見出し画像

テストプレイ前に読んでほしいチェックポイントの話。

自作ボドゲをどこかのテストプレイ会に持ち込む前に読んでほしい、つまりは、事前にこういうのを考えておいてもらえると、テストプレイをうまく使えるんじゃないかな、っていうお話です。
経験則からしか来ていないので、環境によっては異なるし、すべてを網羅しているわけじゃないです。


1.テストプレイの段階

チェックポイント云々の前に、事前知識のお話です。

自作ボドゲを作るうえで、「段階」というものがあります。
例えば、「思いついたその瞬間」だったり、「パラメーターの調整」だったり、「問題点の解決」だったり。
一言にテストプレイと言っても、割と幅の広い言葉だったりします。

なので、自分がテストプレイで試そうとしているゲームは、今どの段階なのか。それがわかっているだけで、どの辺を見てほしいか、という説明が簡単になります。

段階は、大きく以下に分かれます。
自分でやってるテストプレイでよく出る段階をまとめている感じです。

1)思いついた段階
内容物もあんまり決まっていないうえ、なんなら、ゲームの一瞬を切り出した話しかできない段階です。
テストプレイ時に、「みんなに話して、面白そうか聞く」だけとかもあります。
企画を説明して、そのまま進んでいいかの確認とか、システムの伸びしろ確認とか、「これから時間がかかる作業をやるぞー」の準備段階での確認だったりする。

個人的には賛否分かれるかもしれないけれど、聞き手もここは割と無責任に発言していいと思ってます。
逆にテストプレイをしている方も、直感的にどうか、という点を重視している場合、ここの段階でのテストプレイが発生することが多く、そういうことを聞きたかったりしますね。


2)基礎理論チェック
実際、手慣れたゲームデザイナーがやっているイメージがある段階です。
ゲームシステムはできた。ただ、そのゲームシステムの良さはなんなのか、どういうカタチをしたシステムなのかを、作者自身が学ぶ段階です。
この段階では、作者はテストプレイに参加必須で、テストプレイヤーの意見は聞くけれど、作者自身の手ごたえが90%ぐらいのやつですね。
テストプレイへの姿勢で、「テストプレイヤーの意見はどうでもよくー」とかいうツイートとか見たことある人もいるんじゃないかな。ここだとそういう話も出やすいかな。

テストプレイヤーで入ったときは、自由に言うんだけど、立て板に水に近いだろうなと思いながらやってたりする。


3)対外面白さチェック
個人的には、一番テストプレイとしてプレイされている、再初期の段階がここなんじゃないかなと思ってる。
家で自分で作っては見たものの、4人や5人でやったことがなく、本当に面白いのか? というチェック。
さらに踏み込んで、「どうすればもっと面白くなるか」をチェックしたい段階のチェック。
割とメジャーでありながら、元々の軸が無いとフラフラしがちになって、空中分解するテストプレイじゃないかなぁ。
別のゲームになっちゃったり、取りやめになっちゃったり。

この辺の話は、別に分けて、下の方で書くと思います。


4)調整ディレクションチェック
ここも割とマニアックかもしれない。
例えば、1つのゲームがあったとして、それを「シンプルなゲーム」にするのか、「トリッキーなゲーム」にするのか、「重厚なゲーム」にするのか。
方向性を決めるテストプレイ。
ケースバイケースだけれど、大体1)や3)ですでに決め切ってテストプレイする場合が多いので、この段階は踏まないことが多いんじゃないかなぁ。
ただ、ここを間違えると、「すごく面白そうなシステム」なのに「うまくかみ合ってなくて」凡庸に終わってしまうゲームというのは、同人ではちょいちょい見かけたりする。
手順だけが多いゲームとか、どこがおもしろいのか見えにくいゲームとか。
自分が作った過去のゲームでもちょいちょいとよぎっちゃうんで、難しいところなんだと思います。っていうか、思ってください。


