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歴史思考から考える学校教育(その2)

前回、深井龍之介さん書いた『歴史思考』について、記事を書きました。
ざっくりまとめると、
・現代を生きるためには多様な価値観を知っていた方が良い
・歴史を学んだ方が多様な価値観を得られる
・それって学校教育でできないの?
という内容です。
今回は「それって学校教育でできないの?」について書いていこうと思います。

前回、学校教育でできない理由を二つ上げました。
①受験教育の弊害
②教員忙しすぎる問題
順に見ていきます

①受験教育の弊害について
自分の学校生活(※主に勉強面)について振り返ってみると、受験がすべてでした。”○○高校に入るためにいい成績をとらなくては!○○大学に入るために対策せねば!”とこんな感じで勉強しています。
そうなると、テストでいい点を取ることがすべてになります。テストによく出るところを暗記して回答用紙に書き込む。これがすべてです。
歴史に限らず、英語、数学、理科、国語などにもテストに出るとこを記憶して頑張る要素は大いにあったと思います。

いい大学に入るための勉強では、暗記がすべて。なぜなら大学に入るための登竜門であるセンター試験はマーク式だったから。選択肢の中から正しい答えを選ぶには暗記が一番楽だったんですね。
暗記の弊害は、なぜそうなるのかというストーリーをショートカットしちゃうことです。ガンディーが非暴力・不服従を唱えた理由なんて考えたことがなかったです。
現在、センター試験は「大学入学共通テスト」となり、問題形式も変わってきています。ただ、暗記偏重の状況はあまり変化はないのではないかと思っています。なぜならベースはマーク式だからです。
記述式は採点が難しく、分野が特化してしまうので共通テストとして使用するのが難しいのかもしれません。ある程度公平性を持った試験にしようとするとマーク式が一番楽なんだと思います。
つまり、受験に合格するための勉強では、暗記が一番楽。そうなると生徒からすれば、「古典をどう読み解くか」「歴史から自分の人生をどう考えるか」について授業で教わるよりも点を取るための暗記の方が優先度が上がっていきます。さらに教員も生徒を合格させるためには、受験用の暗記型授業をするほうが楽です。生徒に自己分析・自問自答を促すのではなく、一方的にテストに出る範囲を伝えれば終わるからです。
受験がすべてになっている生徒と合格させることがすべての教員がいた場合、この事象は発生します。もちろん教員によって授業の作り方は違いますが、大学入試の構造が変わらないと根本解決は難しいように感じます。

※メモ
多様な価値観を知り、現代を生き抜くため力を養成するのであれば、AO入試のような方法が適切なように感じます。
試験方法についてはまだまだ浅学なので、勉強してどこかで記事を書きます。(科挙とか調べたい)

②教員忙しすぎる問題
これは今の学校教育で非常にクリティカルな問題であると考えています。思うところが多いので長くなると思います。

僕の家庭は教員一家です。母は小学校校長や幼稚園園長を経験、父は中学校教諭、兄は小学校教諭をしています。※両親はすでに定年を迎え教員を引退しました。
そんな家庭で育った僕は、東京学芸大学という教員界では日本有数の教育学校を卒業しており、中高の国語教員免許も取得しています。
しかし、教員にはならず企業に就職しました。教員が忙しすぎるからです。
学校によってもまちまちだと思いますが、僕の母親は朝7時に家を出て、帰宅は22時近くなる時が多かったです。そこから家でさらに仕事をし、寝るのは24時~1時。朝5時に起床し、中学・高校野球をする僕のお弁当を作ってくれていました。ピーク時は週2回くらい徹夜していました。土日も残業をしていたことが多かったです。なぜそのようになるのでしょうか?

僕が思う教員の主な仕事は3つあります。
※以下、大学の教育実習と友人や両親からの話も元に記載するので、実態と乖離している場合もあると思います。

①授業作り
②生活指導・キャリア教育
③部活動

毎日授業があるので、何を学ばせたいかどんな授業にしたいかを毎日構想していきます。基本的には日中の授業がない時間や生徒が帰宅した放課後に授業を作っていきます。ただし、小学校であればほぼ毎時間自分のクラスの授業があります。中学校・高校であれば、空きコマはあるものの放課後には部活動があります。そのため定時時間で授業を作ることはほぼ不可能です。
授業作りだけでも定時帰宅は難しいのに、生徒との面談や保護者からの相談を空いた時間で受けます。先生同士のミーティングや行事の準備(運動会や修学旅行などの)、学級通信の作成、生徒との連絡帳のやり取り、けんかなどの突発的なトラブル対応など、他にもやることがたくさんあります。新卒はさらに市や県からの研修もあります。
さらにいえば、授業は20~30人まとめて行うため、個人の習熟度を測るのも一苦労です。ノートやプリントを毎回提出してもらい、コメント返しをするだけで1時間以上かかります。
部活動があれば、土日の練習の参加、練習試合の調整、大会の引率が必要です。
忙しすぎる!!!!!

しかし、先生は生徒のために頑張ります。その結果残業時間は100時間を超えます。土日や在宅での仕事時間を含めるともっといきます。なのに残業代は出ません。

ちょっと話が逸れてきたので教員の忙しさについてはここまでにします。
次回はこの忙しさが生む問題について触れていきます。



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