『海辺のポーリーヌ』
物語は、海辺の片田舎で一夏の休暇を過ごすために都会からやってきた二人の女から始まる。
まだ恋に憧れを抱く幼いポーリーヌ、薄紫色の紫陽花を背景に彼女はまだどこか未熟さを捨てきれていない。
一方豊かなブロンドを持つマリオンは夫と別れたばかり、どこか疲れた様子だ。
海辺で彼女たちは三人の男に出会う。
一人は自身をつまらない男だと自ら認めてしまっている、残念な男。若くてハンサムなくせに、いや、若くてハンサムだからこそ彼は彼自身を持て余している。
もう一人は中年の、ふくよかな色気を持つ男。彼が女に触る時、娘でさえも、彼女たちは「女」にならざるを得なくなってしまう。
最後の一人はポーリーヌと同じ年頃の、歳のわりには大人っぽい男の子。しかしこの映画の中で、彼はあくまでも「少年」という枠を出ることができない。
お互いがお互いに矢印を向けあいながら、堂々巡りを繰り返す海辺の一夏。
どうして人は、これほどまでに一夏の恋に郷愁を抱いてしまうのだろうか。
柔らかく淡いみどりは生き、海の波は不規則な音楽へと姿を変え、男と女は惑わされる。
マリオンは最後に言う、「嘘と思われるものを信じることは間違い」と。
一夏の恋に、安逸な温もりは存在しない。
だけれどもその夏には、確かな激しさが在り、その夏でしか人々は、先の人生で鈍く痛み続ける火傷を残す焔を見ることができないのである。
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