20170813-Statice-タイトル

【シチュエーションドラマ風SS】Statice

キミと初めて出会ったときから、願い事はただひとつ。
どれだけ世界が変わっても、どれだけ年を重ねても、
キミへの想いは変わりはしない―…

3mm。


肩幅も、腰回りも、手の大きさも、足のサイズも。
すべて負けているけれど…身長だけは、3mm!キミより高くなった。

たかが、3mm。
されど、3mm!!
ここまでくるのに、どれだけの時間を費やしたことかっ!!

「言われても、わかんない」


体格の良さがコンプレックスだと言うキミは、頭っから俺の告白を聞く気が無い。
骨格をどうこうするのは、さすがに無理だけど…と、身長を伸ばすことに心血を注いできた。


やっと3mm高くなったことを、喜び勇んで報告すると、それは深い溜息と共に吐き捨てられた。


「わかんなくても、3mm高くなったのは事実だからなっ!」

「わかんなかったら、意味無いし」


い…意味が無い…だと?
俺は口元を引きつらせながら、ブレザーのネクタイを緩める。


「お前が言ったんだぞ?"アタシより、ちょっとでも大きくなったら、話を聞いてあげる"って!!」


俺の言葉に顔をしかめたキミが、ショーウィンドウに映った2人の姿を指さす。
男子高校生としては、細身の俺と。
女子高校生としては、ガッシリした体格のキミ。


「どう見たって、篤司(あつし)よりアタシの方が大きいじゃない!」


「…だからぁ、3mm…」


「却下!」


くるりとスカートの裾を翻して、キミはスタスタと歩き出す。
俺は後を追いかけ、キミの手を握った。
今までに無い俺の行動に、キミが驚いて振り返る。


掴んだ手に力を込めると、痛いのかキミの表情がゆがむ。
いくら見た目が大きくたって、男と女じゃ力の差は歴然だ。
建物の陰まで引っ張ってゆき、手を引き寄せれば、キミは簡単に俺の腕の中に納まってしまう。


「約束は、約束だろ?俺は守ったんだから、次はキミの番だ」


抱き締めて耳元で囁くと、キミが小さく身じろいだ。


「へぇ…耳、弱いの?新発見だなぁ…」


「違う」と言って暴れ始めるキミをよそに、俺は彼女の耳を唇で挟む。
耳たぶの感触が気持ちよくて、何度も食んでいると「ふぎゃっ!」と、今までに聴いたことのない声がした。


「なに?すっごいカワイイんだけど?」


耳から口を放して、キミの額に俺の額をくっつけて笑う。
身長差がほとんど無い分、視線がダイレクトに絡む。
キミの顔が、一瞬で真っ赤になるのを見た。


「ばっ…バカじゃないの!離してよ!!」


声を荒げて、俺を睨み上げてくるキミは、とにかく可愛くて仕方ない。
ちょっと涙目になってるトコなんて、超ツボなんですけど!!


「やーくーそーくー。まだ、守ってもらってない」


甘く甘くねだってみると、キミは切羽詰まった声で「わかったから!」と、言った。
にやけるのを抑えつつ、腕の力を緩めて距離をとる。
あからさまに安堵の表情をする、キミ。
少しだけ、こわばった身体の力が抜けた。


「子どもの頃から、キミだけが好きだよ。だから、俺のこと受け入れてね―…」


俺は一気に告白し終えると、キミの頬を両手で包んで、口づけた。
「は…」


何が起きたのか、理解が追いつかないらしいキミは、溜息とも言葉ともつかない音を零す。
すかさず、角度を変えてもう一度。
今度は深く、口内を舌でなぞってみる。


「ちょっ…まっ…」


正気を取り戻したらしいキミは、女のコとは思えない力で俺の身体を押し返す。
逃がさないけど。


「は、話は、聴くって…言ったけどっ…こっ、こんな約束してないっ!!」


「話はした。そんで、受け入れてってお願いしたじゃん」


「お願い…って…」


会話にならない…と絶望したように、キミは瞳を見開いた。
両腕で肩を掴み、頭を左右に振って、俺の腕から逃れようとする。


「嫌じゃないでしょう?」


小さく首を傾げて問う俺に、キミは大きく一度まばたきをした。


「本気で嫌なら、キミは俺をこんなに傍に置いてない」


「傍に…って、生まれたときから家が隣の幼馴染を…避けようがないじゃない!」


それでもキミなら、避けるハズだよ。
ずっと…ずっと、キミを見てきた俺は、確信している。
"今度"は、大丈夫。


「まだ、自覚してないだけだって。絶対、俺のこと好きになるから…ね?」


反論しようとキミの口が大きく開いたので、俺はありがたくそこへつけこんだ。
もう、なんにもわからなくなるくらい、気持ちよくなっちゃえばいいよ。


キミが早く口づけに慣れるように、俺は何度も何度も繰り返した―…。


キミと初めて出会ったときから、願い事はただひとつ。
キミを、幸せにしたい。
どれだけ世界が変わっても、どれだけ年を重ねても、キミへの想いは変わることがないから。
早くキミも、俺のことを好きになりますように。



― 終幕 ―

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