“徳島県の勝負師バトラー” 勝負と交流に全力の喜びを【ビブ人名鑑#18:関口俊介さん】
ビブリオバトル普及委員会で活躍中の方(ビブ人)へのインタビュー企画、「ビブ人名鑑」。
今回は徳島大学でビブリオバトルを続ける、関口俊介さんのインタビューをお送りします。
高校生でビブリオバトルに出会ってから、驚きの大学入学経緯、印象的なバトルから今後のやりたいことまで、たっぷりとお届けします。
バトラーとして、ガンガン出たい。
― 今の関口さんのビブリオバトルの関わり方や活動について教えてください。
僕は徳島大学の学生で、阿波ビブリオバトルサポーターというサークルに所属しています。
ここでは月1ほどの割合でビブリオバトルや読書会をやって活動しています。
その他、サークルの顧問の先生から依頼を受け、学内の他の講義でビブリオバトルのデモンストレーションを行います。
時には学外の高校などからも依頼を受けることがあります。
ただ、ちょっとこの2年はコロナのことがあって行けていないですね。
基本的には徳島大学で活動していますが、徳島県下の全国高校ビブリオバトルにお手伝いに行ったりもしています。
― お手伝いということは、どちらかといえばサポート側の活動が主なのでしょうか。
活動はサポートが主ですが、僕自身はバトラーとしてガンガン出たいタイプですね。
やはり、ビブリオバトルを開いてもなかなか人が集まらない時も多いので、自然とサークルのメンバーがバトラーをやるという流れになりやすいです。
ただ、僕は元々バトラーとしてやるのが好きなので積極的に出ています。
高校の出会いが、話好きに火をつけた。
― そもそもどういうきっかけでビブリオバトルに出会ったのでしょうか。
ビブリオバトルとの出会いは高校生のときです。
高校1年生の時に図書委員だったんですが、その図書委員研修で「ビブリオバトルというものがあったそうだ」と聞いたんです。僕自身はその時は参加してなかったんですけれども「面白そうだなあ」と思ったので、その次にあった研修でビブリオバトルに参加し「この催し、面白いな」と感じたことがきっかけでした。
とにかく他のバトラーさんの発表も、その後いろいろ話したりするのも面白いので、「これいいな」と思ってのめり込んでいったら、いつの間にか大学の4年生に至るまでやってる、という感じです。
― それは高校生のビブリオバトル大会でしょうか。
高校生の大会ですね。
図書委員研修の中で、たしか読書推進の一環としてビブリオバトルを行う、という趣旨の会でした。
10数人くらいが4人ずつグループにわかれて、それぞれのグループで1回ビブリオバトルをし、それぞれのチャンプ本獲得者が決勝戦をする、という形式だったと思います。
― いわゆるワークショップ型のビブリオバトルを経験されてたんですね。
そうですね。
全国大会まで出場したのは高校2年生のときだったんですけれども、高校のビブリオバトルは県別にわかれてる他に、中国地方、四国地方と地区別に分かれていたと思います。
その四国地方の大会の方でありがたいことにチャンプ本に選ばれて、そこからまた全国に行くことになり、出場まで行きました。
まぁ決勝戦の予選は敗退してしまいましたが......。
― その時は東京に行かれたんでしょうか。
行きましたね。
高校ビブリオバトルで、東京の読売新聞社主催だったと思います。
― 関口さんにとってはどのような経験になったんでしょうか。
そうですね、非常に楽しかったです。
その後に懇親会でさんざんぱら『図書館の魔女』を両手に布教し回っていた男子高校生が1人いたはずなんです。
それが僕なんですけれども(笑)
― あの会場はとても大きなところで、大勢が集まっていた場所だったと思います。
はい。
自分で言うのもなんですが、話し好きの側面があるので、ビブリオバトルの後にある交流会が楽しみで、ビブリオバトルをやる動機としてウェイトが大きいところがあります。
― それは大事ですね。飲み会をはじめとした交流があるからこそビブリオバトルだ、とおっしゃる方もいます。あの高校生の大会で交流した方と、今でも連絡を取り合ったりするんでしょうか。
いやそれが僕、なんていうか、その辺り割とドライなところがあるというか。
― え?
