読書感想:『白うさぎと天の音 雅楽のおはなし』

 今日は図書館で見つけた素敵な絵本のお話です。
別の本を借りようと訪れた時、たまたま伝統芸能の書籍をピックアップした棚に置いてあり、表紙の優しい雰囲気に惹かれて借りました。

 雅楽は、平安時代から脈々と受け継がれてきた日本の音楽の一つ。
独特な音色は厳かで、神話の世界を思わせるような神聖さを感じさせます。ただ一方で、非常に遠くに感じる音楽でもあり、私はこれまで触れる機会がほとんどありませんでした。

 このお話は、みんなにはきこえない音を聞く耳を持つ、一匹の白うさぎが主人公です。
そのうさぎさんが出会う神秘的で切ない出会いによって雅楽を奏でる楽器、笙(しょう)、龍笛(りゅうてき)、篳篥(ひちりき)が誕生する…というもので、お話自体は短いですが、なんとも胸に迫り、余韻に浸りたくなります。
私は涙もろいので、それぞれ楽器に纏わる生き物たちの想いに泣きそうになってしまいました。(特に篳篥は号泣…)
 次に雅楽を聴く、或いは楽器を見る機会があったら、それぞれのエピソードに想いを馳せる のだろうと想像すると、なんだかとても得難いものをいただいたような気持ちです。

 かんのゆうこさんの詩のようにやさしい言葉と、東儀秀樹さんの細い線に淡い色で描かれた絵が、静かで美しい世界を創り出しています。
 お子さんにも良いのですが、大人でも楽しめる素敵な絵本ですので、拙文ではありますが、紹介も兼ねて感想を記しました。
どなたかの興味を引いたら幸いです。


『白うさぎと天の音 雅楽のおはなし』
文 かんのゆうこ
絵 東儀秀樹
講談社

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