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[Fantom & FTMトークン 入門] 唯一無二の新興ブロックチェーン

※本記事は、CoinGeckoが公開した「Fantom & FTM Token Explained: Why Is It So Unique?」の日本語翻訳版です。

はじめに

2021年5月の仮想通貨市場の暴落後より、Binance Smart ChainやMaticなどのEVM互換ブロックチェーンが、脅威的な取引速度と低手数料を武器に台頭し、多くのユーザーを引きつけました。Fantomブロックチェーンもその例外ではありませんでした。ハロウィンをテーマにした様々なdAppsは、ベテラン勢だけでなく新規参入者をも虜にしました。

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出典:CoinGecko

昨年8月に、現在価格にして約8億5000万ドル相当の3億7000万FTMを放出するインセンティブプログラムを発表して以来、開発者やイノベーターがFantomブロックチェーンに流入し、多くの興味深いプロジェクトが登場し始めました。Yearnの創業者であるAndre Cronje氏がFantomへの強く傾倒していることは有名で、NFTマーケットプレイスのArtionや、AbracadabraのDaniele Sestagalli氏との共同事業など、複数のプロジェクトに携わっています。

Cronje氏は現在Fantom財団のチームの一員その影響力・貢献は誰の目にも明らかですが、Fantomが今日のような巨大なブロックチェーンに成長したのには、他にも要因があるに違いありません。では、Fantomとは一体何なのか、何が特別なのか、そして他のブロックチェーンと何が異なるのか、について探っていきましょう。

Fantomとは何か、なぜ特別なのか?

Fantomは、Proof-of-Stakeモデルを採用した、スケーラブルで分散的なスマートコントラクトプラットフォームです。2018年にFantom財団によって設立されたこのプロトコルは、独自のLachesisコンセンサスメカニズムを使用しており、その上に他複数のブロックチェーンレイヤーを搭載することができます。熱心なエンジニアや研究者のチームからなる同財団は、Fantomを通じてよりスケーラブルで安全な分散型インフラを導入し、その採用をサポートする計画です。同財団の実験によれば、コンセンサスエンジンは、1秒間に最大1万件の取引を処理し、同時に即時でファイナリティを確定させることが可能だといいます。

Lachesisプロトコルは、非同期ビザンチン・フォルト・トレランス(aBFT)を用いて、ネットワークがコンセンサスを達成することを可能にします。つまり、BFTを採用したネットワークと同様で、3分の1のノードが悪意を持っていたとしても、ネットワークは正しい順序とタイミングでブロックを検証し生成することができます。

「非同期」とは、ノードが異なるタイミングで情報を処理・伝達できることを意味します。そのため、aBFTネットワークでは、一部のメッセージが失われたり、無期限に遅延したりする可能性があります。メッセージが無制限に遅延する場合攻撃者を特定するのは困難ですが、安定しな状況下においては、問題なく信頼性と実用性を発揮することができるといいます。

前述したように、Fantomはコンセンサス及びセキュリティを担うLachesisを中核として、上層に様々なネットワークや実行層を構築することができます。最初の上層レイヤーとして、2019年12月27日にEthereum Virtual Machine(EVM)に対応したレイヤー1のスマートコントラクトプラットフォーム「Opera」がローンチされました。これにより、開発者は様々な分散型アプリケーションを作成したり、それらをEthereumやPolygon、Binance Smart ChainなどのEVM互換のネットワークから移植したりすることができるようになりました。2月9日現在、OperaのメインネットのTVL(合計ロック価値)は、87億ドル以上に上り、150以上の異なるアプリケーションが稼働しています。

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出典: DeFiLlama

同様に、OperaはProof-of-Stakeモデルを採用しており、取引は1~2秒以内に完了することが多いとされています。 従来のProof-of-Stake型ブロックチェーンでは、ランダムあるいは出資総額に基づいて選ばれる一部のバリデーターがどの取引が有効かを決定しますが、Operaではそのようなモデルを採用していません。ネットワークは完全にリーダーレスな設計であるため、取引の有効性は特定のバリデータ・グループによってコントロールされることがありません。

FTMトークン

多くのレイヤー1ブロックチェーンと同様に、Fantomは独自のFTMトークンを備えており、エコシステム内で様々な目的に使用されます。例えば、NFTの発行やスマートコントラクトのデプロイなど、Operaメインネット上で行われる全ての取引において、ユーザーはFTMでネットワーク手数料を支払います。しかし、これらの手数料は一般的に低く、単純なスワップ取引であれば0.02FTMという低いコストで済みます。では、FTMトークンは他にどのようなことに使えるのでしょうか?