言い方があれなんですけど、一夜、一度の出会いが結構好きなタイプなところがあって。
あの時は連絡先はあんまり交換しないままに、ただお互いの本好きな本とかをひたすら喋り合って終わったのですけど(笑)。
それはそれで楽しかったです。
ビブリオバトルで推薦入試へ。
― 高校でビブリオバトルを経験して、そこから阿波ビブリオバトルサポーターになられたとおっしゃっていましたね。
はい。
― 徳島大学はどういう理由で選ばれたんでしょうか。
それこそビブリオバトルが理由で徳島大学を選んだと言いましょうか。
多分あまり例がないタイプだと思います。
高校生の図書委員研修や徳島県下の大会に出てるうちに、阿波ビブリオバトルサポーター顧問の依岡隆児先生と仲良くなりました。
その依岡先生の研究自体も個人的に興味がある分野だったこともあり、ここまで来たなら先生との縁もあるし、今後ビブリオバトルも続けたいと思った時に、阿波ビブリオバトルサポーターという、すごくわりと、自分としては身近な組織があることに気づいたんですね。
だったらもう徳島大学でいいんじゃないだろうかと思って、ビブリオバトルの成績を持って推薦で入りました。
― なんと!
はい。あの、なんか全部ビブリオバトルでゴリ押ししました(笑)
― 「ビブリオバトルで入学した」なんて、そう言っても過言ではない感じではないでしょうか。
前例がないので高校の先生から大分渋られましたけれども(笑)
担任の先生からは「行けるかどうか…」みたいな心配の声もありました。
― では、合格したときに、先生はどんなふうなリアクションだったのでしょうか?
いや、普通に喜んでくれました(笑)
「行けた!よかったな!」みたいに。
ー よかったですね。「ビブリオバトルで推薦」というのは、ビブリオバトル好きな高校生がこの話を聞いた時、すごく励みになるんじゃないかなと思います。
なったらありがたいですね。
一応武器にはなりますよ、って伝えたいです。
― 徳島大学に入学後、阿波ビブリオバトルサポーターはすぐに入られたんでしょうか。
そうですね。入学して4月の段階でサークルに入りました。
各サークルのオリエンテーションがあって、そのときにブースで阿波ビブリオバトルサポーターの先輩たちが紹介してたんですけれど、そこ行って端的に「入ります」って言いました。
― ものの数秒でもう決定!?(笑)
一応、紹介を聞いておいて
「はいわかりました。ありがとうございます。では入ります」
みたいなテンションで入りましたね。
―なるほど(笑)。顧問はビブリオバトル普及委員会の佐々木奈三江さんですか。
顧問は依岡隆児先生なんです。
けれど、助言指導教員のうちにその徳島大学図書館全体が入っているみたいな構図です。
職員さんの協力は全面的に得られる、みたいな体制になってて、中でもいろいろと関わりが深いのが佐々木さんだったりするっていう感じですね。
―改めて、今4年生ということで、入学から4年間で何かそうやってやられた活動を教えてもらえますか。
そうですね、ひとことで言うなら、大体月1でビブリオバトルの会を主催しました。
やっぱりビブリオバトルをしてもらうにあたって、いきなり発表するのはハードルが高いところがあるかと思います。なので、時々読書会をその前段階のステップとして設定し、参加者を募ります。
ただ、やっぱり新型コロナウイルス感染症の広がりで、そのあたりがちょっと難しくなったとは思います。
オンラインでも月に1回ぐらいはイベントをやっているんですが、どうしても対面の時のような盛り上がりには今ひとつ欠けるとずっと思っています。
サークル内でもこの点はずっと問題として共有してるんですけれども、いかんせん、状況が状況なだけに気軽に対面にも持っていけず、というところですかね。
― 徳島でもやっぱり、コロナの状況で厳しいものなんですか。
ついこの間、緊急事態宣言明けに合わせるようにして規制が少し緩まったんです。
けれど、徳島大学自体でBCPレベルというものが設定されていて、課外活動・野外活動がコロナの蔓延状況によってはオンラインのもの以外原則禁止になるなどしています。
