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レッドサンダー スロットカードゲームデザイナーズノート

こちらは、前回のパチスロメインの記事(ある意味前提知識の記事になります)とは違って、ゲームシステムとかその周りのお話になります。
割とまじめに書きます。


1.前世

うち(COLON ARC)の開発の話からになります。

このゲームには前世があります。
このゲームの基本案、いわゆる「企画」としては、全く別のゲームでした。
具体的に書くと、ウェルチホイストというトリテのようなゲーム、といえばいいんでしょうか。
運が非常に高めのトリテでした。
これも別の企画から、結局終着点はそこか、みたいな感じになったんですが。

その時は、検討の途中で「これはどう頑張ってもウェルチホイスト以上にならない」と判断して辞めたんですが。

元々トリテだったんですよ。おくさん(だれやねん


2.スロットとの出会い

やってません。パチスロはいまだにやってませんし、話を聞いても「なんでスロット回してしまうのん?」ってなるぐらいです。

先ほどの前世の企画で、企画を廃棄する前に再検討と再分析してたんですが、その中で、「揃ってうれしい」というのがあって、これは別でも使えそうだなと思ってました。(とか書いてますが、これ自身はそれはもうほとんどのゲームでいえることです)

これに加えて、「カードを6分割したら、スロットに見えなくない?」ってのを思いつきました。

そんなわけで、スロットの構造が出来上がりました。
早速、サンプルを作ってテストプレイ会に臨みます。うちのテストプレイ会の場合、実際のテストプレイもしますが、企画の確認もします。
企画段階で持ち込まれるため、ゲームになっていないもの、そもそも企画案しかないものとか、色々あります。
それで、面白そうだ! ってなったら次のステップに進む、ということもやります。

テストプレイの結果としては、まーこんなもんじゃない。これまでにほとんど見ないけど。
という感じに。この時点でもちゃんと作るかどうかは別の話、という感じでやってました。

ただ、紆余曲折を経て、という感じではあるんですが、偶然「ゲムマチャレンジ」の枠に収まりそうだ、ということにもなりました。
周りのゲームデザイナー陣もみんな割と作っていたので、私の中で、参加してみようかなっていう悪い好奇心が出てきました。
こういうのをモチベっていうんですが、モチベがあるとなんでもできちゃうのがあれですね。いいですね。


3.開発に当たって知識を得よう

ここ、正直、賛否はあると思います。
TVの芸人さんとかの話を聞いていると、割と「はったり」の方がいい、という話はよく聞きます。
調べるには時間がかかるし、調べないとうまく話もできないし、ある意味舐められるというか、大したことない、って感じで評価がよくないと。
そのために、1つだけ細かいところを語れるようにする。はったりなんかも混ぜていい、みたいな。全体の10分の1、100分の1しか知らない。でもそこは熱く語れれば、はったりとしては成立するそうです。
※あくまで素人には、でしょうね。沼どっぷりの人から見れば、「そうか」ぐらいなもんなんでしょうけれど。対象はそこじゃないからいいんでしょう。

この辺の話は、だいぶ前からあるんですが、私の理解が追い付いているかと言われれば、ふんわりとしかわかっていません。
なので、なぞってやる、というのは難しいと思っています。
そんなことで、今回はこれまで同様「調べてみる」からスタートです。

で、前の記事ができたわけですが。


この知識を元に、パチスロって何が面白いのか。
どこが魅力的なのか、を考えます。
多分、先述の芸人の方は、この辺の見極めが元々いいんだと思います。そういう意味で、センスがいいというか、地頭がいいというか。
ほかのジャンル(音楽とか)もそうですが、この点がその活動(創作)において、ほかの人より秀でることができるかどうかにかかっているんだろうなと思います。余談ですが。

