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僕の好きなミュージシャン③ 佐野元春

昨年の暮れ、佐野元春のエピック・ソニー時代のMVやテレビ・パフォーマンスを収録したDVD『THE VIDEOS EPIC YEARS 1980-2004』を購入した。

佐野元春『THE VIDEOS EPIC YEARS 1980-2004』

DVD作品で6,500円は正直高いが、何しろリリースが18年も前の2006年だ。
もちろん、その存在は前から知っていたけど「そのうちブルーレイで再発されるだろう」「MVだったら You Tube でも観られるさ」という理由から、購入は保留していた。
しかし最近、近所に(今どき珍しい)地元密着型のCDショップがあることに気づいて、そこに陳列していたこれを手に取ったのだ。
(ついでに言うと、最近の You Tube はこれみよがしに広告動画が連発されるのに嫌気がさす。)

昨今のブルーレイの高画質を見慣れた身としては、やはり多少の画像の粗さは目に付くものの、それを気にさせないほど80~90年代の佐野さんは抜群にカッコいい。
"国内で始めて制作されたMV"と喧伝されている「ヤングブラッズ」はもちろん素晴らしいが、僕にとって眉唾はやっぱり「約束の橋」だ。
ベレー帽を粋に被って、ロンドンを颯爽と闊歩する佐野さん。

佐野元春「約束の橋」MVより

それは、ヒットしていた当時に僕がテレビの歌番組かなにかで僕が初めて観た、佐野元春の姿だった。
30年経ってもその印象は全く変わらない、彼は僕にとって永遠の「憧れの大人」だ。


僕が佐野元春を知ったのは、前述のとおり高校の頃にドラマの主題歌としてヒットした『約束の橋』だった。
当時のタイアップ曲にしては異質な、端正ながらもかすれ声の、少しぶっきらぼうな歌い回しがワイルドなその曲は、当時の日本のヒットチャートに氾濫していた当たり障りないヒット・ソング(J-POPという名前はまだなかった)と違って、とてもクールで粋に思えた。
早速、CDレンタルで借りてきて聴いたアルバム『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』は、件の曲以外の楽曲も素晴らしいものばかりで、あっというまに彼の虜になってしまった。

近年、日本の80年代のシティ・ポップが世界的にも再評価されて久しいが、ご多分に漏れず佐野元春もその文脈で語られることが多い。
代表曲の「サムデイ」はもちろん、「二人のバースデイ」「バルセロナの夜」「NIGHT LIFE」「ワイルドハーツ」など、シティ・ポップ的な名曲も多数あるけど、彼の楽曲にはやっぱりどこか型にはまらないアウトローな雰囲気がある。
ドライブのBGM的にさらっと聴くのではなく、なにか心をかきたてられるものがあるのだ。

ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、ルー・リード、エルヴィス・コステロ、ニック・ロウ...
様々な偉大なミュージシャンのシルエットが透けて見える素晴らしい名曲群の数々は、いずれもインディペンデントなスピリットで溢れている。


デビューから40年以上経ち、常にフレッシュな音を届けてくれる佐野元春の作品は名盤だらけだ。
エピック時代の初期3枚はもちろん、日本語ラップの先駆けとなった『Visitors』、エルヴィス・コステロのバックバンドと組んだ英国録音作『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』、ウッドストックの伝説的なスタジオでザ・バンドのメンバーとレコーディングした『THE BARN』、近年のメイン活動・THE COYOTE BAND と作り上げた大人のロックンロール・アルバム『BLOOD MOON』など、枚挙に暇がない。
その中でも僕のフェイバリットは、都会をサヴァイヴするためのサウンドトラック『Heart Beat』と、英国的な端正な雰囲気が心地よい『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』、そしてアーシーな音作りと洗練さが絶妙な『THE SUN』の3枚だ。

ミュージシャンはもちろん、俳優や芸人やラジオパーソナリティーなど、クリエイティブな人達に彼の熱烈なファンが多いことは、よく知られている。
その感じはとても良くわかる。
彼の名曲を聴いていると、何かしらインスピレーションを得られるような気がするからだ。

しかし、そこに留まらず彼はもっと大衆的な人気を得てもおかしくない。
個人的には、山下達郎桑田佳祐に並ぶ、ジャパニーズ・ミュージシャンの重鎮だと思う。

深沼元昭や高桑圭など90年代に活躍した手練の国内ミュージシャンが揃う THE COYOTE BAND

初めて聴いて以来、僕にとって常に憧れの存在である佐野元春。
もっと世間的にも正当な評価を得られるべきだと、いつでも僕は思っている。


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