読書感想: 梶井基次郎『檸檬』

 クリームソーダが有名な旅する喫茶さんと丸善のコラボで興味を持ったので、久々に図書館へ行って借りてきました。

 梶井基次郎さんは、なぜか教科書でも一度も触れてこなかった作家さん。いい機会なので色んなの読もうかなと文庫で借りて、通勤の合間などにちょこちょこ読んでたので、さらっと感想でも。読んだ時に感じたものを大事にしたいので、作家ご本人についてはあまり調べてません。

 主人公がだいたい薄暗いというか、鬱々と落ち込んだとこから始まる印象。
あと「たかし」という名の主人公が度々登場するのが気になりました。漢字は違えど、よく出てくるのです。またお前さんか、たかし。

 印象深かったのは、目に映る風景の描写の細かさ。特に『城のある町にて』や、『蒼穹』などで、美しいものや恐怖に対して、なぜそれが美しいのか、或いは怖いと感じるのかを語る語彙の多さにはただただ恐れ入ります。どれだけ本を読んだらすらりと出てくるのでしょう。

 登場人物に共感するところはないけど、人からどう見られているか気にしすぎるところは少しだけわかるかな…と。人目というのは一度気にしだすとずっと苛まれますね。梶井先生の場合は病にかだいぶやんちゃをなすったそうだから、その後ろめたさもあるのでしょうけど。
逆に全く共感しないのは、猫に対しての冷たさ。特に『愛撫』はちょっと好きになれない…猫好きゆえに。

最後に好きだなと思った描写を引用して終わります。読書感想文にもなりませんが、この辺で。

『檸檬』より。(まるで美女でも描写するかのような果物への陶酔めいた賛辞。)
 「レモンエロウの絵具をチューブから搾り出して固めたようなあの単純な色も、それからあの丈の詰った紡錘形の恰好も。」

『城のある町にて』
昼と夜より。(ごくありふれていたであろう、日常の美しい瞬間。)
「盥の水が躍り出して水玉の虹がたつ。」

引用元:新潮文庫か-2-1

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