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[振り返り]7月の仮想通貨市場:マーケット概観、テスラBTC売却、ETHマージ、CeFi連鎖破綻、Punks再燃

1. 7月のマーケット概観

2022年7月の仮想通貨市場は、5・6月とは打って変わり月の半ばで大きく反発し、BTCは月初の19,000ドル近辺から最高値で約23,000-24,000ドル、ETHは1,000ドル付近から約1,600-1,700ドルまで回復を見せました。

7月のBTC価格推移:

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7月のETH価格推移:

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19日に発表された米国のCPI(消費者物価指数)は、過去40年で最高値である9.1%を叩き出し、27日のFOMCでは75bpsの利上げが発表されましたが、(株式市場を含めた)マーケットはそれらのニュースを既に折り込み済みであり、各発表後に強く上昇しました。

仮想通貨市場全体の時価総額は、約0.9兆ドルから2,000億ドル上昇し、1.1兆ドル付近に到達しています。

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2. テスラ社が保有BTC75%の売却

7月20日、Tesla社のQ2収支報告書にて、同社保有分の75%を占める9億3,600万ドル分のBTCが売却されていたことが明らかになりました。同社CEOのイーロンマスク氏は業績発表会にて、BTC売却の理由に関して「中国におけるCOVID-19ロックダウンの不確定さを考慮し、キャッシュポジションを増加させる必要があった。」と説明しています。

同社は具体的な売却価格を公開していませんが、SECへ提出された10-Q業績報告書によれば、今回のBTC売却によって6,100万ドルの利益が計上されたとといいます。2021年Q1にBTC購入を発表した際の推定平均購入価格を約31,000-32,000ドルだと仮定すると、同社は5月初旬の大幅下落の前あるいは最中に32,000-39,000ドル圏内で売却を行ったのだと考えられます。

収支報告書が公になった直後、市場はやや動揺を見せBTC価格は一時的に1.7%下落しました。今回の売却以前まで、Teslaは上場企業としてMicroStrategy社に次ぐ二番目に大きなBTC保有企業であり、イーロンマスク氏は過去に「Teslaは💎🙌(ダイヤモンド・ハンド)を持っている」ともツイートしていました。

3. ETH価格の上昇要因: マージ 

7月に見られた激しいETH価格上昇の要因の一つに、The Merge(マージ)実装への期待があります。過去1ヶ月で、ETH/BTCレートは0.055から0.07まで上昇し、ETHドミナンスは14.1%から17.8%まで増加しました。

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マージはEthereumがPoWチェーンからPoS(ビーコン)チェーンへと移行するアップグレードのことで、Eth2.0を完了するための重要なステップです。以下のスライドの通り、マージは以前から今年の第三四半期内での実装が予定されています。

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既にRopstenおよびSepoliaテストネットでのマージは完了しており、最後のテストネットリハーサルであるGoerliネットワークでのマージは8月6~12日に行われる予定です。それが問題なく完了すれば、メインネットのマージが延期なく9月中に実装される可能性は非常に高くなるでしょう。

価格への影響は不明ですが、7月はStarkNetのトークンローンチ発表や、Polygon及びMatter Labs、ScrollによるzkEVMの同時発表、OptimismのTVL倍増など、Ethereumに関しポジティブなニュースがレイヤー2回りでもいくつもありました。

*zkEVMとは
zkEVMとは、EVM(イーサリアム仮想マシン)と互換性のあるzk Rollupチェーンのことを指します。従来zk-Rollupソリューションは、OptimismやArbitrumが採用するOptimistic Rollupとは異なり、DEXや送金など限られたユースケースに特化した実装しかできませんでした。しかし、zkEVMは、Optimism Rollupやレイヤー1Ethereum同様に、どのようなアプリケーション/プロトコルでも実装可能な汎用プラットフォームとして機能します。

4. CeFiの連鎖破綻:Celsius, Voyager, 3AC

先月の振り返り記事でも取り上げたように、現在複数のCeFiレンディング企業が破綻に追い込まれており、CelsiusやVoyagerは既に破産を宣言しています。以下はCoinGecko Q2レポートの1スライドで、三つの主要CeFiレンダーの概要・現状について大まかに解説しています。