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ネットワークの保全
FTMトークン保有者は、ネットワークのセキュリティを確保するために、トークンをバリデーターにデリゲート(委託)するか、自らバリデーターになるかを選択することができます。デリゲートの場合は、ステークを行う必要がありますが、ステーク開始には最低1FTMが必要です。また、2週間から365日まで、トークンのロック期間を選択できます。ロックアップ期間が長ければ長いほど、還元率は高くなります。トークンをどのバリデーターにデリゲートするかはステイカーが選択できますが、手数料として15%が任意のバリデーターに支払われます。

一方、バリデーターになるには、最低でも50万FTMトークンと、バリデーターノード運用のためのハードウェアが必要です。正確には、3.1ギガヘルツで動作する仮想CPUが4個以上と、3テラバイト以上のストレージ必要です。しかし、必要なFTMトークン量を下げるプロポーザルが現在議論されています。バリデーターは、自身のステーク量に応じた報酬を受け取るだけでなく、デリゲーターからのリターンの15%も追加で受け取ることができます。

FTMトークンをステークした後も、ユーザーはFantomのLiquid Staking Solutionを通じて、資産を流動化することができます。つまり、FTMステーカーはステークされたFTM(sFTM)を同量だけ発行し、それをサポートするFantom上の他のアプリケーションで使用することができるということです。なお、発行・償還手数料は無料です。

変更のための投票
分散型プロトコルのネイティブ・トークンの多くと同様に、FTMはガバナンス・プロセスにおける重要な構成要素であり、FTMのステーカーはネットワークへの変更を提案したり、投票を行うことができます。しかし、一般的なアプリケーションとは異なり、投票は完全にオンチェーンで行われ、1FTMは1票に相当し、デリゲーターとバリデーターのみが参加可能です。ステイカーは、100FTMを支払えばオンチェーン提案を提出することも可能です。

Fantomでは、投票者は単純なYesかNoで答えるだけでなく、より柔軟に、提案に対する同意の度合いを選択することができます。具体的には、「0」は完全に同意しないことを意味し、「4」は完全に同意することを意味します。

DeFi
FTMトークンは、BinanceやUniswapなど、多くの主要な中央集権型および分散型取引所で取引することができます。さらに、FTMはEthereumとBinance Chainの両方で、それぞれERC-20とBEP-2トークンとして取引可能です。Fantomブロックチェーン上だけでなく、他のブロックチェーン上でも多くのアプリケーションでサポートされているため、流動性は十分に高いといえます。

例えば、トークン保有者は、Geist上でFTMトークンを担保に他の資産を借りることができます。さらに、FTMは、Fantom上の数あるネイティブ取引所で、様々な流動性プールのベース資産としても使用されます。保有者は、FTMを他の資産と組み合わせて流動性を提供し、これらのプラットフォームからトークン報酬を獲得することができます。

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Fantomエコシステム

現在Fantomで立ち上げられているプロジェクトは、その名前からしばしば幽霊(英: Phantom)を連想させますが、Fantomは「Ghost Chain」と呼ばれるには程遠い存在です。100以上のプロジェクトがローンチされ、100億ドル近いTotal Value Locked(TVL)があるFantomは、DeFi、NFT、GameFiユーザーのための強固なエコシステムを有しています。

オカルト感のある名前が特徴的なSpookyswapSpiritswapなどはFantom上のネイティブ・プロトコルですが、他のL1チェーン上のプロジェクトも、さらに多くの流動性とユーザーを引き付けるためにFantom上で展開を始めています。代表的な事例はSushiswapCurveで、どちらもEthereumで最初に台頭したDeFiアプリケーションです。以下では、Fantomブロックチェーン上で人気の高いプロジェクトや、今後期待されているプロジェクトについて詳しく見ていきます。

Scream

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人気ホラー映画のフランチャイズの記憶を呼び起こすScreamは、ユーザーがトークンを貸し出して報酬を得ることができる分散型レンディング・プロトコルです。また、預金者は預金を担保に他の資産を借入れ、レバレッジをかけることもできます。

AaveやCompoundといった既存のレンディング・プロトコルと同様に、貸し手は特定の貸し出し資産の預金額シェアを表すscBTCやscUSDCといった利息付きのscTokenを受け取ります。受け取ったscTokenの数量と種類に応じて、ユーザーは別の資産を特定の金額まで借りることができます。

貸し借りに加え、ユーザーはプロトコルのガバナンストークンであるSCREAMをステークし、より多くの報酬を得ることもできます。ステークされたSCREAM、またはxSCREAMは、預金手数料0.5%と利息収益手数料10%からなるプロトコル収益を、SCREAMにして再分配します。つまり、ホルダーはSCREAMをステークして、より多くのSCREAMを獲得することができるのです。

