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【感想】FLYING SAPA

『FLYING SAPA -フライング サパ-』
作・演出/上田 久美子

ずっと楽しみにしていた今作は、楽天オンデマンド配信にて視聴致しました。奇跡的に仕事がお休みで本当によかった。

見れてよかった、というか

**凄いものを見てしまった… **

という畏怖に近い感情でした。そのような訳で、いつもながらネタバレ有りの感想を綴ります。




ストーリーは、鬼才の上田久美子氏が手がけるSF作品でした。
とてもファンが多い方ですが、私もご多分にもれずファンのひとりです。
一幕でたくさんの謎が生まれ、それが二幕になり伏線回収されていきます。悲劇や悲哀、モノトーンな世界観包まれておりラストは劇中のセリフにもある「希望」を感じさせる終わり方になっているのはさすがの一言。
これが宝塚、上田久美子氏でなければ只管に悲劇に終わっていたかも…なんて思ってしまう。

大量の長台詞、演者の滑舌が良くて素晴らしい。冒頭からしばらくは、スピード感についていけるのか不安に駆られました。

モノトーンの質感、無駄を省いたのであろうかシンプルながら計算されたセット
上田久美子氏の作品は、布地を効果的に用いられる印象なのですが今作でも健在のように感じました。
特に官能的な場面で、布地の動き方は神聖さすら感じました。
音楽も、光を使った演出も最高でした。

非常にメッセージ性が強い作品だと感じました。戦争というひとつの題材に、そこに生きる人達の悲哀や絶望、スミレコードはOKなのかな?と心配になる陵辱シーン…
戦争によって大切な人を奪われた科学者が、争いを生まないために個人間にある違いを排除するために犠牲をつくる矛盾など、理解は出来ないけれども壊れていく、もしくは壊れていないと保てない心情である事は何となく分かりました。
手塚治虫氏の戦争を題材に扱った作品を読む時も感じる苦しさを感じました。
うーん、なかなか消化できないです。

キャスト
主役の真風涼帆さんは、まさに美しい男性そのもの。熱演に心が震えました。
長椅子に横になるだけで、バーカウンターでグラスを傾けるだけで(アクアヴィーテで実証済み)絵になる。
あのコートとニットを考えたのは何方様でしょうか。お衣装が天才。

精神科医の芹香斗亜さんは、匂い立つ色気に目眩しそうでした。
多言語で囁くように甘い優しい声での歌が素晴らしかった。
彼に心配されたいし、守られたい。繊細で控えめながら慈愛に溢れた表情にうっとりしました。

星風まどかさんは、いつも笑顔が素敵で可愛い方ですが可愛い成分を極小にして退廃的な雰囲気がよかった。
物語のキーパーソンで、背中で独白する場面は美しかった。
私、彼女の声が好きだな…と改めて気づきました。
ぺたんこのお腹や、「ビビビ」の可愛らしさにはやはり星風まどかだわ…とやっぱりメロメロになりましたけど笑

びっくりしたのは、夢白あやさんの演技力。ビフォーアフター時々ビフォーに戻って声のトーン、話し方、表情がまるで別人のよう。
ショートカットも似合っていて、本当にお綺麗だった。腕の包帯も細すぎて落ちてしまいそう、細身のブーツですら余ってるわ…とスレンダーさにも驚く。
正統派のプリンセスだけでは無く、色んなお役が見てみたいな。あの美貌で悪女なんて最高な気がする。

瑠風輝さんは異次元スタイルでしたし、宙組デビューの紫藤りゅうさんは白いお衣装が似合っていて格好良かった。
組長さんの演技、お声が好きだなあ。場面にいるだけで安心します。
松風輝さんの女役も素晴らしかった。声がよくて歌声にも癒されました。
専科のおふたりもさすがとしか言えない。

歌唱シーンが少なくて、劇中の拍手もなくて所謂宝塚らしさとは違うかもしれないのですが、この作品を今の宙組さんで観れてよかったと思いました。
素晴らしい演者、脚本をはじめとするスタッフの皆様全てに観させてもらってありがとうございます!と感謝しかありません。
何度も観たい。


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