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Avalanche(アバランチ)入門、AVAXとイールドファーミングの始め方

本記事は、CoinGeckoが公開した「Yield Farming on Avalanche (AVAX)」の日本語翻訳版です。

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はじめに

最近、1億8,000万ドルのインセンティブプログラム「Avalanche Rush」がローンチされ、発表以来、Cチェーン上には多くのプロジェクトが急増しており、AvalancheはDeFiの新しいフロンティアとなっています。DeFiユーザーは、いち早くAvalancheへの橋を渡り、新しい世界を開拓している最中です。

Avalancheネットワークは、2020年9月のメインネットの立ち上げ以来、それほど大きな牽引力はありませんでしたが、今回のAVAXを用いたインセンティブは、エコシステムの注目度を上昇させる重要なカタリスト(触媒)であることが証明されました。Avalanche RushでアナウンスされたAaveCurveはまだローンチされていません。それでも、AvalancheネイティブなDeFi及びイールドファーミングプロトコルを発見し利用することができます。

この記事では、Avalancheのエコシステムにそっと入ってみましょう。ウォレットの設定から資金のブリッジングまで、また、Trader JoeSnowballなど、チェーン上で人気のあるイールドファーミングプロジェクトについても紹介します。

始め方

始める前に、資金を保管するためのウォレットが必要になります。一般的なブロックチェーンとは異なり、Avalancheはエクスチェンジチェーン(Xチェーン)、プラットフォームチェーン(Pチェーン)、コントラクトチェーン(Cチェーン)の3つの主要ブロックチェーンで構成されています。入金や送金のためには、X-チェーンとC-チェーンにのみと接続します。

C-チェーンは、スマートコントラクトの作成や、ウォレットを介したAvalanche上の分散型アプリケーションとのやり取りに使用されます。chainlist.orgにアクセスし、Avalanche Mainnetを選択することで、既存のMetaMaskウォレットにAvalanche C-チェーンを簡単に追加することができます。

MetamaskにAvalancheネットワークを追加

ステップ1: Chainlistへ行き、ウォレットを接続します。

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ステップ2: 検索欄から「Avalanche Mainnet」を発見し、"Add to Metamask"をクリックします。

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ステップ3: 下図のように、ネットワーク追加を承認するためのMetamaskのポップアップが表示されます。"Approve(承認)"をクリックしてください。

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以上です!MetaMaskウォレットにAvalanche C-チェーンネットワークを設定することができました。X-チェーン(*後述)にアクセスするにはMetaMaskを使用することはできず、ネイティブウォレットが必要となりますのでご注意ください。

ウォレットの設定が完了したら、次は実際に資産を入れてみましょう。Avalanche Bridgeを使ってEthereumからAvalanche C-チェーンに直接資金を送金したり、BinanceKucoinからX-チェーンに出金してからC-チェーンに資金を移すことができます。また、他のチェーンからの送金については、Celer Bridgeも有効な選択肢となるでしょう。

a) EthereumからAvalance Bridgeを経由して送金する場合

ステップ1: Avalancheのブリッジアプリで、ウォレットを接続します。

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ステップ2: ブリッジしたいアセットを選択します。アセットに応じて、シンボルの末尾に「.e」と付いたWrappedバージョンのトークンを受け取ることになります。

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ステップ3: アセットと金額を選択したら、「Transfer」をクリックします。すると、取引状況を確認することができます。取引が完了したら、資金がAvalanche C-チェーンのウォレットアドレスに安全に入っていることを確認します。75ドル相当以上の資産を送金した場合は、取引の支払いのために0.1AVAXのエアドロップも受け取ることができます。

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*追記:ETHを送る場合、一旦WETHに変換する必要があります。ただしページを出る必要はありません。上のブリッジアプリで、アセット選択の際にETHを選択すると、WETHへの変換処理も行うことができます。

b) Binance/Kucoinを通してX-チェーンに送金する場合

ステップ1https://wallet.avax.network でAvalancheウォレットを作成します。ウォレットには、X-チェーン、C-チェーン、P-チェーンにそれぞれアクセスするための固有のアドレスが含まれています。X-チェーンアドレスは入金のたびに変更されますのでご注意ください。

