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『ブラッシュアップライフ』面白かったけど・・・(日本・テレビドラマ)

日本/テレビドラマ/2023年1月から3月視聴

見終わってから大分経ってしまった。
かなり好評だったらしいこのドラマは、たしかに面白かったので最後まで見た。
そして最終回まで見たらいろいろ考えてしまって、なかなか感想が書けなかった。
とても面白かったのだけれど、ちょうど自分がいろいろ考えさせられている時期とぶつかったせいで、最終回でハッピーな感動に包まれるというより、気持ちが何となくしゅんとなってしまった。

突然命を失った主人公が自分自身としてまた生まれ変わり、前世で上手くいかなかったことを次の人生では手を尽くして丸く納めながら、人生をやり直していく物語。

途中までは本当に面白くて次回が楽しみだったのだが、パイロットを目指すというあたりで、私はこの人生やり直しにお腹いっぱいになってしまった。え、まだやり直すの?と。
自分では、やり直し人生の話はそろそろ終わって、その後のお話(周りの人たちのその後の人生とか)などに展開するのかと思っていたのだ。それがまさかの人生5周目へ。何度でも生まれ変わって、自分の期待や予想と違っていることをなんとしても変えようという姿に、私はお腹いっぱいになってしまった。
大事な親友が事故で命を失うのは見過ごし難いのはわかるし、二人の友人と多数の同乗者達を航空機事故から救ったことはめでたい。それなのに、無事事故を回避して、友情を復活させられた幸せな4人の笑顔を捉えたスローモーションの映像に、何故かそれほどジーンとせず、「え?これで万事めでたしめでたしなの?」と、一人だけ置いてきぼりをくったような気分になった。

もう一つなんとなくしっくり来なかったのは、命の危険を無事回避した彼女たち4人が98歳まで生きたくだり。
私はこのドラマを見ている頃いろいろ考えさせられていて、”98歳まで生きた=長寿を全うして幸せ” と感じられなかった。98歳まで生きられればもう十分長生きできて幸せで、いつ死んでも悔いはない、ともいえない。

人生の終わり方についていろいろ考えさせられることが多い中でこのドラマを見たせいで、98歳の4人がたわいも無い会話で談笑する場面が ”幸せな人生の象徴的場面” としては胸に響いて来ず、何か消化不良のようになって一人しゅんとしてしまった。こういう気持ちでこのドラマを見終えるとは、自分でも意外だった。

ただ、ドラマとしては最後はあのように丸く明るく収まるのが、きっとよかったのだろうとも思える。現実の世界は暗く重く理不尽な結末も多いので、家の居間で気楽に見る楽しいドラマの締めくくりなら、あれはあれでよかった。

いろいろ書いたが、全体としてはとても面白かった。
子役は可愛くて演技も達者だったし、またバカリズム氏の書いたセリフや俳優陣の演技が、巷でよく見聞きする普通の人の普通の会話や反応らしくてとても面白かった。”普通の人たちっぽい”あのセリフの言い方が病みつきになり、もっと聞いていたくなった。

私はこの作品で初めてバカリズム氏の脚本の面白さを知ったので、彼の書いたドラマをまた是非見てみたい。


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