な『多様性を生かした総合力』を米国で発揮できる。人口が増加しており、電力や天然ガス、都市開発など様々な事業投資を検討している」

「中国企業は米国に進出しづらくなっており、7億人の市場である東南アジアの展開を加速している。特に日本勢が築き上げてきた自動車にボディーブローのように効いてきている。日本の自動車産業だけでなく、日本の景気にも影響が出かねない」

「我々は自社の利益だけをみるのではなく、日本企業がアジアでどう成長できるかを考えている。東南アジアを1社で守り抜くことはできない。官民で連携していく必要がある」と回答しました。

影響を与えるリスク情報をどう収集するか、各国に拠点を持つ商社の強みが問われているとの質問には、「2024年4月に地域ごとに政治情勢やリスク情報を最適に集められる体制にする。米国、欧州・アフリカ・中東、アジア・大洋州の3極に地域最高責任者(CRO)を配置する。従来はリスク情報の収集を東京本社で担っていたが、3極に分散させる」

「各事業はそれぞれの営業部門で主導することに変わりはないが、各国で異なる脱炭素の動きや生のビジネス情報は現地の駐在員が最も詳しい。地域発の事業構想を実現するため、グループ横断で取り組むべき案件は、社長である私に直接伝えられる仕組みにした。横串でも連携し、確実に成長をしていきたい」と回答しています。

三菱商事はリスクへの耐性を高めるため、安定収益が見込める非資源に注力してきました。2024年3月期の非資源分野の利益比率は5割超になる見通しです。非資源で安定的に4000億〜5000億円を稼げるようになってきています。

円安と資産の見直しで、成長投資の源泉となるキャッシュ創出力は強くなりました。営業収益キャッシュフロー(CF)と投資CFを合わせた調整後フリーCF(9月時点)は6000億円超に上ります。潤沢な資金を生かせるかどうかは、分断時代に適応し一段と目利き力を磨けるかにかかっています。

三菱商事は地政学リスクの高まりにより不確実性が高まっていることや、グローバルサプライチェーンの再構築、デジタル化、脱炭素という多様化・複雑化する社会・産業のニーズに対し、あらゆる産業知見とグローバルネットワークを駆使したインテリジェンスを有機的に「つなげ」・「つながる」ことで、総合力を強化していく経営方針を中期経営計画2024で掲げています。

こういった環境下だからこそ、様々な事業を行っている総合商社の強みが活きるのではないかと思っています。今後も、三菱商事ならではの創業力で様々な課題解決をして欲しいと思います。