規制がいつ来るかわからない状況でイベントを設定してやる場合、結局途中でオンラインになったり中止になったりと変更することになりますよね。
そうなると最初からオンラインにしておいた方が混乱は少ないため、どうしてもオンラインにせざるを得ないところがあるんです。
― 対面でやりたいけど、仕方なくオンラインにしている、ということですね。逆に、オンラインでビブリオバトルを行うことで、魅力やすごくいいなって感じるところがあったりしますか。
オンラインになってよかったことは、去年と今年続けてなのですが、全国大学ビブリオバトルの予選会を開かせていただく際、徳島県外の方からの応募が来たことです。
― SNSで知ったのですが、遠くからも参加されていたようですね。
今年はさらに県外の方から応募していただきました。
なんていうか、地域的な距離的な差がなくなったのが良いと言えばいいんですけれども、実際のイベントでやる時の距離感みたいなのはオンラインではこう、若干難しいところになっていると思います。
― そうですよね。距離の部分を考えるとオンラインでよかったかもしれないけれど、やっぱり対面は対面の良さがありますよね。
はい。
5分のバトル、琴線に触れる。
― 高校から現在の大学に至るまでビブリオバトルを経験されていて、最も印象に残っているビブリオバトルはどれでしょうか?
最も印象に残っているのは、高校2年のときの四国大会のビブリオバトルですね。
前年に『図書館の魔女』でチャンプ本を取って全国大会に行かせてもらったんですけれども、翌年に出た時はチャンプ本ではなかったんです。
その後、親睦会の時に話していた方から
「突然なんですけれど、あなたの発表に触発されてビブリオバトル始めたんです」
と言われたことがあって。
― えっ!
こっちも
「えっ!」
っとなりまして、さらに相手から
「去年のこの大会で」
って言われて驚いて、僕も数秒黙り込んで考えて、よくよくお顔を拝見したら、去年の『図書館の魔女』の発表の後、質疑応答のときに質問してくれた方だったんです!
女性の方だったんですが、質問の前に
「発表ありがとうございます。あの、関口さんの発表が、こう、琴線にビンビンきましたので」
ってすごい特徴的な褒め方をしてくれたので、それは覚えていたんです。
気がついた時は
「ああ!あのときの!」
って感激しました。
こんなことあるんだなあと思いまして、多分あのときが初めてだったんですよ、1人の人間をビブリオバトルに引き込めたのが。
だからそれが一番印象に残ってますね。
― それはでもある意味、なんかその方の人生を関口さんが変えたと言っても過言ではないというか。
人生の一瞬なのかどうなのかわからないんですけど、ある程度変えちゃったんで、やっぱりびっくりというか印象に残るというか、感激もしますよね。
「えー、まじか」って。
Bibliobattle of the Year 2021を受賞したことについて
― 今からお聞きすることは関口さんだけじゃなくて、阿波ビブリオバトルサポーター全体に関わることになります。Bibliobattle of the Year 2021で、特別賞「ビブリオバトルの渦を作るで賞」を受賞されましたね。
ありがとうございます。
― 受賞されたお気持ちを伺いたいです。
いや本当に、受賞というものをお知らせいただいた時はびっくりして、LINEとかでもメンバーと「あの、受かっちゃいました」っていう感じでやりとりしていて(笑)。
全国で色々なビブリオバトルの活動が行われているので、よもやその群雄割拠に混じって我々が生き延びるなどということは...なんて思っているので。
― 生き延びるっていうのも大袈裟ではないでしょうか(笑)
「生き延びる」ってのもちょっと変な言い方かもしれないんですけど、まさか選ばれるとは、そこまで思ってなかった、っていうのが実際のところです。
でも、受賞にあたってはやっぱり今までの活動が認められてきたことのある種の証明のようで、とても嬉しかったですね。
