第36巻 スイスの山
第36巻 「スイスの山」
山田圭一著 1963年刊行
表紙のご婦人はノースリーブのワンピースにお帽子というエレガントさ。
しかし内容はアルピニスト向けのガイドブックです。ヨーロッパの登山のスタイル、装備や行程について、そして後半の山行記は、当時夢であったアルプスの山旅の様子を知る貴重な記録です。
「近代アルピニズムの発祥地であるヨーロッパのアルプスには、山の好きなだれもが大きな憧れを持っているしかしマッターホルンの初登頂にまつわる悲劇やアイガーの北壁をめぐってのエピソードについては聞いていてもアルプスの全貌についてはっきりした知識を得ている人は、そう多くはないのではあるまいか」
「アルプス(Alps,英)はアルペン(Alpen独)、アルプ(Alp,仏)などとよばれているが、その名のはじめは、高い山そのものではなくて、その中腹一帯にひろがっている高山牧場を意味するアルブ(Alb)
またはアルム(Alm)という言葉から来ているといわれている。
ヨーロッパのアルプスは、フランス、スイス、イタリア、ドイツ、オーストリアなどにわたって、中部ヨーロッパと南部ヨーロッパとの自然の境界を形成しているがその範囲は、長さ六百キロ、幅(最大)百五十キロという広い地域にわたっている。
「日本では、谷間に緑の牧場がひろがり、牧歌的な雰囲気をもつ平和な山里であるように印象づけられているチロルも、その奥にはいれば、イタリアとの国境に氷河に取りかこまれた四千メートル近い大物がずらりと並んで、スイス・アルプスに劣らない山行を楽しむことが出来る。