SpookySwap

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SpookySwapは、まさにFantomの「不気味な(spooky)」雰囲気を体現した、同チェーン上で数少ない分散型取引所(DEX)の1つです。EthereumのSushiswapやUniswapのように、自動マーケットメーカー(AMM)モデルで稼働しており、ユーザーは流動性プールを介してシームレスにトークンを交換することができます。スワップ取引ごとに、ユーザーは0.2%の取引手数料を支払います。0.17%は流動性提供者に支払われ、残りはプラットフォームのガバナンス・トークンであるBOOのステーカーに送られます。

流動性提供者(LP)は、特定の流動性ペアのデポジットのプール内シェアに基づいてspLPトークンを受け取ります。流動性を提供している間、彼らは取引手数料を得ることができるだけでなく、受け取ったspLPトークンをSpookyswapのステーキング・コントラクトにステークし、BOOリワードを得ることができます。

前述の通り、BOOはステークしてxBOOに変換することもでき、取引手数料を元にBOOを買い戻しすることで、さらにBOOを発生させ続けることができます。さらに、それだけではありません。xBOOでさえも、他のプールにステーク可能で、その報酬として様々なトークンを獲得することも可能です。

Yearn Finance

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Yearn Financeは、2020年後半にイーサリアム上で絶大な人気を博したDeFiプロトコルの1つです。YearnはFantom上で第2波を巻き起こし、同ネットワーク上でも3本の指に入るプロトコルとして、10億ドル以上のTVLを獲得しています。知らない人のために説明すると、Yearnは預金者が提供した様々なトークンを自動化戦略を用いて最高の利回りで運用し、収益を分配するイールド・アグリゲーターです。また、ユーザーが資産を貸し借りすることができるIron Bankなど他のプロダクトも提供しています。

Yearnのコア・プロダクトは、市場で最高の利回りを自動生成する、yVaultsです。各Vaultのストラテジーは公開されており、資産によって異なります。例えば、典型的な戦略としては、他のレンディングプラットフォームに資金を供給し、トークン報酬を得るというものです。そして、獲得したトークンを売却して元資産を増やし、再びVaultに追加します。

通常、こうした戦略は多くの取引を手作業で行う必要があり、プロセスの各ステップで取引コストが発生します。しかし、現在ではVaultsが全ての作業を行うため、イールドファーマーは手間がかからず、かつガス手数料をシェアすることでコストを抑えることができます。また、ストラテジーはより収益性の高い方へと随時自動的にシフトされます。

デポジット後、ユーザーは各プールに対応したyVaultトークンを受け取ります。例えば、USDC Vaultに預けたユーザーは、yvUSDCというトークンを受け取ります。これらのトークンは、ユーザーのyVaultのシェアを表し、プールが利益を維持している限り増加する原資産のシェアを請求するために利用することができます。言い換えれば、預金者は自分の資産が時間とともに継続的に複利運用されるのをただ座って見ていることができるのです。

Solidly

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YearnのAndre Cronjeが考案したSolidlyは、Fantomで新しくリリースされたDEXで、ステーブルコイン及び他トークンの両方に対し、スリッページの少ないスワップを提供することを目的としています。このプラットフォームは、他の既存のDeFiプロトコルが支払ったインセンティブに基づいてネイティブ・トークンを提供するなど、様々な新機能を含むことが予定されています。

Solidlyはve(3,3)ロッカーズというコンセプトを導入しており、ロッカー(SOLIDをロックしたveSOLIDホルダー)らは、どの流動性プールがより多くのインセンティブを受け取るかを投票によって決定することができます。特定のプールで得られた手数料報酬は、その特定プールへ投票したve(3,3)ロッカーズのみに送られます。つまり、流動性プールからの報酬は、ただのトークン・ホルダーではなく実際のサポーターのみに分配されるのです。

DEXがDeFiプロトコルの流動性及びインセンティブ向上をサポートする新たなブートストラップツールとなるにつれ、現在のAMMモデルは変革を続けています。具体的には、追加機能としてCurveエコシステムに見られるようなゲージ(Gauge)や賄賂(Bribe)の導入や、サードパーティ(外部のDeFiプロジェクトなど)が彼ら自身の流動性プールへトークンインセンティブを追加可能にすることなどが挙げられます。