とはいえ、この場合は付け刃になってしまいます。もし、それをさらに深堀、延長とかするのであれば、しっかり調べなければならないと思います。


4.システムに組み込んでいく

さて、今回の話のメインがここです。多分。デザイナーズノートらしいとこです。

企画、知識から、システムを構築していきます。もしくはこれまでに自分で作った、メモったアイデアからくみ上げていきます。

今回は、元々の企画段階で、カードをめくって揃える、という基本システムがあるため、それらを基準としたシステムの増築です。

「システムの構築」とは何でしょうか。
ざっくりとしたイメージとしては、1本の木があって、それが枝もなく、まっすぐ上に伸び、先端に葉っぱが1枚付いているとします。
この木が原案です。
企画では、これを絵に落として、枝を付けたり、葉っぱを増やしたりして最終形を思い描きます。それはゲームの重さという感覚でもいいし、プレイ人数やプレイ時間、コンポーネントなんかでもいいと思います。

こうなってほしい、という目標を作るのです。

次に知識を元に、その最終形に木(原案)を近づけていきます。

この近づけ方は人それぞれかもしれませんが、抽象的なイメージが大変多いため、(面白い、っていうこと自体、抽象的ですよね?)いったん、思いつくアイデアをすべてくっつけていきます。
企画を作った本人でさえ、モノを見て、すぐに「これが必要、これが不要」という決断は取れません。取れたとしても、可能性を先に削除してしまっていることもあります。(経験としてもありました)
そのため、ここでは一旦拒否することを忘れて、どんどん付けます。

こうして、思いついたアイデアを元にまた広がったりします。
繰り返しになりますが、どんなアイデアも捨ててはいけません。実現不可能でも、実際に思い描くことができなくても、アイデアは付けていきます。
一通り思いついたなと思ったら、それらの選定を1つ1つやっていきます。

ここで最も重要なのが、「実装可能か」ではなく「面白いか」です。
例えば、それをなくしてもゲーム自体の面白さが変わらないのであれば、「不要」である可能性があります。
逆に実装不可能でも、それを削ると「面白さが減る」のであれば、検討すべきです。

今回もこんな感じで、アイデアをざっと出していきます。

ですが、「レッドサンダー」では、先ほど書いた開発方法でちょっと違う点があります。
それは「着地点」がわからないのです。w 致命的ですw
目的だけ、「スロットが面白い」という部分だけ決まっています。


5.着地点を探す

そんなわけで、着地点を探します。
元々のアイデアはカジノの「スロット」をベースにしていました。以前の記事で上げた、「ドラクエ」や「真・女神転生」なんかにあるスロットは、パチスロではなく、カジノのスロットです。(今ここで違いを述べる場所ではありませんw 永遠と書くことになっちゃう)

日本で販売する場合、どちらが好まれるのか、というのをいろいろ聞いた結果、思いっきりパチスロに振るか(中途半端はだめです)、絵合わせパズルにするかの2択であると感じました。

ゲーム的には実験作品にするつもりはあったので、「パチスロ」に振ることを決めました。
これもあって、今回は事前知識があった方が楽しめる、という風に謳っています。

そんな訳で着地点が決まりました。「パチスロ」やったことある人、興味のある人が楽しめるように作ろう。です。
こういう狭いタイプのゲームはあまり作ったことがないので、それも実験枠故ですね。


6.このゲームの目的とは

答えを先に書くと、このゲームに目的は不要です。w
なんなら得点計算すらいらん、とか言われたこともあります。

回すことが楽しい、リーチアクションが、アニメーションが、配当が楽しい、とか言われます。

これを実際ゲームに落とし込んでいきます。

テストプレイの最初の方では、得点を計算できるよう、役と細かい得点(コインと大体同じ)を作ってみました。
「めんどくさい!」
私もそう思いました。パチスロは無心で打って、結果コインを清算して儲かった、儲かってなかった。その程度で十分です。
過程に計算を挟みたくなくなりました。

777がそろえばええねん。

後、このゲーム、元々は5人ぐらいで遊ぶことも考えていました。
ですが、調べるうちに「スロットしている間は止めたくない」「誰かと競いたくない」とかそんな話もあったりしたので、ソロゲームをベースにすることに変更しました。
特に「手番を止められたくない」は私もテストプレイするうちに感じた大きなポイントでもあります。
もひとつ余談ですが、スロットは誰かが回しているのを横から見てても面白い、ということです。


