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二人の研究者(仮)#4 研究者A#2

近年、マスコミや世間に注目されてしまった人間は、成果や実力だけでなく、それには全く関係ない人間性を試され評価されるように思われる。関係ないが逆らうこともできず、世間の期待する品というものを保っている。

仮面が剥がれるのも時間の問題かと思いながら。

二人の研究者(仮)#3 研究者A#1
https://note.mu/color_chips/n/n4e99134fdd34

まったく、作家と研究者はみんな変わり者に決まっているのに、なぜ人間性を期待するのだろう。
あまりの注目度に自分でも不安になって、追実験も行った。同僚にも手伝ってもらい同じ結果が出た事を確認している。
どこぞの研究者の捏造騒動とは違うと安心し、眠りにつけるのだ。
最近、心の拠り所となっているのは、この追実験の結果もそうだが、恋人の存在も大きかった。
「堂々としていればいいのよ。すごい成果を出したんだから。」
人の気も知らないでよく言うよと思いながらも、彼女に言われると不思議と自信が出て安心する。
それに自分の恋人がこんな事態になっているというのに気にしてない様子なのだから、女性はつくづく強いなと思う。
「あなたが変わり者だって私が一番よく知っているんだから。」いつも笑顔で言う。
言われるたびに少しムッとする。が、言い返せない。


彼女は理系ではない。仕事は看護関連なので多少は理系の要素はあるのかもしれないが、本人は理系ではないという。
理系ではないのだが、非常に論理的でこちらの言っている事をすぐに理解してくれるし、こちら以上の事を返してくるときもある。
そんなところがとても好感が持てたし、出会った時もすぐに意気投合したことを覚えている。

小林にはもうひとつ心配事があった。
自分でも可笑しいと思うくらいの、少しだけレベルの低い話ではあったのだが、今回の騒動で、案外と重要なことなのではないかと思い始めている。

このことを彼女に言うべきかどうか。
心配事というか、気にしていた事である。
この決断が正しいかどうかもわからないが、伝えるべきか…。

もしかしたらそもそも信じてもらえないかもしれない。などと思ったりもしながら、決断までのもうひとときを過ごすことになる。

#二人の研究者

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