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新年度の空気

 新年度になった。甥っ子は中学受験を終え、私立の男子校へ。僕の方は職場の管理者が替わり、残業は1分も許さない(それまで残業代は月に15,000円くらいあった)、そして飲み物はジュースやお茶が禁止され水のみになった。なんか変な管理者来たなあとは思うけれど、まあいいや。
 ところで、僕は子供の頃からずっと新年度が嫌いだ。特にクラス替えがある年は本当に大嫌いだった。新しい環境が得意な人は少ないと思うが、特に僕は新しい環境や人間関係に馴染むのが苦手だったので、新年度はいつも不登校になっていたくらいだった。
 あの新年度の、これからなにかが始まりそうな雰囲気。それはワクワクするよりもはるかに、僕を不安にさせた。そした中学校1年生の頃、僕はこの新年度の空気に押し潰されて学校へ行かなくなった。いわゆるギャングエイジと呼ばれる年頃のクラスメイトもどこか幼稚に思えたし、なによりそんな幼稚と断じたクラスメイトにすら舐められている自分も許せなかった。
 あの頃、中学校へは行かずに、毎日のように母親と話していたのをよく覚えている。最初は「学校のなにが嫌なの?」「どうして学校に行かないの?」というようなことばかり言われたが、母親はすぐに僕に無茶なことを言っても仕方ないと悟ったらしく、圧力をかけるようなことは言わなくなった。また、母親の悪性リウマチが進行して家のことを手伝わなければいけなくなったのも大きかった気がする。
 いずれにしても、桜が咲く新年度の風景を目にすると、あのクラスメイトとの連絡や繋がりを断って家にある大量の本に興味を持ち始めた頃を思い出す。
 あれから20年以上が経っても、僕の心は弱々しい12歳のままなんじゃないか。そんな風に思うことがある。

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