5)復元テスト
これは超マニアックだと思う。やる必要もないかもしれないテストプレイ。
方向性も決まって、これだ! という感じで作るんだけど、テキストカードが膨大だったり、プレイ時間が長いものを、序盤だけのコンポーネントを作って、試すテストプレイ。
作者の確認テストプレイともいうかもしれない。
この段階だと、どちらかというと、ルールそのものよりも、テーマ選定やコンポーネントのアイデアなんかをもらえると喜ぶ人は多いと思う。


6)調整テスト
大体の人が、3)の次はここだと思う。
テキスト効果を変更したり、パラメーターを変更するのがこの辺。
割と個人的にはやってほしいんだけど、してくれないテストがここにあって、「プレイ人数のチェック」と「スート・数字のチェック」の2つがそれ。
「プレイ人数のチェック」はそのままで、3-4人のゲームがあったとして、2人では遊べないのか(別ゲームになってしまうシステムもあるので、そこを含めて無理やりしてないか)、5人以上は遊べないか、という点。
ルールもそうだけれど、コンポーネントの金額増加もあるので、最終的にいくらで売って、いくつ作るのかという点も考慮に入れるところ。
「スート・数字のチェック」は本当に大事だと思っているんだけど、めんどくささ故、あまりテストされてない印象のあるところ。
例えば、カードゲームで1~5の数字を使うゲームがあったとして、0-4ではいけないのか、1-6だと? 3-8だと? 連番ではなく1~8とかは? とかとか。
脳内でのテストプレイがほぼ無理な計算段階に達することが多いので、人や実物を兼ねたテストプレイではぜひこの辺をチェックしてほしい。
例えば、トリテを作ったとして、スートが4つある時、本当に4つが最も面白いのか、3つや5つではいけないのか、とかを考えてほしい段階。


7)コンポーネントテスト
仮イラストを使ったりして、ほぼ最終テストをする段階。
アイコンの位置は適正か、色はどうか、手札に持った時、などなど。
もちろん、完成間近であるかもしれないけれど、そうである必要はなく、適正を探した際に、どうしても予算オーバーになってしまっているものを、ここの工夫で安く仕上げるアイデアを出す、ということに使ったりする。
最初に最終テストと書いてはいるけれど、テストプレイなんて繰り返しではあるので、実際の位置はめちゃめちゃ変わると思う。


これ以降は、「広報」目的だったり、(言い方はよくないが)「自己顕示欲」だったり、「落ち着くため」だったりするかな。
例えば、そんな段階で、「このゲーム、ここがよくない」というあらさがしをされると非常に困る場合が多い。というか、そういうのをめっちゃ見たことある。
そんな感じなので、あらかじめ確認して、もしこの段階に進んでいたなら、テストプレイヤーは優しい気持ちで遊んであげる段階ではある。
後、そもそものディレクションが伝わっていないテストプレイヤーがやりがちな点でもある。自分の好みを押し付けられても…… ってやつ。
実際、それで開発をやめてしまったゲームも見ているので、「もったいない」とはならないように注意してほしいなぁ。そこは鋼の心で作り切ってほしい。


2.段階別準備

先ほどの段階別に、デザイナー側に実際準備しておいてほしいことをざっと書いていく。
別になくてもいいかもしれないけど、あった方が絶対にプラスにはなると思う。ぼんやりでもいいです。


1)思いついた段階
誰のアイデアも否定しない心w
まだアイデアの発端ではあるので、その先に続く未来を否定してはいけないと思ってます。ので、何を言われても、なるほどとした方がいいかな。
これはもちろん、自分のアイデアも。「ダメかな」と思ってもメモとして残しておくといいことがあったりなかったり。たまに過去の自分を「天才かな?」って思うこともあるよ。ほんと。
特にその時に否定の感情を抱いたとしても、自分が見えなくなっている可能性のが本当に高いので、繰り返しにはなるけど、メモはしっかり取るところかなと思う。
どっちにせよ、後で選択肢を比較して、無理ならその時消せばいいだけかなと。


