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【キョウシュウジャー企画】レンジャーとわたし ~ブルーの場合~

こんにちは、コメディアスです。
『仮免戦隊キョウシュウジャー』でヒーローを演じた俳優たちに「戦隊ヒーローとの思い出」を語っていただく本企画。二回目はブルーを演じた村上京央子の思い出です。
第一回の大橋秀喜はレッドを25人分解したりしていましたが、今回はどんなエピソードが出るのでしょうか。ぜひお楽しみください。

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「それほど」(ブルー・村上京央子)

 レンジャーとの記憶についてエッセイを書くことになったが、わたしとレンジャーにはエッセイにするほどの思い出はない。熱心に見ていた戦隊ヒーローもいないし、ヒーローショーも観たことがない。当時のわたしは悪の組織と戦う戦隊ヒーローよりも黒の組織に殺されかける工藤新一の方が好きだった。好きが故に、多賀城ジャスコ(多賀ジャス)に設置してあった工藤新一とツーショットが撮れるプリクラで満面の笑みを収めていた。自分のことを工藤新一のガールフレンド毛利蘭だと信じて疑わなかった。
 そんなわたしだったが、なぜかある戦隊ヒーローのおもちゃをひとつだけ持っていて、それをえらく気に入っていたことをふと思い出した。なんとかそこからレンジャーとの思い出を書いてみる。

(1)フリーマーケットin夢メッセみやぎ

 2000年代初期、わたしはフリマにハマっていた。当時は幼稚園から小学校に上がる頃だったろうか。何がきっかけかは忘れたが、母親といっしょにフリマ会場に出かけて買い物をしたり、また出店する側に回り参加したりを数か月に一度くらいの頻度でやっていたと思う。わたしはそれが好きでたまらなかった。ただ買い物に行く回でもお店を出しに行く回でもその前日から幼いわたしはずっとルンルンで、こどもちゃれんじの付録で手に入れたテントウ虫型のおもちゃレコーダーを使って自作のフリマソングを作って歌い録音し、しきりに再生するご機嫌っぷりだった。歌詞は「フリマ」のみである。メロディは今でも鮮明に覚えているので気になる方には歌ってあげることができる。今思うとなかなかおしゃれなファンクサウンドだと思う。


 その日は出店する側ではなく、買い物に行って掘り出し物を見つける側だった。フリマの買い物は狩りである。現代はフリマアプリの台頭により、現地に赴くフリマというのはなかなか聞かなくなった。現地フリマはその日限り。お気に入り登録機能なんてものや考えてから後日なんてことも当然なく、出会ったときに購入を決めなければそのあとに来た客にかっさらわれる。このスリリングさがフリマの魅力のひとつである。わたしが古着屋のドンドンダウンオンウェンズデイを愛用しているのもこのフリマの興奮が忘れられないからだろう。ここで買わなければもう一生出会えない、その意識からわたしは小児のわりに思いきりのいい買い物スタイルであった。その日も母親から与えられたお小遣いを手に会場内の出店店舗を見て回った。そして気づけばわたしはその日の戦利品として、おもちゃのパチンコ台を手にしていた。それがわたしと『星獣戦隊ギンガマン』との出会いだった。

(2)ギンガマンパチンコ

 星獣戦隊ギンガマンは1998年から1999年に活躍した戦隊ヒーローである。幼いわたしがフリマで手に入れたおもちゃの小型パチンコ台は、その星獣戦隊ギンガマンの公式グッズだ。ギンガマンを視聴していて、ギンガマンが好きだからそのグッズを買ったのではなかった。ギンガマン放送当時わたしは三歳になりたてでギリギリ自我が芽生えておらず、いわゆる世代ではなかったため、わたしのギンガマンの知識は完全にゼロだった。にもかかわらず何故これを買ったのか、本当に覚えていない。ただ、「いいな」と思いそれだけで買ったのだと思う。当時のわたしはそういうことをよくしていた。まったく知らないキャラクターのキャラソンCDをTSUTAYAで借りたり、まったく見たこともないアニメのVHSを第3巻だけBOOKOFFで買ったり。はやくもオタク開拓期に差し掛かっていたわたしにセオリーやルールなどは関係なく、衝動の赴くままにそういう行動をしていた。そういうわけでわたしはいきなりまったく知らない戦隊ヒーローの、変身メカでも戦隊ロボでもないマイナーおもちゃを手に入れたのだ。

