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へそのごまを取った話

私じゃなくて彼のやつ。


ずっとずっと気になっていた。

たぬきみたいにポッコリしたお腹に奥まったおへそ。そこに見え隠れする黒い塊。

たまにクンクンと鼻を近付けるとちょっとクサい。

私は閃いた。


ねえねえ!明日!おへそのごまを取る遊びをしようよ!!


思いつきで誘ったその言葉に彼から

イカれた彼女って今日初めて思ったわ

と爆笑されたのでヨシとしよう。(いいの?)


そして決行当日(大袈裟だな)


彼は仕事で疲れてベッドでうとうとしていた。私も一緒にゴロゴロと寝転ぶ。

で、思い出した。そうだ!へそのごまを取る遊び!やる日だ!!


一応手順をスマホで調べる。

すると出てくるわ出てくるわ


へそのごまは無理して取らない方がいい!!


っていうどっかのドクター達からのお達し達。

うん、知ってる。伊達に歳行ってないよ。それくらいの知識はある。

一瞬やめようかな…と思った矢先。人間は多分きっと自分の都合の良い文章が目に入るようになっているんだと思う。


ニオイがある場合は取った方がいい。


そらみた事か!ニオイあるんだよ!結構ニオイあるんだよ!!なら、取るしかないよね!!!ね!!!!!(満面の笑み)


てな訳でうとうとしてる彼に、へそのごまを取る遊びするね!って声をかけてオリーブオイルの準備。後は綿棒。

準備が出来たら、また一声かけて奥まったおへそにタラーリとオリーブオイルを垂らす。奥まっているおかげでオリーブオイルは溢れない。

少し冷たいと言いつつうとうとしてるので、多分セーフ。(彼は割と冷たさ熱さに敏感)

そして少し時間を置いた後に、綿棒でゴマをツンツンする。ピクリとも動かない。

周りをツンツンしようが何をしようが動く気配がない。


もしかしてこれ、めちゃくちゃ頑固???



このままじゃ埒があかねえ!

って事で秘密兵器の登場です。



テッテレー ピンセットー!


ピンセットを石鹸で洗って、拭き取ったのち、アルコールを噴射。よし、イケる。


へそのごまをピンセットで挟む。

上手く取れず、ごまを挟んだ音がぷちん、ぷちん、と寒い部屋に響く。

痛がれば即止めようと思っていたので、うとうとしてる彼を窺いながら何度か挟んでいく。

痛くない…?

ん…?ぜんぜ…スゥー


まだイケる。


これは時間が経てば経つほどよろしくない。

部屋は寒いし、お腹出しっぱなしだとお腹を下してしまう。それはダメだ。うん。


よし、思いっきりいくぞ!!



ゴマをかっちりとピンセットで挟む。

オリーブオイルで滑らないようにガッチリと。


そしてゆっくり、ゆっくり引っ張っていく。

痛くない?確かめているが、どうやら痛みはないらしい。

ならば、と引き続きそのままの力で引っ張っていく。

その時。


ずるり


うわああああ!??!!?!

あまりの大きさにピンセットから取れたゴマを落としてしまう。

しかし取れた衝撃なのか、うとうとしていた彼がパチリと目を開き覚醒した。


取れた?取れた?

うん、うん、取れたけど、取れたけど大き過ぎて…

見せて?


そう言われてへそに落としてしまったあり得ないぐらい大きさのゴマをピンセットで挟み、彼に見せる。その時否が応でも私の目にも入る。

それは私が想像していたよりも大きくて、黒いだけだと思っていたのに根っこの方はふわりと白い。大きさで言えば2センチはある。多分、デカすぎる。

2センチもあるものがへそからずるりと取れるのは物凄くスッキリとする。なんだろうこの爽快感。クセになりそう。


なんて、色々感慨深く思っていた頃。

どこからかニオイがする。そのニオイの発端は間違いなくさっき取った大き過ぎるへそのごまだ。

鼻を近付けるまでもなくクサい。ぷーんとニオってくる。とてつもなくクサい。

クサすぎるので彼の鼻にも近付ける。

クッサ!!


思い通りの反応で思わず笑う。それ程にクサい。とにかくクサいのだ。


まあ、そんな話はさておき、無事に取れたへそのごまは厳重にティッシュに包みゴミ箱へ捨てる。

そして綺麗にする為にお風呂へと急ぐ。

全部を綺麗にして、お風呂から上がり雑談をしていた時。どこからともなく先程と同じニオイがしてくる。

そのニオイを辿るとなんと、彼のおへそからニオって来ているのだ。


さっき綺麗にしたのに!

ごま、取ったのに!

なんで???


とりあえずお湯が入って蒸れたりする可能性もあるから、タオルで優しく拭いてみよう

提案すると大人しく言う事を聞いてくれる。


そうして水分を綺麗に拭き取ってから、まだ彼のおへそに鼻を近付けていない。

今日これから帰って来たら鼻を近付けてみようか。


それでも臭ってきたら…


それはその時考えよう


おわり。


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