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現在Celsiusは破産手続きの最中である一方、仮想通貨取引所FTXはBlockFiの買収に向けて動いていると噂されており、かつ破産済みのVoyagerには流動性を提供する形で救済を行なっています。

上記3社を含め多くのレンディング企業が大きく損失を被った共通要因として、市場大暴落やTerra崩壊などの煽りを受け破綻したクリプト・ヘッジファンド兼VCのThree Arrows Capitalの債務不履行/破産が挙げられます。下図の通り、同ファンドは多くのカウンターパーティーからレバレッジをかけつつ多額の資金を借入れていました。

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3ACの流動性不足のもう一つの主要要因として、GBTCへの巨大なエクスポージャー(3,890万ドル)があったことは明らかです。さらに同社は複数のレンディング企業から資金を借入れるためにそのGBTCを担保資産としても使っていました。

問題は、現在GBTCがNAV(基準評価額)に対して-32.7%というディスカウント率で取引されている点です。直近1ヶ月でも約-1.3%ほど下落しており、ディスカウントは増加し続けています。GrayscaleによるETF変換申請は6月末にSECに却下されていますが、同社は今後SECを訴える予定です。

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また、唯一健全に運営を続けるCeFiレンディング企業Nexoも価格下落と引き出し増加から、顧客の預入資産の激しい減少を経験しています。BTC建では、6月には50,714BTC、7月には28,106BTCの減少が見られました。

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5. NFT: Punksの再燃

7月のNFT市場において興味深い現象の一つとして、著名なNFTコレクティブルの一つであるCryptopunksのフロアプライスの上昇が挙げられます。6月には約44.8ETHだったフロアプライスは、8月には一時約84.5までと約2倍弱上昇しています。

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24日、24つあるApe Punksの一つであるCryptoPunk #4464が2,500ETH(当時約260万ドル)で購入され、26日には著名クリプトVC「1confirmation」が #4156を2,690ETH(当時331万ドル)で購入しています。同ファンド創業者であるNick Tomanio氏は、CryptoPunksへの投資理由を以下のように説明しています。

"簡潔にまとめると、5年以上の時間軸で見た場合、VC投資してアップサイドがあることと、そして、今回の大型購入によって、NFTが大衆の中でより"現実化"されることで、世界の創造性をより高められる点です。NFTはゼロサムカジノだと思われているが、もっと深い何かが起きています。アセットクラス、コレクション、Punk..."

CryptoPunksはEthereum上で最も古い歴史を持つNFTコレクティブルの一つであり、最初にPFP(Profile Picture) NFTというコンセプトを生み出した歴史的に重要なNFTプロジェクトです。そのため、長期的に強くクリプト/NFTを信じるホルダーを多く持ち、現在の弱気相場でも比較的新しい買い手が集まりやすい傾向にあるのだと考えられます。

さらに、現在最大のNFTプロジェクトであるBAYCを手掛けるYuga LabsがCryptoPunksを開発するLarva Labsを買収し、同時に423個のPunksを購入したことも、同プロジェクトに対する人々の信頼や期待を支える一つの要因です。

7月のNFT市場は、様々なネガティブニュースがありました。取引高は仮想通貨市場の下落につられ下降線傾であるのに加え、OpenSeaが社員の20%を解雇したり、マインクラフトによるNTF禁止のお触れが出るなど、風向きの悪さを感じるニュースは少なくありません。

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しかし、興味深い進展も複数存在します。一つは、16日に行われたBored Apes メタバースであるOthersideの最初の技術デモ開催です。4,500人以上のOtherdeeds保有者が参加し、彼らはアバターのテストや3D環境とのインタラクションを楽しみました。

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さらに、Uniswapのモデル(AMM)をNFT向けに編集したNFTマーケットプレイス「SudoSwap」やOTCモデルの「Yawww」など、新しいプロダクトも次々と登場しています(※詳細)。相場の逆境にも関わらず創造的な開発は進んでおり、今後の発展に期待が高まります。


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