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あの子が好きだった気持ちを成仏させます

小学生の頃、ずっと片思いしていた男の子がいた。それが初恋だった。

その恋はある日突然、それはそれは情けない形で終了した。

ネタにしてあげないと、あの頃のピュアな私の魂が成仏できないというか、苦しい思い出のまま墓場に入ることになりそうなので、恥を忍んで記録します。

事の発端は高学年を迎えた頃のバレンタインデー。クラスは離れてしまったが、毎年欠かさずチョコレートをその子に渡していたので、その年も欠かさずにチョコレートをプレゼントしたのだ。1ヶ月後のホワイトデーに事件が起こるとも知らずに。

1ヶ月後の事件当日。小学生の頃からズボラで面倒くさがりやでアホな私は、学校で済ませればいいのに自宅まで小便を我慢していた。あの頃は「お母さん、学校からずーっとおしっこ我慢してた!」と報告して、「バカじゃないの?学校で済ませなさいよ!」と決まって言われる、母との戯れがあった。その流れを私はよく楽しんでいた。マジで低脳なガキだった。

私は恵まれたことに鍵っ子ではなかった。が、たまに母が買い物で不在にするので、合鍵はランドセルの特別なポケットにいつも入れていた・・・はずだった。

膀胱がパンパンになった状態で自宅に着き、インターホンを鳴らした。お察しだろうが、母は不在だった。仕方ないので、私はランドセルの特別なポケットを探った。だが、合鍵がない。入ってない。

ランドセルをその場でひっくり返して、自分の着ている服のポケットというポケットを裏返して、いつも母が何かあった時のために合鍵を隠している場所を探して・・・思い当たる場所という場所を探した。鍵は見つからなかった。

まあ・・・すぐ帰ってくるだろう。私は自宅のドアの前で待つことにした。尿意を紛らわせるために多分立ったりしゃがんだり、地団駄踏んだり、ランドセルの中に入ってた本を読んだりしていたと思う。だが母は中々帰ってこなかった。

大人になった今もそうだが、超おしっこしたい時というものは、時間が経つのが死ぬほど遅く感じる。正味1時間程しか待ってないと思うのだが(それでも十分長いけど)3時間も4時間も待ってる気分だった。私の膀胱は疼いて止まらなかった。

自宅近くには公園などの公共施設もあったので、今思えばそこに行けばよかった。だが、多分そう思い立った段階では、動くだけでリスキーな状況だった気がする。1m移動したら1m先で完全に出てしまう、そんな感じ。

流石に私も子どもながらにもプライドがあり、そして、もうおしっこを漏らしていい年齢じゃないことも理解していた。

理解していた、のに。

3月の寒空の下、股ぐらだけが温泉に浸かったようにとても暖かくて、とっても気持ちよかった。そしてすぐに臭いが立ち上り、暖かかった股はすぐに冷たくなり、不快感と情けなさがやってきた。

最悪だ。しゃがみこんで、すぐに着ていたダウンで下半身を覆った。こんなの、同じマンションに住んでる同じ階の大人や子どもに見られたくなかった。隠しても隠しきれていないそれを、必死に隠して小さく丸まった。

私は母を心で責めた。なんでお母さんは今日に限って家にいないんだ?いつもは暇そうに家にいるくせに!全部家にいないお母さんが悪い!こうなったのは全部お母さんのせいだ!!※悪いのは全部お前

悔しさもこみ上げてきて、とうとう涙が滲んできたその時、目の前に人影がやってきた。顔をあげるとそこには大好きなあの子が立っていた。

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