今後も頑張っていこうと、この受賞を機に改めて気合いを入れ直そう、みたいな感じがあります。
拡張してみたい、交流とプレゼン手法。
― 関口さんは高校から大学に至る今までビブリオバトルをされていますが、これから関口さんがビブリオバトルでやっていきたい野望や、チャレンジしたいこと、将来の夢とか展望みたいなものはありますか。
そうですね。
具体的なものまではないんですけど、やっぱりこれから先もビブリオバトルは続けていきたいです。
その時は主催をやるにしても、バトラーとしても出たいなと思っています。
やっぱりビブリオバトルの醍醐味の一つは「人との交流」だと思ってるので、そういうものを広げる一助になればと思うと同時に、ビブリオバトルのノウハウって他のものでも多分使えるような気がすると思うので、そこでまた、本だけじゃなくて、他の試みなんかもやってみたら面白いのかな? と思ったりします。
― 本以外というと、どういうふうなものでしょうか。
安直にサブカルどころになってしまうんですけれども、ゲームの紹介でそれをできないか、あとは本の場合に、創作物のひとつの登場人物だけに絞ってそういうことをできるかどうかとか。
それはそれで盛り上がるだろうなと思いますし、そこで生まれる人の交流って面白いんじゃないかと考えています。
全ての勝負に「戦い続ける喜びを」。
― 改めて、関口さんにとってのビブリオバトルとはどういうものなんでしょうか。
そうですね。
「人と、楽しいことを話し合うためのツールであり、同時にとっても楽しいゲーム」
ってところですかね。
実はビブリオバトルに関してちょっと、座右の銘じゃないけど……あるんです。
「戦い続ける歓びを」ってずっと思っているんで。
― 戦い続ける喜びを!?
実はビブリオバトル以外もそうなんですが、自分は勝ち負けの結果自体にはこだわらないんですが、勝負自体はすごく好きな人間なんです。
ビブリオバトルの、自分が好きなものを発表するっていう前提があるものの、少し戦略を練ったりして発表するのがもう好きなんです。
ちょっとした技じゃないですけれども、そういう人の工夫を見たりするのも、人がおすすめする熱意を見たりするのもすごく好きで、その熱意に当てられてまたこっちも楽しくなってくる。
そういう熱心な語り合い「おすすめしあい」っていうのがすごく楽しいです。
なんなら、みんなそれやったら平和になるんじゃないかって思ってるくらいの人間なので。
そういう意味で広がってほしいと同時に、これからも続けていきたいなと思っている。
そんな楽しいゲームでございます。
― 勝負事がお好きなんでしょうか。
自分がやるのもそうですし、他人がやってるのもそうなんですけど、この「勝負」ってものを見るのが好きなところがあります。
お互いに健闘をたたえられるタイプのバチバチした勝負が大好きな人間なんです。
ビブリオバトルにはそういう勝負的な楽しさもありつつ、僕も本が好きなので、それをおすすめしながらそういうことができるのは、僕としたら楽しいことです。
実はやりたいと思ってる人はいるけれど、まだまだ隠れてるんじゃないかなと思うので、そういった層にもしこれからビブリオバトルが広がっていったら、と思います。
― こちらもお話を聞けて嬉しいです。ありがとうございました。
ありがとうございました。
Bib-1グランプリでの関口さんのご活躍は、アーカイブ動画にてお楽しみください。
「ビブ人名鑑」シリーズでは、ビブリオバトル普及委員会で活躍されている方々のインタビュー記事を不定期に掲載していきます。
どうぞお楽しみに!
お読みいただきありがとうございました。
インタビュー:高橋一彰(ビブリオバトル普及委員会 普及委員)
取材日・場所:2021年10月8日 Zoomにて
執筆:花岡猫子(ビブリオバトル普及委員会 普及委員)
よければサポートお願いいたします。いただいたサポートは、(一社)ビブリオバトル協会の運営資金として、ビブリオバトルの普及活動に活用させていただきます。