7.ギミック

パチスロの数だけ新しいギミックはあります。パチスロには。
ただリールが3つ回るだけなのですが、その中には多くの遊び心が100年の歴史(実際はもうちょっとある)で積み上げられています。
同じギミックを搭載することはできませんし、できたとしてもそれを好む人がどれくらいいるか分かりません。
何せ、人によって好みのスロット台がまるで違うからです。
※今回6-7人ぐらいに好きな台の名前を聞いて、全員が全員違う機種を言いましたからね……なんでやねん。1つぐらい被ってよ。

そんなわけで、いっそカドゲはカドゲらしいギミックの方がいいな、ということで、アイデアを見直します。
そう、どんなアイデアでも消さなければ見直して検討して、なんなら伸ばすことができるのです。メモはしっかり残そうな。

元々は片面にのみリールの絵柄が書かれていました。
ですが、様々な意見から「ボーナスタイム」が欲しいという話はたくさんでした。
そんな訳で両面構造が決まります。

次に決めたのが「左端リールの固定」です。
これには自分の中で賛否はありました。
スロットの機種によってはこれを行わないですし、それ自体を好むスロッターがいたりしなかったりします。つまり、好みの分かれる部分です。
でも導入を決めました。
いくつかある理由の1つは「カード枚数の消費が少なくなる」ためです。
具体的に言えば、より長くゲームを楽しめる、ということです。
得点計算時に脳内の処理がややわかりにくくなるかもしれませんが、これはこれでありという結論です。

最後に、ほかのギミックとして「特殊効果」があります。
これもいくつもありましたが、簡単な2つ「スライド」と「リドロー」だけを残すことで決めました。決定にはプロセスがいっぱいありすぎて書けませんが、元々のアイデアにあった簡単な2つだけを残しました。
思いつきやすい=とっつきやすい、というのはある程度当てはまっていると思います。


8.ディベロップしていく

ディベロップってなんやねん、っていう人は、過去にどっかで記事を書いたと思うので、見てもらうとして(Noteにはなかったんですが、どこやろ…… リクエストあったらここでも書くかもです)、ディベロップのお話です。

さて、先ほどの7までで基本構造はできました。
今回のパチスロテーマで考えると、できること、やりたいことは大体見えています。
「ユーザーに特殊な計算や頭を使わせてはならない。」

「それが出たら大当たり!」

こういったことへの調整がもう少し必要です。

さて、ディベロップでやりたいことは、「波」です。
波は平たんであれば平たんであるほど、記憶に残りませんし、楽しくありません。もう少し波が必要です。
今回はパチスロテーマなので、「期待を持たせること」が1つ重要であると思っています。

そんなこんなで追加されたカードが2種類。
「BIG BONUS」と「チャンス」です。
処理も簡単で、ルールを読まなくてもなんとなくわかるぐらいを目指した特殊カードを2種追加して完了です。


9.終わったと思うやん?

ルールを記載していて、ちょっと困ったことが起こりました。「リプレイ」です。
スロットには「リプレイ」という役があって、簡単に言えば「再抽選」です。
コインを使わずより長く楽しむためのギミックではあるのですが、これをルールに落とし込むと処理手順が長いこと、多少ややこしいことに気が付きました。
基本的には、リプレイは山札を増やすアクションで、捨て山を山札と混ぜることのできるアクションです。

っていうことで、その周りを修正します。
今回はカードを置く場所が4か所あって、それがややこしさに拍車をかけていることがわかります。
役を作る「場札」、できた役を置いておく「役置き場」、できなかった役を捨てる「捨て山」、そして何らかの理由でリプレイに含まれない「リムーブ(のちの「箱の中」)」です。

