ネガティブな言葉を言ってはいけないわけ

 昨夜、面白い記事を見つけた。植物に褒める言葉かけと、いじめる言葉かけをし続けたら、成長の差が歴然だった、という記事だ。

https://nazology.net/archives/9534

 私はこの植物たちの余りの違いに畏れ驚き、夫に報告した。何しろ、夫は植物の生育の研究をしている人なのだ。案の定、かなりの興味を持って食いついてきた。それはどんな要素が影響しているのだろう?周波数とか?
 「でもさ、そのいじめる言葉って、どういうことだろう?」
 「お前はバカだとか、不快になるような言葉よ」
 「え、いやでも、いじめるっていうのがよく分からない」

 と、しつこく言う。
 そのたびに、私は、“お前はバカだ”とか、そういう言葉だよ、と繰り返し声に出していった。

 「でも、あなたの言い方だとべつに、不快にならなさそうよね」
 「いやだから、それを不快になるイントネーションで言うのよ。そう言っ ている音声をずっと聞かせ続けたんだって」
 「音声を聞かせた?そうすると、ますますよく分からないな。話しかけたらなら、呼気に含まれるCO2の影響とか考えられなくもないけど」
 「そういう既知の要因以外のことがあるかもしれないじゃない。CO2とかじゃないよ」

 なかなか論点が噛み合わないので、つい私が断定口調で言うと、夫はむっとしたよう言った。
 「・・あなたは高等教育を受けている人なのに、最近、非科学的なことを言うよね」
 カチンときた。私は、普段から、できるだけ客観的かつ科学的に、データを基にモノを見ようと心がけているつもりなのだ。
 だからこそ、マスクだってしない。

 話がズレてしまったが、そんなわけで、私は意図せずして、「お前はバカだ」という言葉を3回も続けて口に出していた。

 そして今朝になり、犬を散歩に連れて行った。
愛犬はミニチュアダックスフンド。もとが良く吠える猟犬の血筋だ。といっても子供のころはそんなに吠える子じゃなかった。マンションの同じ階に柴犬がやってくるまでは。
 その柴犬は、寡黙で我関せずの態度を貫くが、お散歩の時間が重なってフロアで会ったりしようものなら、うちの犬は狂ったように吠えかかる。それが高じて、エレベーターが他の階で止まるたびに、ワンワン大声で激しく吠えたてる癖がついてしまった。
 そして今日、愛犬を抱えた私は、エレベーターで高齢のおばあちゃんと乗り合わせた。おばあちゃんの住む2階で止まると、犬は習慣どおり、すぐに大声で吠えたてた。乗っていた高齢のおばあちゃんは驚き、ビクっと肩を震わせる。すみません・・、との私の言葉は小さすぎて聞こえなかったかもしれない。扉が開き、エレベーターを降りて姿を消していくおばあちゃんは、捨て台詞を残していった。

 「バカ犬か」
 グサッと胸に刺さった。まるで、自分が見も知らぬ他人に罵られたかのように。

 バカ犬じゃないです。ちょっとばかり警戒心が強くて、テリトリー意識が暴走しちゃっているだけなんです。バカなわけではなく、むしろ賢いからなんです。それより、吠えることを予告しておかなかった私がいけないんです。

 心の中で抗弁しているうちに、ふと気づいた。
 これは、昨夜、私が言った言葉ではないか。

 植物の葉を、緑から茶色に変色させ、萎れさせていくだけのパワーが、言葉にはある。生き物を傷つけ、生気を奪い、息の根を止めるだけの力が。
 そして、そのエネルギーは循環する。目に見えるこの3次元の、そとの別次元でプカプカしていて、何かの拍子に隙間を通ってこちらの次元に戻ってくるのだ。自ら発せば、自らに還る。

 それに気づいた私は、犬の足を洗ったあと、慌ててたくさん褒めてあげた。
「イイ子だね~、おりこうだね~」
 しかし、犬は早くリビングに走り込みたくて、閉められたドアに向けてジャンプを続ける。私の言葉なんか、聴きやしないのである。

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