見出し画像

二人の研究者(仮)#1 プロローグ#1

多くの技術革新は研究によって成される。

そして研究の目的は、何らかの事象を明らかにすることである。
何も解されていない状態から突然革新的な成果が現れることはない。
それらはいくつもの仮説、何度もの試行、時には突拍子もない考察といった工程を経て、得られるものである。
研究はもちろん研究者が行い、それらの成果は研究者の技術、センス、運、それともちろん努力の賜物である。

もちろん、技術が技術のままでは一般人には使えない。
企業がこの技術を使える形の製品にし、ユーザーはその製品によって実現するより良い生活を想像し吟味し購入する。
この世の中では付加価値のある製品がより売れる。
だからこそ企業は付加価値の元である技術を大切にし、技術を生み出す研究者を優遇する。
いや、必ずしもそのような研究者ばかりではないが、そうあるべきだ。
人は、研究者の成果である技術革新により、またそれらを用い企業が開発した製品により、様々な恩恵を受ける。

 

人は自身の生活を維持し、より良く、快適にするために働いている。
家事は家電が全てまかない、モノは全てロボットが生産する。情報はすべてコンピュータが処理をし、経済は自動的に循環する。
そうなるといずれ人がやることは無くなるだろう。すべてコンピュータがやるのである。
それにより人の手に余った膨大な時間は、おそらくコンテンツを制作すること、消費することにのみ費やされる。
いずれ人が消費するコンテンツですら、ロボットやコンピュータが自動で作ったものに成り代わるだろう。ゴーストライターではなくロボットライターである。この変化には誰も気付かない可能性だってある。
そう。このように人の生活は良くなり、ヒトは堕落していく。そして緩やかに誰も気付かないスピードで滅亡していくのだ。

いや、誰も彼も気づいているのかもしれない。だが誰も止めようとする者はいない。降りようとする者もいない。
少なくとも皆、自分が生きているうちには危機が訪れるとは思っていないのだから。


#story #novel #二人の研究者

※投げ銭です。よければお願いします。

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?