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『あなたを見つけたい~See you again~』中国ドラマ

中国/2017/テレビドラマ

2度目の人生なら、そつなく、首尾よく、生きられるのだろうか。

中身は31歳の自分のまま、突然10年前の世界にタイムスリップし、どうなるか知っているはずの自分の人生をもう一度歩む。
知っている場所、知っている人々、知っている運命のはずなのに、10年前とは中身の違う自分は、全て知っているからこそ同じようには生きられない。

ティファニー・タンが主人公を演じていた。丸顔で愛らしい彼女の演技は、最初は日本の80年代アイドルみたいで「ん〜、どうしよう〜!ちょっとつらいかも!」と思った。しかし、年齢を重ねてタイムスリップ前の実年齢に次第に近づくなかで様々な苦悩を経た主人公シー・ジエン(漢字は時簡。ピンインは違うけど”時間”とかけているのかな)は、芯の強を持った落ち着いた女性になった。あの80年代アイドル風演技は20代を表現するための演技だったのだろう。

先がわかっているせいで気持ちが焦っても、時間は早くすぎてはくれない。焦りやもどかしさから事を性急にすすめようと強引になれば、どこかに歪みがうまれてしまう。シー・ジエンは、年齢を重ねながらいくつもの辛い経験を経てその事を実感し、それを心に刻んで慎重に生きる大人の女性になっていった。

それにしても、過去というのはどこまで書き換えていいのだろう。このまま行ったら不幸が訪れると分かっている時に事を見過ごすことは、容易ではない。しかし、何か手を加えて目の前の不幸を回避できたとしても、その後の全てがうまく行くとは限らない。ほんの些細な書き換えで、かえってその後に思いもよらぬ一大事が起きるかもしれない。しかもそれは手を加えたその時には全くわからないのだ。

二人の男性が、シー・ジエンの人生に大きく関わる。
一人はシー・ジエンの夫イエ・ジアチョン。切れ長の目元涼やかなあっさり顔のショーン・ドウが演じる。もうひとりは、エキゾチックな顔立ちが印象的なヤン・シュオ演じる社長のイー・ペイ。

シー・ジエンは当然ながらいつまでも夫のジアチョンが好きなのだが、私はみているうちにヤン・シュオ演じるイー・ペイに心惹かれた。
最初の頃は「なんて濃い顔なのかしら」としか思わなかったイー・ペイ。昔中国語のレッスンで習った”濃眉大眼”という表現が、彼をみてふっと思い出された。今まで中国・台湾ドラマで私はあまりみたことのなかったタイプの個性的な容貌は、ドラマの世界に入り込むのにはちょっと邪魔な気がしたほどだった(失礼なことです。すみません)。
それがいつの間にか、ヤン・シュオ演じるイー・ペイがどんどん素敵に見えてきた。あんな濃い顔の人に惹かれるなんて、人は年月を重ねると許容範囲が広くなるのだろうか・・・などと思ったが、いやいや、やはりイー・ペイという役がとても魅力的だったのだ。
当初彼は仕事に厳しく、笑顔もない、冷徹な感じだったが、だんだん変わっていった。シー・ジエンとの関係が少しずつ変化する中で、かわいいところも見えたりして。
ジアチョンがいつもシー・ジエンに追いかけられている関係のせいか、なんとなくジアチョンは常に腰が引けていて軟弱そうに見えたのに比べ、イー・ペイは彼女をしっかり見つめ続け、必要な時には手を差し伸べる包容力と優しさを持っていてどんどん存在感が増していったので、私の中では次第に薄い顔のジアチョンの存在はがさらに霞んでいった・・・。

物語の締めくくりはさもありなんという感じで、若干どこか物足りなさを感じたのだが、イー・ペイが最後に残してくれた余韻が、その物足りなさをしっかり受け止めてくれた感じがした。

面白かったが、思った以上に辛い出来事が多い”2度目の人生”だったので、長い放送を見終わったときは正直ほっとした。
2020年〜2021年視聴


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