この中で最もややこしいのが「捨て山」です。
捨て山には特殊カードにも影響するものがあり、それらを系統立て、遊ぶ際にわかりやすくします。
また、「捨て山」に対して、プレイヤーがしたいであろうことを許可していきます。
加えて、それぞれの要素を近づけて、まとめて覚えられるようにします。
最後に最も理解が難解な「リムーブ」を箱に戻す、と表記することにしました。今回の箱はキャラメル箱で、そのアクション自体、手順にするとめんどくさいのですが、遊ぶ側で多少なりとも対応ができる、ということで変更しました。
「箱の下に置く」でもルール上は問題ないのですが、脳内の処理としてややこしくなります。再び使われるのでは? とか、新しい場所の概念としてとらえられてしまいます。
ポイントは「理解しやすいかどうか」です。

こういった小さな変更を加え、テキストの単純化、アクションの視覚化をして、理解しやすくしていきます。

とはいえ、この辺は実際発売してみないと一番わからないところです。
理解とは、人の数だけあり、それを表現する言葉がわかりやすいかどうかも人の数だけあります。


10.完成と印刷とデザインと

というわけでルールは整ったので、イラストの作成となります。
今回はなんと、COLON ARC始まって以来、初めて自分でイラスト部分を全部やります。
デザインだけなら一部でやったことはあるんですが、(毎回イベントごとに作っている営業資料なんかも自分でやるんですが)作品としては初めてです。
同人時代はほとんど自分で作ることがたまにあったんですが、それ以来です。

イラストをほかの方にお願いしなかった理由としては、作成段階で声をかけれるイラストレーターさんの中に、パチスロをやっている人がいなかった(と思ってた)、のと、もし描いていただいたとして、その方のイラスト活動に置いてのブランディング、活動方針にそぐわない可能性があったためです。
もちろん、名前を出さずに、というのも考えましたけど、それはそれでもったいないなと思ったところもあります。

まー、後で知ってるイラストレーターさんの中に、実際にやってた人がいたとは思わなかったかったけど。おるんかい。

イラストについては、素人みたいなのとはいえ、配置や色合い、見え方なんかはある程度知識がある(ちょっと知ってる)ので、その辺を意識しつつ、ほかのスロットの図柄も色々見ながら作成しました。

そんな訳で完成です!


11.んな、うまくいくわけないよね

そんなこんなでさらに1つ問題点がありまして。
今回、実験作品ということもあって、いつもに比べるとだいぶ少部数、そして弊社で使ったことのない、セット品みたいな印刷でやってるんですが、調べている限り、「箱が極端に小さい」ってことでした。
いや、カード自体の収納は問題ないんです。ルールを入れる隙間が異常に狭いんです。元々考慮されていないと思われます。

先行で印刷されたサークルさんの作品を見せてもらったり、実際印刷所に問い合わせたりして、実際のものの確認はしました。
そのうえで、「ルール、ちゃんと入るん?」っていう問題が出ています。
いや、計算上は入るんですが、その辺、同じ感じで作っているサークルさんとも情報交換しつつ、慎重に進めています。
本当なら、ルールの入稿はすでに終わっていたはずなんですが……

ってことで、現物を確認したら、ルールを入稿して完成となります。
ルール自体は大体できているつもりです。表現と見せ方の問題がずっと残ってはいるんですが。
※つまり、この記事を書いている段階では完成していませんし、入稿もすべては終わっていません。


Red Thunder スロットカードゲームは、10/15(土)に開催予定の先行試遊会OHIROME03で、現物を遊ぶことができます。


ゲムマで試遊卓はありませんが、軽くお見せすることはできます。
何せ、ソロゲームですから。
パチスロを少し知ってる、名前ぐらい聞いたことある、って人でも遊べるようにはしたつもりです。(ルールを読むだけでもできます)
そのうえで、もうちょっとちゃんと楽しみたい、って人は先にも張りましたパチスロについて、ちょっと知っておくとより楽しくなると思います。


そんな訳で、今回のデザイナーズノートはおしまいです。
また次回。

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