ゲルハルト・リヒター展に行ってきた。

 今日は、最終日で非常に混んでいた。予約したのは11時。30分ほど遅れて行ったら、12時予約の人たちの長蛇の列をスッと交わし、待つことなくスムーズに入場できた。チケット販売サイトか何かに、そのように書いてあったのだ。行列をスッと交わし、外されたロープの横を過ぎるのはなかなか気持ちが良いのであった。

 それでも中に入れば、たびたび人垣に遮られながら作品を見ることになる。そのなかで、印象的なもののひとつに、「グレイの縞模様」があった。
リヒターは、グレイを「何の感情も連想も生み出さない」、「無を連想させるのに最適な色」と述べているそうだ。

 そして、その「グレイ・・・」の隣にあったのは、対照的なカラーチャートの作品、「4900の色彩」。25色で構成された50㎝四方のカラーパネルが196枚(14×14)並んだ作品。夜中の番組終了後にTV画面に現れるカラーチャートのちっちゃいやつみたいなのが大量に、ランダムに並んでいるさまは、デジタル画面のドットを至近距離で見ているみたいだ。

 「グレイの縞模様」の作品解説ボードには、フランク・ステラの、
 「あなたが見ているものがあなたが見ているものである」
という言葉が引いてある。それはつまり、
 「あなたが見ているものは、あなたが見ているものでしかない」
と私の頭の中で変換される。
 カラーチャートは、グレイを至近距離で眺めたものだ。だから本来、そこには何もない。私たちが見ているものは、光の煌めきが作り出した幻想であり、残像でしかない。
あるのは、無。ただ、それだけ。

 リヒターは、次のように述べている。
「絵画がこの不可解な現実を、比喩においてより美しく、より賢く、より途方もなく、より極端に、より直感的に、そして、より理解不可能に描写すればするだけ、それはよい絵画なのです。」
なんか、いいよね。

まるで、世界の根源、を、見たような気になる展覧会だった。

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