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ステップ2: Binance/Kucoinから出金するには、アカウントにログインし、出金オプションを選択します。なお、この方法で出金できるのは、AVAXのみです。Kucoinの場合は、Avaxのネイティブネットワーク(X-チェーン)またはAvaxのC-チェーンを直接選択することができます。

X-チェーンのアドレスを入れて、引き出したい金額を選択してください。混雑中またはサービスが停止中でなければ、数分後には X-チェーンのウォレットにAVAXを確認することができます。X-チェーンアドレスは「X」で始まり、C-チェーンアドレスは「0x」で始まるEVM-ブロックチェーンのアドレスと似ています。


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ステップ3: 資金がX-チェーンアドレスに入ったら、ウォレットインターフェースの左側にある「Cross-Chain」タブをクリックして、送金を実行することができます。X-チェーンを送金元に、C-チェーンを送金先に必ず選択してください。また、チェーン間でAVAXを送受金する際には、少額の手数料を支払う必要があります。

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ステップ4: Cチェーンに資金がインポートされたら、MetaMaskアドレスに送金してAvalanche上のさまざまなdAppsとやりとりすることができます。資金を取引所に送り返す必要がある場合は、「Send」を選択し、現在資金がある元のチェーンを選択します。

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c) Celer cBridgeを介した他のブロックチェーンから送金する場合

ステップ1: あるいは、Celer NetworkのcBridgeを介してBinance Smart Chain(BSC)またはxDaiから資金を送金することもできます。https://cbridge.celer.network にアクセスし、ネットワークの切り替えを行います。

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ステップ2:OptimismやArbitrumなどのレイヤー2スケーリングソリューションを含む、最大9種類のチェーンから選択できます。選択したチェーンに応じて、転送可能なアセットは異なります。チェーンと転送する資産の種類を選択します。

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ステップ3: ブリッジする金額を入力し、「Transfer」をクリックします。取引が完了すると、Avalanche C-チェーンで資金を受け取ることができます。

これですべてが完了です。これで、Avalancheでイールドファーミングを始めるための準備が整いました。しかしその前に、いくつか注意すべき点があります。

Avalancheのトランザクションは、ネットワークのネイティブトークンを使用して支払われ、その後バーンされます。この場合、とにかくまず少量のAVAXを用意する必要があります。当然、実行された取引の種類に応じて必要な金額は異なります。

Avalanche C-チェーンでは、ネットワークの利用状況に応じて決定される動的手数料システムを採用しています。ネットワークが混雑している場合、通常のスワップ取引では、ガス料金が225gweiまたは約0.03AVAXまで上昇することがあります。これは、1取引あたり約1ドルに相当し、PolygonBinance Smart Chainと比較すると、決して安いとは言えません。しかし、Ethereumと比べれば遥かにお得です。

イールドファーミング

さて、基本的な要件を説明したところで、Avalancheエコシステムの現状を少し覗いてみましょう。AaveCurveなどの大御所はまだローンチされていませんが、Avalancheには既にネイティブのレンディングプラットフォームやイールドファーミングプロトコルが混在しており、ブリッジを超えて雪崩こんできているイールドファーマーを受け入れる体制が整っています。

私たちはこれらのプロジェクトを、その性質に基づいていくつかのカテゴリーに分けました - レンディング、DEX(分散型取引所)、イールドアグリゲーター、そしてその他の4カテゴリです。以下紹介するプロジェクトだけでは、エコシステム全てを網羅しているとは言えませんが、使いやすく親しみやすいインターフェイスを備えているため、初めての方にとっても決して難しくはありません。

レンディング

BENQiは、Avalancheの最初のレンディング・プラットフォームの1つとして、その名を瞬く間に広め、公式ローンチからわずか1週間足らずで、TVL(合計ロック資産価値)が10億ドルに達しました。BENQiは、仮想通貨を貸し出すことで利息を得ることができ、また、担保資産としてのエクスポージャーを確保しながら、新たに資金を借り入れレバレッジを効かせることができるプロトコルです。

