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妹への手紙 #贈りnote

「どっちがお姉ちゃんなんだろうねぇ。」

まわりの大人たちは、2つ歳下の妹と私を比べて、よくそう言いました。
そのくらい、妹は私より遥かにしっかり者で、身体もひとまわり大きくて。

三人きょうだいの真ん中の妹は、幼い頃からよく気がついて、どんくさい長女の私とは大違い。

それでも、妹なりの不器用さもあって、私たちはお互いを補い合うように一緒に育ちました。

しょっちゅう喧嘩もしたし、
お互いに、親から比較されたことで、嫉妬することもあったんだろうけど

妹といると、頑張らなくてもいいような、楽な私でいられるような。
彼女は、私の最強の味方だと思っています。

なかなか面と向かっては言えませんが、妹のジュン(仮名)に手紙を書いてみたいと思います。

おしゃべりするような気持ちで。



*****

ジュンへ

なぁ、覚えてる?私が小学一年生で、ジュンが幼稚園児だった頃に、2人で家出をしたことを。

ちっさい頃の1番の思い出は、あの日のレンゲ畑かも、って思って、ちょっと昔話をするよ。

2歳だった弟を、私たちが仲間はずれにして泣かせてしまい、お母さんに「出て行きなさい!」って叱られて。
2人でほんとに出て行ったよね。

田んぼ道を歩いて、レンゲ畑を見つけて、レンゲを泣きながら摘んだね。
「お母さんにプレゼントしよう。」って。

どろんこのライターも見つけて、それは、お父さんにプレゼントすることにしてさぁ。

でも、「ごめんなさい」の手紙を書くものがなくて、近所のおばちゃんに借りようって、おばちゃんちに行ったら、2人ともワーワー泣いちゃって。

おばちゃんに家出の事情を話して、おばちゃんがうちに電話してくれて、お母さんが弟を抱っこして迎えに来て。

ヨレヨレのレンゲをお母さんに渡して、ごめんなさいって謝ったね。

たった二時間くらいの家出だったけど、私には長旅だった。
大げさかもしれやんけど、あの日、この世でもう、私には妹しかいない、って思ったことを、ぼやっと覚えてる。


思えば、一番の友達みたいに、ジュンとは何でも話してきたね。

幼い頃は、同じ部屋に勉強机を並べて、一緒の布団で寝ながら。
大人になって、それぞれ家庭を持ってからも、いっぱい話してきた。

友達や恋愛のこと、親のことも、家庭や子どものことも。
泣きたいことも、嬉しいことも。
どこの店の何が美味しいとか、安いとかも。

同じ地域に住んでいて、よく一緒にいたから、ジュンとずっと一緒に子育てをしてきたような気がするよ。
助け合うというより、私の方がジュンにいっぱい助けられてきた、と思う。

ジュンからは、

「姉ちゃん、これをやってくれる?」

より、

「姉ちゃん、私がこれをやろうか?」

って言われた方が、ずっと多かったから。

特に、難病の二女が生まれてからは、私は何度もジュンに救われた。


二女の病気がわかって、落ち込んでいる私のところに、ジュンは姪を連れて毎日やってきたね。
姪と私の二女は同級生。

当時、私は姪の正しい成長が羨ましくて、見るのがつらい日もあったんだよ。
激しく動き回って、上手におしゃべりする姪の横で、二女はずっと寝転んだままだったから。

けれどジュンは、そんなことはお構いなしでやってきて、娘たち2人を一緒に遊ばせる。そして、

「姉ちゃん、うちに閉じこもったらあかん。外に出ようよ。遊びに行こうよ。」

と、必ず私たちを連れ出した。
だから私は、泣いている暇がなかったよ。

不思議と、二女の障がいを気にしなくなって。
平気でいる自分が、心地よくなって。

私の気持ちを全部わかっていて、「姉ちゃんを1人にしたらあかん」って思って、あの時連れ出してくれたんだね。

ありがとうね。

二女の入院のピンチには、家で待つ私の子どもたちに夕飯を運んでくれたり、中学生だった長女の弁当を作ってくれたり。

カラッと、サクッと、ジュンはいつも笑顔で助けてくれる。


そして、ジュン、あんたはほんとによく頑張ったね。
ひとりで娘たち2人を育て上げて。

自分のことはいつも二の次にして、子どものために必死に働く妹を、強い人だな、と思ってきた。

子育てには手を抜かない必死さも、私の頑張る力になっていたよ。

そんなジュンが育てた子だから、

姪たちは我が家に来たら、二女のベッドの側から2人とも離れない。
二女のよだれを拭きながら、二女にずっと話しかけてくれてる。

母ちゃんそっくりの姪たちだ、と思う。



これからも、このまんまの姉妹でいようね。

親がひっくり返るくらいに、いろんなことがあった私たちの人生だけど、いつか2人で、のんびりと温泉にでも行けるといいなぁ。

そして、お酒とたばこは、ほどほどにね。
ジュン、あんた、まるでおっさんみたいだよ。(笑)



*****

おだんごさんの企画に参加させていただきます。

なかなか言えなかった妹への感謝を、あらためて言葉にする機会をいただきました。

誰かに想いを贈ることや、そんな想いたちを触れることは、ほんとにあたたかい気持ちになりますね。

おだんごさん、素敵な企画をありがとうございました。


私はD賞で、よろしくお願いします。




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