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過去に刻まれた記憶に今の時代の価値観を加えること

朽ちる一歩前を美と捉えるかゴミと捉えるか

HUT BOOKSTOREとして古書店を開こうとしている場所は、歴史ある建物でもなければ、文献的な意味もない。どこにでもある古い建物にすぎない。その建物に関わってきた住み手や作り手、建物に出入りをしていた人、風景として眺めてきた人など、各個人が抱える思いがあるだけ。

それぞれの思いの集合体が歴史と言えるかもしれないけれど、その小さな1つがなくなったことで何かが大きく変わるわけでもない。

古い建物を見た瞬間に汚れたボロボロの建物と捉えるか、時間を経ていい味を出した建物と捉えるかは人それぞれだ。新しいものを美を感じる人と古いものに刻まれるストーリーを美と感じるのか。評価軸が違う。

HUT BOOKSTOREでは後者で過去を意味あるものとして捉えたい。

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HUT BOOKSTORE店内では、古い材料や仕上の一部分を誰からでも見られるようにする予定でいる。部分的に朽ちかけた材を空間の一部として使うのは、その材がこの場所で過ごしてきた時間軸を感じたいから。美というほど美しいものではないけれど、農作業で働く人の深くシワの入った硬い手を見ると何とも言えない感情がわき上がってくるように、古い建物には感じる何かがある。

先人が手を加えたエネルギーを壊してしまうことは簡単だけれど、今の技術で過去のよいと考えられる空気感を超えられるかと言われれば難しい。新しい材から放たれる勢いのようなものは感じにくいからだ。

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枯れた空間に湿度を持った温かい熱を流す

古い建物が100%よいかと問われれば、そうとも思わない。古い建物を直すように復元したとしても、どこかよそよそしい、距離感を感じる建物になってしまう。今生きている人間から見ると過去のものと感じやすく、自分とは別次元のものと認識する。すると、自然と空気が乾燥し、肌に当たる空気の粒子が粗く感じられるようになる。

居心地のよい空間にするべく、今の時代に生きる人の感覚でデザインし直し、形や質感として手を加えることで、距離感が縮まり、湿度を持った温かい空間になると考えている。空気も優しく包み込むような柔らかさを感じられると思う。

熱を流すこと。それが建物からも感じられることが大切なことだと感じている。

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