本プロトコルで資産を貸し出した預金者は、BENQi上で資産の流動性を表すQiWBTCやQiUSDTなどの利付きQiトークンを受け取ります。AaveやCompoundとは異なり、QiTokenの残高はウォレット内で増加するのではなく、増加した原資産の換金に使用することができます。

現在、預け手と借り手は、AVAXとQIを流動性マイニングによる追加報酬として受け取ることができるため、より一層のリターンを得ることができます。流動性提供による報酬は、QiTokenの保有量に応じて発生しますが、追加のQIやAVAXの報酬は、「Reward」タブから請求する必要があります。

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本稿執筆時点では、BENQIはAvalanche内の7種類の資産までしかサポートしておらず、利回りは2%から12%の範囲です。トークン報酬による利回りは利払いに比べて高いため、多くのユーザーは実際に資産を貸し出し、同時に借り入れを行うことで、流動性マイニングによるリターンを最大化させている傾向にあります。

DEX(分散型取引所)

Avalancheには、PangolinTrader Joeという2つの主要なネイティブDEXがあります。この2つの自動化されたマーケットメーカー(AMM)は、イーサリアムにおけるUniswap vs Sushiswapのように激しいライバル関係にあります。この場合、PangolinはUniswapを、Trader JoeはSushiswapを彷彿とさせますが、それはそれぞれの手数料体系を見ればより明らかです。

どちらのDEXも0.3%の取引手数料を徴収しているが、流動性提供者に送られるのは0.25%だけで、残りの手数料は異なる使い道を持ちます。

Pangolinの場合、特定の目標を達成するために、コミュニティが分配先を決定することができます。一方、Trader Joeでは、残りの0.05%をxJOEのstaking poolに送ります。この資金は、JOEを定期的に買い戻すために使用されるため、ネイティブ・トークンJOEの保有者へと価値が還元されます。

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両プラットフォームは、インセンティブ付きの流動性マイニングプールを備えており、ユーザーは選択した資産に流動性を提供し、それぞれのLPトークンをステークしてPNGまたはJOEを獲得することができます。どちらのDEXも、Chainlink (LINK)Dai (DAI)Wrapped Bitcoin (WBTC)など、より身近な資産を対象としたインセンティブ付きプールを提供しています。

別のペアも気になっているという方には、Shibavax(SHIBX)Gondola Finance(GDL)などのトークンペアを探してみると良いかもしれません。競争率はまだ低いため、これらのプールは比較的高いリターンを期待することができます。もちろん比較的価格が変動しやすいものであれば、インパーマネントロスのリスクも高まるのでご注意ください。

Avalancheに存在するネイティブAMMの他にも、例えばSushiswapは近々インセンティブ付きでローンチを予定しています。Avalanche Foundationと協力して、両者は3ヶ月間で最大750万ドルのAVAXおよびSUSHIトークンの報酬を配分する予定です。

イールドアグリゲーター

Yearn FinanceBeefy Financeのような知名度はまだありませんが、Avalancheにはユーザーの預金を自動で運用してリターンを最大化する独自のイールドアグリゲーターがあります。ユーザーは資金をまとめてプールし、AMM DEXへ流動性提供を行う際のガスコストを一元化します。現在、これを促進する最大のプロトコルは、Snowball(SNOB)Yield Yak(YAK)の2つです。

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Snowballはイールドアグリゲーションプロトコルで、Auto-Compounding VaultとそのStableVaultという2つのコア製品を提供しています。ユーザーは、PangolinまたはTrader JoeのいずれかからLPトークンを入金して自動福利運用を開始し、プラットフォームのネイティブトークンSNOBを獲得することができます。ただし、サポートされているのは特定のペアだけなので、正しいペアに流動性を提供して複利運用してください。