2)基礎理論チェック
自分のアイデアの元となった場面(フラッシュバック)や、思ったことのメモ。
上手く形になっていないだけのことも多いので、どの段階でうまくいってないのかをちゃんと見極める必要があるため、照らし合わせは割と役に立ちます。
ここで勘違いをすると、せっかくのいいアイデアを捨てることになるし、忘れることにもなる。
言われたゲームを作ってしまうことだってある分水嶺なので、ちゃんと見極めよう。自分のゲームを作っているのだから。


3)対外面白さチェック
まずは、ちゃんと説明できること。
この時に準備できるコンポーネントなんか、すごく粗末で質素なものが多い。
1つの大きなポイントがあって、「誰にテストプレイするのか」ということによって、用意するものが変わることは理解しておかないと、後々難しいことになったりする。正しい評価がもらえないというか。
よほどテストプレイに慣れていないと、「コンポーネント」というのはどうしても無視できません。
例えば、粗末なコンポーネントのため、それに気を取られてしまい、システムに対する感想をもらえなかったりします。
ここのアイコンが、デザインが、イラストがー。~だから遊びにくい。~だからつまらない。とかとか。
ここのテストプレイでは一番意味のない感想になったりする。場合によっては、1つも成果を得られないことだってある。(そういうのを体験したことも、見たこともあるので、割と発生しやすいと思ってる。)

そんな場合は、仮イラストでもいいから、Webから自由に探してきて張り付ける、ということをした方がいいと思う。
それだけで華やかさは大分変ります。ただ、準備に対する時間っていうのは2倍、3倍になったりするんだけどね。後でイラストを依頼するときに少し楽になる、と考えれば多少はありかもしれないけれども。
割とコマ切れで、分割して作っている場合(ちょっと説明長くなるから、具体的には端折るけど)、手間がすごく増えるのでやりたくはないのだけれど。

ちなみに、知っておいてほしいんだけど、この「イラストが入っていないとー」というのは、95%以上の人は該当すると思ってください。なので、基本的には入れないとテストプレイがうまく進まないことが多いです。
テストプレイによほど慣れた人でもそうです。(うちのデザイナーばっかり集まってる場でも起こります。)
それでも大丈夫な強度、経験を持った人だと大丈夫です。めったに見ないけど。

後は、自分の「面白い」とプレイヤーの「面白い」の差をしっかりつかむところかなぁ。
正直、この段階で見るべきもの、準備っていうのは本当に多くて、こういう点を見たい、知りたい、とあらかじめ考えておかないと、全然手に入らないし、考えておけばおくほど手に入るものは多いし、という段階がここなので、割と自由というか。


4)調整ディレクションチェック
まず、自分の中で、いくつかのディレクションを仮定しておく、という点かな。そこから選べるようにしておくと、割と受け入れやすいし、テストプレイ後に話もしやすい気がしています。
たまに、実際テストしてみて、「これ、違くない?」みたいな感想を抱いたり、もらったりもしますけれども。
結局は作者の一存が重要になる段階です。
これは余談でもあるんだけれど、ここを変えるだけで別ゲームになるので、(もし戻れるなら)ダイスゲームやカードゲーム、ボードゲームの派生を作るなら、それの起点にしてもいいかもしれない。
成功事例は私の中ではないけれど。(作ったこともないけれど)


5)復元テスト
4)を受けて、ある程度幅を設けて準備するところかな。
このテストは、実際に動かすこと自体が目的なので、準備としてはあんまりないかも。準備段階ですごく不安になることもあるので、それを押し切る勇気、かも。あえて書くとすると。