 ギンガマンパチンコは大判コミックくらいの大きさで、背面は真っ青なボディ、全面は透明なプラスチックで中身のギンガマンたちの写真がプリントされたカラフルな台紙とパチンコの玉が通るルート部分が見えるようになっていた。右下にある小さいレバーを弾くと、パチンコ玉が上に弾き出され、その玉はピンによって導かれた穴の中に落ちていき、それとは別に中央部分にあるギンガマン顔スロットが回転する。光ったり、音楽が鳴ったりするわけでもなく、パチンコを弾く音と玉がカラカラと落ちていく音だけが鳴り、スロットに関してはほぼ無音で回っていた。そんな地味なおもちゃだ。ギンガマンパチンコはただそれだけである。しかしわたしはこのゲーム性の薄いおもちゃをすこぶる気に入っていた。車でのお出かけの時は後部座席でずっと玉を弾いていたし、岩手のばあちゃん家に遊びに行くときも必ず持参していた。二個年上のギンガマン世代である幼馴染の男にギンガマンパチンコを奪われたときはすごく嫌な気持ちになったりもした。ギンガマンのことを知らない人間がギンガマンを知っている人間よりもギンガマンパチンコに執着していた。それからすぐ、わたしはギンガマンに関する追加知識を得ることになる。

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(3)偏るギンガマンナレッジ

ギンガマンパチンコを得たフリマから数か月後、再びわたしはフリマへと連れて行ってもらっていた。そこでわたしは、90年代後半から2000年代前半にかけての人気アニメ主題歌が男児向け女児向けそれぞれ4曲ほど入ったカセットテープ付きのソングブックを手に入れた。購入した目当ては、当時正規にハマっていた女児向けアニメ『スーパードール リカちゃん』の主題歌『ねっ』の音源であった。しかしそこには偶然にも『星獣戦隊ギンガマン』の主題歌『星獣戦隊ギンガマン』も収録されていたのだ。そのカセットを手に入れてからというもの、車でのお出かけのドライブソングはもっぱらそれになった。同じ曲たちを繰り返し繰り返し聴き続けるのに付き合ってくれた両親はどんな心境だったのか。「ガンガンギギンギンガマン」と繰り返すレンジャーものにありがちなサビ部分はこどもにも覚えやすく、本編を知らないまま主題歌だけは完璧に空で歌えるようになった。ソングブックに載っていたOP映像の一部を切り取った画像を見て、頭の中でこういうオープニングだろうかと想像で知識を補強したりした。頑としてギンガマン本編を見ようという思考には向かず、こうしてわたしのギンガマンの知識は外側のさわり部分にまた偏った。 

 しかし、もうこれ以上ギンガマンの知識が増えることはなかったし、ギンガマンパチンコはばあちゃん家で遊んでそのまま納屋に置き忘れて取りに帰ることもなかった。そのままギンガマンのことは忘れていった。

(4)結局

 わたしはその後ついぞ戦隊ヒーローにハマることはなかった。スーパーヒーロータイムの時間には一応起きていて、そのときやっている戦隊ヒーローを朝ごはんを食べつつ流し見していたが、父親の方が熱心に見ていたと記憶している。どちらかといえば仮面ライダー派だったしその仮面ライダーの内容もほぼ覚えていない。唯一、特捜戦隊デカレンジャーの上官的存在のロボット犬だけやけに記憶に残っていて今も戦隊ヒーローと聞くとそのロボット犬を思い浮かべる。そういう断片的なレンジャー情報は欠片として頭にあるが、ストーリーやメインの登場人物などは全く記憶にない。かといって作品を見直そうという気持ちにもいまのところなれていない。同じことで、かつてガワしか知らなかったギンガマンを今から見てみようとも思わない。ただ、『星獣戦隊ギンガマン』は一生口ずさめると思うし、ギンガマンの小さなパチンコ台は一生ばあちゃん家の納屋にあるんだと思う。

(5)おわりに

 ここまで記憶をなんとか辿って記事を書いたが、ギンガマンパチンコを持っていたことと「星獣戦隊ギンガマン」を歌えること以外は事実かどうか定かではない。それほど思い出のないレンジャーの記憶の中で唯一エッセイを書けそうな記憶の端を捕まえ、書いてみると思ったより筆が進み、要求された2倍ほどの量を書いてしまったが、あいまいな記憶を繋ぎ合わせているためほぼ捏造な気がしてきている。いつになるか実家に帰った際には母親に答え合わせをお願いしようと思うが、ついでなのでキョウシュウジャーパチンコやキョウシュウジャーの主題歌なんかも捏造してみようと思う。この記事を読んでくれた方もよかったら捏造してみてほしい。

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