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過去のトラウマが、「表現すること」で癒された瞬間-3 ドイツ人の哲学者&アーティストの先生との出会い

今回の関連記事です。
1回目は、アートセラピーを始めたきっかけについて書きました。
https://note.com/color_of_wind/n/n8b18dfe92d6a
2回目は、ギリシャでのワークショップについて書いています。
https://note.com/color_of_wind/n/n318fa76c30eb

 私のアートセラピーの入口は、「ビオダンサ(生命のダンス)」というダンスセラピーでした。

 並行して、通い始めたアートセラピーのクラスがありました。ドイツ人の哲学者でアーティストでもある、カール・ラインハルツ・ベルガー氏と、その奥様である音楽家の祐美子さんが主催する「アドレーション・アート」という、アートセラピーのクラスです。

 お二人は精神世界の造詣が深く、静かで、思いやりに溢れた稀有な存在でした。魂の成長レベルが自分とはかけ離れたところにあり、私にとっては永遠の「先生」です。

 お二人が最も大切にしてらしたのは、「交流創造力」です。「交流創造力」とは、描いている作品と対話しつつ創造していくアプローチで、そこには、潜在意識の働きや、ユングの言うところの超意識の働きがあります。
 画材はパステルを使っていました。先生のレクチャーを聞いた後、大きな画用紙に、先生から提示されたキーワードを入り口として、浮かんできたイメージをどんどん描いていきます。1セッション、1時間程度だったと思います。大切なのは、出来上がった絵よりも、絵と対話しながら創造していくプロセスそのものです。

 アートセラピーは「何を描くか」を事前に考えたり、決めたりすることなく、そのプロセスそのものに入っていくことによって、より深い体験が得られます。

 制作のプロセスを通して、心の奥に仕舞い込んでいた「表現されずにいたもの」、例えば、怒りや悲しみ、過去の記憶などが浮かび上がってきます。
 隠していたもの(対面できずにいたもの)に、表現の形を与えることで、顕在意識(表面意識)がその存在に気づきます。そして、冷静に愛を持って見つめることで、癒されていくプロセスとも言えます。

 そのプロセスは玉ねぎの皮むきのようなもの。一枚、一枚、自分がOKを出したタイミングで剥がされていき、徐々に心が軽くなっていきます。

 そのプロセスを私が深く体験できたのが「アドレーション・アート」でした。他にも様々なアートセラピーの講座に参加し、学びましたが、絵に関するワークショップとしては、私にとってはこれに勝るものはありませんでした。


 先生方がいつもおっしゃっていたこと。
アートセラピーは、他人が介入するアプローチと違って、決して、今のあなたにとって無理な要求や、混乱を起こすようなこと、受け入れ難いことなどは出てきません。あなたの意識がOKしたものしか出てこないので、安心して取り組むことができるんです」。
 それが、アートセラピーの素晴らしいところなのだそうです。

 そして、アートセラピーにとって、最も大切なのは「場づくり」。先生方は、常にご自身を整えることに配慮しておられました。
 毎回、会場は穏やかな空気に包まれていて、先生方の意識を反映し、静かで、内観にふさわしい場ができあがっていました。

 私は2〜3ヶ月に1回くらいのペースで参加していたと思います。数年して、徐々にアドレーションアートのプロセスに慣れてきた頃、参加したワークショップで、大きな癒しが起きました。
 毎回、「火」や「水」など、4大元素と呼ばれるものをテーマとして提示されていたのですが、その日のテーマが何だったか、はっきりとは覚えていません。

 その日私は、きっと心のどこかで、コミットしていたのでしょう。

 最初、紙に向かったとき、手が黒のパステルに伸びました。黒を塗っていくうちに、画面全体が心の闇で真っ黒になりました。そして、次に選んだのは赤。傷ついた心から、どす黒い色をした血が、流れ出しました。

 黒い画面に赤い血の色。心の痛みを見つめながら、両手が真っ黒になるまで、紙面に表現された傷を優しく、優しく、なで続けました。

 やがて、「もういいかな」という瞬間が訪れました。

 「これを癒したい」。そう思ったとき、光のイメージが浮かんだのですが、白い光では強すぎて受け入れ難い感じがし、水色のパステルを手に取りました。水色の光が、血をふく心の傷を覆って、傷口を癒していきます。
 その水色は、次に大きな雨粒となって画面の上から下へと降り注ぎ、画面全体を覆っていきました。

 それは大きな川の流れとなって、私の傷を洗い流していきました。大きな浄化が起きていました。

 そして、どこかのタイミングで、画面の中央から、外へとエネルギーの渦が広がっていきました。そのエネルギーは広がった後、徐々に収まり、年輪となりました。その年輪には、ここ数年の出来事すべてが刻まれていました。
 その後、大木の幹が画面に表れました。一本の大木となることで、それらはすべて、木の中に収まり、過去の経験になったのです。

 「ああ、終わった」。
 深いところから、言葉が浮かび上がってきました。

長くなってしまったので、続きはまた後日書こうと思います。
私の癒しの旅にお付き合いくださって、ありがとうございます。

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続きの記事はこちらです。
https://note.com/color_of_wind/n/n8316d4e83941



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