この取引所のトークンであるSOLIDはまだローンチされていませんが、AndreはFantom上から、TVLが最も高い20のプロジェクトを対象としてスナップショットを撮ると告知しました。この発表以降、他のチェーンからユーザーがFantomに殺到して、各分野から多くのDeFiプロジェクトが、そのスポットを獲得するためにコミュニティを動かしました。

veDAO0xDAOのように、選抜されることを唯一の目的として設立されたプロトコルもあります。そして、最終的に25のプロトコルが選ばれ、ロックされたSOLIDトークンを表すveNFTが分配されました。Andreの最新のアップデートによると、トークンの排出は2月17日に開始される予定です。

以上で紹介したプロジェクトらは、Fantom上の多くのプロトコルの一部に過ぎません。ネットワーク上にはまだ非常に多くの注目すべきプロジェクトがあり、それぞれが特定のユーザーやカジュアルなクリプトユーザー向けに提供されている。ここでは、そのいくつかを紹介します。

PaintSwap

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PaintSwapはDEX及びNFTマーケットプレイスで、ユーザーは作成した作品を、FTMやプラットフォームのネイティブトークンであるBRUSHで買ってもらうことができます。プラットフォームでの販売手数料は、BRUSHの買い戻しやバーンに使用されます。

Ancestral Umans

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スピリチュアルでどこか幽玄な美しさを持つAncestral Umansは、Fantomブロックチェーン上で3000体あるNFTコレクションで、様々な種族のメンバーが描かれています。彼らは現在イーサリアム上にあるUmansの祖先だとされています。

Fantums

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10,860体の幽霊アバターが登場するFantumは、Fantom上のNFTコレクションで、オーナーはFantumとのデュエルに参加し、プロジェクトのFOOトークンを獲得することができます。戦闘前に各プレイヤーが100FOOを支払い、勝利したプレイヤーに戦利品が与えられます。しかし、戦闘で死亡したFantumのほとんどは、永遠に失われることになるため、注意が必要です。

Fantom vs Solana vs Ethereum

Fantomブロックチェーンの内部に潜入してみると、Operaメインネットは普通のEVMとはやや性質が異なるということがわかります。2021年のマルチチェーンハイプの際に、そのユニークな機能と爆発的な成長により、相当数の熱狂的ファンを惹きつけました。しかし実際には、EthereumやSolanaといった他のスマートコントラクトプラットフォームとどのように異なるのでしょうか?

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SolanaとFantomは、スピードとTVLという点では同等ですが、FantomはOperaメインネットを通じたEVMアプローチにより、ユーザーが異なるチェーン間で(マルチ・チェーン対応の)同じアプリケーションを使うことができます。さらに、確固たる評判と支持を得ている既存のプロジェクトは、そのアプリケーションをFantomに簡単に移植することができ、ユーザーはEthereumより低い取引コストで同様の体験をできるようになります。これにより、資本をあまり持たないイールド・ファーマーにも多くの機会が開かれることとなります。

Fantomブロックチェーンを確保するバリデーターの数は懸念されるべきものですが、多ければ良いという訳でもありません。特に基準を満たしていないバリデーターの存在は、ネットワークのパフォーマンス低下を促すだけです。Solanaは1,400以上のバリデーターを抱えているにもかかわらず、ネットワークは何度も停止し、中には48時間にも及ぶ停止もありました。

さいごに

Fantomは、当初は地味な存在でしたが、瞬く間に最も人気のあるブロックチェーンの1つとなりました。独自のLachesisコンセンサスメカニズムと大規模なインセンティブプログラムに後押しされ、彼らのOperaメインネットは現在、複数分野にわたる多数のプロトコルを支え、継続的に拡大しています。しかし、FantomのコンセンサスアルゴリズムはCosmos SDKにも対応していることからも、その長期的な目標は、ネットワークの中のネットワークになることでもあると解釈できます。

高速な取引時間と低コストの手数料により、Fantomや他のアルト・チェーンが多くの新規参入者に選ばれるネットワークになりつつあるのは、理解しがたいことではありません。Ethereumのガス代は高すぎるため、簡単に使えるものではありません。

しかし、最近のOptimism、Arbitrum、さらにはzkSyncといったレイヤー2ロールアップの台頭は、レイヤー1アルト・チェーンの今後に疑問を投げかけつつあります。Fantomは、このような新しいスケーリングソリューション群に押し負けてしまう可能性もあるでしょう。逆にもしFantomの上にさらに相互運用可能なネットワークが構築されれば、Fantomはそれぞれが独自のブロックチェーンを持つ多数のプロジェクトらのハブとして、その地位を確立するというシナリオも考えられます。

とにもかくにも、まずMetamaskをOpera Fantomネットワークに繋げてみて、手持ちの資産をブリッジし、いくつかの"不気味な"スマートコントラクトと戯れてみるのはいかがでしょうか。

執筆者:CoinGeckoアナリストKhor Win Win

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