溶けてく脳、夏の夜
なんだか最近はダメだ。許されることなら泣きたいと思ってしまうことがある。仕事をしてる時はいい。終わった後でプツンと泣いちゃいたい助けてくれとなる。あと始める前にやたらと無気力。
というわけで、私は新たな場所へと足を踏み入れてしまった。
その場所は気になってはいたものの、私が入ったら行けないのではないか、変な目で見られるのではないかと思っていた場所である。満席の店内、小さな声の店主に一瞥され「店内奥まで入ってお待ちください」と言われる。同行者とそわそわしていると、先に呼ばれたのは同行者だ。彼は何度かここに来たことがあるらしい。私にルール的なものを教えてくれて、店内でもすっかり隣に入れるだろうと思ってたが甘かった。ここには同行者なんて概念がない。何人で来ようと対峙するのは結局1人なのだから。
同行者と離れた私はとりあえずバレない程度に店内を見渡す。どんな振る舞いをしているのか、もんなスタイルなのか。なるほど、暗黙のルールもわかってきた。90年代から00年代の流行のポップスに耳を澄ませ、そんなことを考えていると「そこ、お座りください」目の合わない店主から声をかけられた。
そこからは早かった。話でしか聞いたことのない世界が私の前に広がった。郷においては郷に従え。これは私のモットーである。というわけで、なりふりかまわず、食らいついた。
なるほど。たしかに噂以上。これは先が不安だ。そう思うも、絶品具合は想像以上。どうか無くならなきゃいい。そう思って無我夢中に貪っていたら、気付かぬうちにオーラス前まで来てしまった。最後はゆっくりじっくりと味わうように、そして生まれて初めて汁までいただく。
店を出ると蒸し暑いはずの外は、なぜか涼しく感じた。汗まみれ。なにかの競技に打ち込んだ後のよう。
頭はぼーっとしてるし、なんだか声は大きくなる。すごい体験をした!そんなことを言葉のディティールを変えて何度も何度も繰り返し話した。たぶん語彙力はなかった。
家に帰った今もなんだか呆然としてる。私、あれを食べたんだ、食べ切ったんだ……と。
何を隠そう、これは今夜あった私と二郎系ラーメンの初めての出会いの話。
たまにはいいじゃないか、節制しなくても。
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