一方、同社のStableVaultは、最大4種類のステーブルコインをサポートするAMMで、ユーザーは低い手数料とスリッページでステーブルコイン間のスワップを行うことができます。また、ユーザーはステーブルコインの流動性を提供することで、プールのシェアを表すs4Dトークンを受け取ると同時にスワップ手数料を獲得することができます。受け取ったトークンをさらにステークして、SNOBの追加報酬を得ることができます。

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スノーボールと同様に、Yield Yakは受け取った報酬トークンを売却し、流動性ペアに再投資することで、自動的にデポジットを複利化します。ユーザーは「reinvest(再投資)」ボタンを押すことで、プール内の全員のデポジットを複利化することができます。

起動すると、reinvestボタンは報酬トークンをLPトークンに変換し、プールに再投資します。プールに基づいて、そのトランザクションを実行したユーザーは再投資された金額の一部を報酬を得ることができます。

その他注目すべきプロジェクト

ほとんどのプロジェクトは上記のカテゴリーに分類されますが、中にはその複数カテゴリにまたがるものや全くユニークなものがあります。ここでは、Avalancheのエコシステムの中で、これまでに注目されたイールドファーミンングプロジェクトをご紹介します。

Penguin Finance

Penguin Financeはイールドファーミング及びステーキング・プラットフォームであり、ユーザーはLPトークンを複利運用しつつネイティブ・トークンであるPEFIを獲得することができます。ペンギンエコシステムには、「Penguin Emperor」を含むいくつかのゲームdAppsも含まれています。また、エコシステムに参加しているユーザーは、限定NFTを獲得するチャンスがあります。

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Elk Finance

Elk Financeは、標準的なイールドファーミングとステークプールを持つほか、クロスチェーン流動性ブリッジを提供しています。ユーザーは、このプラットフォームのトークンであるELKを、PolygonやFantomを含む4つのネットワークで使用することができます。また、米ドルではなくスイスフランにペッグされたクロスチェーンステーブルコイン「CHFT」のリリースも予定しています。

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Teddy Cash

本質的にはイーサリアム上の借入プロトコルであるLiquity(LQTY)のフォークであるTeddy Cashは、ユーザーがTeddy USD(TSD)の形でAVAXのデポジットに対して無利子の借入を行うことができます。このプロトコルでは、過剰担保に加えて、TSDを資金源とするStability Poolを重要な構成要素としており、プールへのデポジッターはTSDの保証人的役割を担います。

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Wonderland Money

Wonderlandは、Ethereum上のOlympus(OHM)と同様のメカニズムであり、TIMEトークンを通じて、分散型リザーブ通貨プロトコルになることを目指しています。ユーザーはTIMEを購入してステークすることで、MEMOries(ステークされたTIME)を受け取ることができます。MEMOriesの残高は、リベースの報酬がステーカーに分配されるため、8時間のエポック毎に常に増加します。

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最終的な考察

Avalanche Rushによって、より多くの人々が今、新たな機会を追い求めて全く新しいネットワークへの橋を渡り始めている。Ethereum上の代表的DeFiプロジェクトはSushiswapを除いてまだAvalancheへ移ってきてはいませんが、ユーザーはCチェーンが提供する新鮮なファーミング機会や新プロジェクトに積極的に反応しています。9月3日現在、Avalancheにロックされている総価値は23億ドルに達しており、その勢いは衰える気配がないため、イールド・ファーミングは、小口大口または素人ベテラン問わず、今後も興味深い選択肢となることでしょう。

雪に覆われた荒野には、当然未知の危険が潜んでいます。特によく知られていないプロトコルでは、最高レベルの警戒心を持って利用することが重要です。行動する前に、自分で調査してドキュメントやデータを確認し、可能であればスマートコントラクトも確認することが肝心です。もしお金を入れる場合は、失っても構わないものだけを投資するようにしましょう。都合の良すぎるようなものは、リスクも同様に高いと考えるべきです。このガイドが、Avalancheのエコシステムでのあなたの冒険を少しでも良くするものであることを祈っています。

執筆者:CoinGeckoアナリスト Khor Win Win


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