色彩学って何だろう?
好きな色、嫌いな色などの個人的な興味関心の色、
流行色や商品色彩などビジネスに関係する色、
お先真っ暗、白紙に戻すなど感情や状態を表す色、
桜色や鶯色、空色など自然の色、
サイン標識や信号機、安全色など機能的な色など
私たちの生活の中にはたくさんの「色」があります。
「色」に癒されたり、イライラしたり、
「色」で物が売れたり、売れ残ったり、
「色」を楽しんだり、ルールをつくったり。
たかが色、されど色。
色彩学の奥深さを毎回少しづつお伝えしていきます。
ざっくり色彩学の歴史
色彩とは何か?が考察されるようになったのは古代ギリシャ時代、哲学者プラトンや哲学者アリストテレスからと言われています。古代遺跡にも赤や黒など色彩が施されており、何かしらの意味を持たせていたことが想像できます。錬金術も古代ギリシャや古代エジプトで生まれ、のちに様々な絵具の開発に繋がっていきます。
イングランドの哲学者ニュートンは「光学(1704年)」で1660年から行ってきた分光実験など科学的な色彩について発表、ドイツの学者であり詩人のゲーテは「色彩論(1810年)」を発表し、ニュートンを批判しています。
アメリカの美術教師マンセルは初めて色を数字や記号でシステム化した「マンセル表色系(1905年)」に発表し、色の三属性(色相・明度・彩度)という色の物差しを考案した。
日本では色彩学の考察は見られず、中国の影響を受けた「冠位十二階(603年)」によって位の高さを色で区別したり、自然の色彩を詩に詠んだり、浮世絵など絵師や摺り師たちは色を工夫し、江戸っ子たちは四十八茶百鼠などわびさびの色彩を楽しんでいました。
一番最初にできた色の名前は?
文化人類学者バーリンと言語学者ケイの2人は世界98か国の言語を調査して「基本色彩語(1969年)」を発表しました。これによると一番最初にできた色の名前は「白と黒」です。次いで「赤」、そして「緑か黄、青、茶、紫、桃色、橙、灰色」順の11色です。
桜色や空色など色の名前が増えたのは、錬金術師や画家たちが絵具を作ったことも大いに関係があります。中には鉛を使った危険な絵具もあり、フェルメールが好んだ黄色もゴッホが愛したクロームイエローも毒性があります。
色彩心理とカラーセラピー
色彩検定テキストの項目にある「色彩心理」は膨張色や収縮色、暖色や寒色など無意識に色から感じ取るイメージなどが掲載されています。赤は情熱的、革命、人情、青は冷静、清潔、信頼などで神秘的な要素はありません。世間一般で「カラーセラピー」と呼ばれているものはカラーボトルを選んだり、占いのようなカウンセリングが施されるものが多いようです。
色彩心理とカラーセラピーの明確な区別は見つけられませんが、色彩の面白さや奥深さ、美しさに心を奪われた人が多かったからこそ、現在のカラーセラピーが生まれたのではないでしょうか。
色彩の虜になった例として、スイスのフィスターは「カラー・ピラミッド・テスト(1950年)」を考案、24枚のカラーチップからピラミッドを作り心理を読み解くというものです。アメリカのカラーコンサルタントであるフェイバービレンの「好きな色嫌いな色の性格診断テスト(2003年)」など多くの本を出しています。さらに、二層に分かれたカラーボトルから心理を読み解く「オーラソーマ(1983年)」はイギリス発祥です。
また、芸術療法(アートセラピー)の中には子供が描いた絵から意味を分析した研究が国内外で多く行われ、例えば事故や事件などつらい気持ちの際は黒を多く使ったり、寂しい時は黄色を使うという事例も報告されています。
応用色彩学 流行色や売れる色
実シーズンの2年前から国際流行色委員会インターカラーによって会議で検討されてカラーパレットが作られます。企業やデザイナーはこれを元にデザインを考えてファッションやインテリアファブリックを生産します。実シーズンの半年前にパリやミラノのコレクションでお披露目されます。
このように戦略的に考えられた流行色もありますが、多様性の時代の現在はカラフルな色彩を思い思いに楽しんでいるように思います。
店舗の内外装、看板、パッケージデザイン、チラシなどの販促物などに色彩心理や嗜好色などが応用され、カラーマーケティングという言葉も生まれました。
色はココロを笑顔にするサプリメント「色彩療法士」
好きな色や嫌いな色など個人的な感覚から、売れる色など商売を左右する色まで幅広く活用されているのが色彩学です。幅広いからこそ、色を扱う際のルールやシステムもたくさんあります。(これはまた今度ご紹介しますね。)
たかが色ですが、されど色。無意識に色から影響を受けたり、感情を表したりすることもあります。私自身、色とココロが繋がっていると強く感じる経験がありました。幼少期から色彩が大好きでカラフルな色に囲まれていないと落ち着かないのですが、人生で2回ほど全く色を受け付けない時期がありました。1回目は交通事故に会ったとき、2回目は母が他界したとき。それぞれ半年程度、毎日真っ黒な服ばかり着て気持ちも沈んでいました。ですが、このままではダメだと思い、少しずつ色を取り入れていくと気持ちも軽くなり、体調もメンタルも上がっていきました。
「ココロと体と色は繋がっている!」と実感しました。
色彩の意味やイメージ、現在のライフスタイルに合わせた使い方などを学べる「日本色彩療法士協会の色彩療法士」(R)の内容を現在改めております。研修やセミナーなど皆様にご紹介できるようになりましたらまた発信していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
北海道カラーデザイン研究室
カラーコーディネーター 外﨑由香
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