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焼き物(ちょっとだけ)

お店をやっていると、『お買い物じゃないお客さま』がやってくることがしばしばあります。
そういうお客さまは、お喋りが目的です。
だいたい、自分の世界観を語って、帰っていきます。
なかには、いつも花の種を持ってくる『種おじさん』とか、好みの店員に花束を持ってくるストーカーギリギリのお兄さんとか、いろんなお客さまがいらっしゃいました。

私のところに話にくるお客さまのひとりに、焼き物がお好きなおじさんがいました。
おじさんは古九谷がお好きでした。

基本的に、おじさんは、人の好みには興味がなくて、1時間くらい古九谷がどれだけ希少で価値があるか、毎回延々と話して帰っていきました。
「◯◯さんは、何が好きなの?」と訊かれ、
「信楽です」と答えると、
「へ〜え、タヌキね」と鼻であしらわれる感じでした。(茶器だわ!)
茶器とはちょっと違くて瓦だけど、大好きな天平文化、大好きな聖武天皇さま縁の紫香楽宮(しがらきのみや、なんて美しい名前!!)も関係してるし、私にとっては、ちょっと思い入れのあるお土地柄です。


あるとき、旅先で(あれはどこの何ていう窯元さんだったのかなぁ、確か栃木だったと思うんだけど)、焼き物を製作販売しているお店を覗いてみました。
その土地の窯元さんを訪れてみるのは、旅の楽しみのひとつでもあります。

私は名が通ってなくても全然構わなくて、好きだな、と思ったら、連れて帰ってきます。
そのとき、お店には茶器もお皿も湯呑みもお茶碗も置かれていました。
私はそこで、マグカップを2つ、購入しました。
ひとつは、ざらりとした感触の飾り気のないもので、もうひとつは釉薬が掛かって青紫に光っているものでした。
どちらも触れていて心地良く手に馴染み、ふちの部分も厚すぎず、唇に違和感が無さそうでした。

その2人はずーっと愛用していて、20年以上がんばってくれています。
だけど、ざらりとしたタイプの子は、一昨年、エアコン取り替えのとき、業者さんが掠って床に落としてしまいました。
大丈夫だろうと思っていたのですが、使っていると、水漏れするようになってしまいました。
よく見ると、幾筋かヒビが入っていました。
泣く泣くお別れしました。
釉薬の子は彼用になっていたので、今、普段使いのカップは、姪っ子がお土産にくれたものを使用しています。
そのマグカップは、姪っ子がサーカスを観に行ったお土産の品なのですが、こういう量産品って、ほんとうに丈夫です。
何でですかね?
高価な焼き物のほうが、割れたり欠けたりしやすいです。


曜変天目という茶碗があって、世界に3つしかないのですが(正確には日本に3つ、国宝)、それが美しくて深くて、子どもの頃に魅せられて以来、とても好きです。
焼き物好きな人はみんな好きだろうなぁ。
夢のように綺麗な焼き物です。宇宙を感じます。

『信長の野望』をやっていたとき、論功行賞で、秀吉に曜変天目をあげようかな、と思ったのですが、「でも、これあげちゃったら、それ以上はもう無いぞ」と考えて、別の品を与えました。
秀吉は、「それがしの働きにご不満がお有りですかな」と不服そうでした。
「ヤバいな、こいつデキるし、謀反でも起こされたらたまらんな」と思って、私(信長)は、史実にはない僻地に秀吉を飛ばしてしまいました。
そんなに易々と、曜変天目あげられるわけないでしょう。(それにしても、論功の品に曜変天目が入っている設定がすごい。)

中国の焼き物では、景徳鎮が好きです。(というか、景徳鎮しか知らないんです、不勉強ですみません。)
青白磁の微妙な青みがかった色がとても良いなと思います。
惹かれる。美しい。


今日は、この辺で。
読んでくださって、ありがとうございました。
また明日。
おやすみなさい。

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