6)調整テスト
準備としては、実はそんなにないかも。
自分の許容量を理解しておく、というのがある意味正しいかもしれない。
例えば、チェックするパラメーターの数が多く、それら全部を同時にテストしたとして、どこまで自分が評価できるか、というのは知っておかないといけない。
結局、ぎりぎりを狙った振り切ったパラメーターになるため、テストプレイ自体は「絶対に面白くなりません」。
逆に面白かったら、テストできていない可能性すらあります。
こういった「面白くならなかった結果」は何が原因だったのか。どのパラメーターだったのか。
あ、それと、「どのパラメーターが基本になるのか」というのはちゃんと押さえておかないといけません。何があっても動かさないパラメーターです。
そんな訳で、試すパラメーターの数で、同じようなテストが続く段階でもあるかなと思います。
ここを減らすには、割と自分の経験上から来る、自分だけのテストプレイが有効ではあるので、それで数を減らすしかないかなぁ。うまく行けば脳内だけでできるしね。慣れている人ほど、脳内でやってるイメージがありますね。人によっては常時暇な時考えてるんで、10回以上は回してるんじゃないかなぁ。


7)コンポーネントテスト
ちゃんと、テストプレイ時に「イラスト、もう決まってるから」と伝えることかなw
いや、ここでひっくり返されると、本当にどうしようもなくなっちゃうから。
ちなみに、できればイラストレーターと一緒にやってもらいたいテストプレイではあります。
イラストレーターの技量にもよるんだけど、ゲームを普段しない人だと、UIの説明や理由が伝わっていないこともあるので、うまく行かないこともあるんじゃないかなぁ。


3.まとめ

そんな訳で、ざっとまとめるとテストプレイ段階別に、事前に準備して置いたらいいかな、ということをまとめました。
ここまで読んで頂けている方には伝わっているかなと思うんですが、テストプレイ1つもってきてみても、その目的が全然異なります。
もちろん、それをテストプレイヤー全員が理解する必要はありません。でもテストプレイする側はある程度でも理解し、準備しておかないと、テストプレイヤー双方で時間の無駄になりがちなので、よいことはないかな。

私のやり方の一例を出しておくんだけれど、概ねテストプレイ前にこれを聞くようにしています。「今、どの段階?」って。
初プレイ? パラメーターチェック? とか。
それによっていうことも変わるし、まだ方針が決まっていなければ、別のルートの話をしたりするし。
逆にディレクションが決まっている人に、別の話をしても無駄だし、好みの話になっちゃうし。


4.番外編

先に書くっていった、「軸」の話を最後にちょっとだけします。
ゲームを作るうえで、デザイナーが決めないといけないのが、「軸」です。
難しく書くと、このゲームは何を目的に作っているのか、というのを明確に意識しておく必要があります。
具体的な部分を加えて書くと、「何が面白いと思って作っているのか」を忘れないことです。
これが変わってしまうと、「面白かった部分」がすぱっと抜けてしまった、形骸化したゲームが独り歩きを始めます。
その結果、周りの意見を取り入れただけのキメラが出来上がって、作った本人ですら、「これ、本当に面白いの?」という疑問にぶち当たります。

そんなことないやろー、って思う人もいるかもしれませんが、割と見ます。あんまりゲームを作ったことがない人だと5割を超えるんじゃないかしら。
それにはいろいろ理由はありますが、一番大きいと思っているのが、「面白さに自信がない」ためだとは思います。
そんな時は1つ、必ず信じてほしいことがあります。「あなたがこのゲーム面白そう」と最初に思いついたアイデアは、絶対に面白いです。最低でもあなたが面白いと思ったんだから。ってことです。
ので、そこをちゃんと軸にして、テストプレイに臨むようにしてください。

冷静になって考えて、「あれ、面白くないかも?」っていうのは正しい反応です。どれだけ作っててもよくあります。年間どれくらいぶち当たるか……
これを避けるために、テストプレイの1)や2)の段階があるんですが、それをやらずに3)をやって、判明しているだけなんで、正しいテストプレイです。受け入れにくいとは思いますが。

最後に、ちょっと別の言葉を置いて終わります。

「せっかく楽しいゲームを作っているんだから、作っているときも楽しく作ろうね」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?