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うな重という行儀の悪い食べ物

うな重というのは、実に行儀の悪い食べ物である。
 
そもそもお重というのはだ、
昔の貴族やお殿様が行楽の際に
ご馳走をお重に重ねて持っていったものである。
やんごとなき身分のものだけに許される入れ物だ。
そんな高貴なものに、直にご飯を敷き詰めて、
脂っこいうなぎを乗せ、
さらに醤油とみりんで煮詰めた甘ったるい
タレをドバドバとかけて、
それをお重ごと食べるなど、まったくもって不謹慎である。
全然イケていない。
だめだだめだ!
 
想像してみてほしい。
あなたは、行楽先で立派なお重に入ったおかずを
そのままお重に口をつけて食べるだろうか?
答えはノーですよね?
小皿に盛ってから食べるでしょう?
それなのに、うな重ときたらお重ごと食べるのだから
如何ともし難い。
例えるならば、ビュッフェレストランの大皿ごと直に口をつけて
食べているようなものである。
もはや、冒とくだ。出入り禁止の沙汰である。
お前は織田信長か?と言いたい。
 
そもそもご飯というのはだ、
味がついていない白米がもっとも美味しいのだ。
 
そこにしょっぱいおかずや出汁の効いた汁物などを一緒に食べることにより、口内調理を行い味わうのだ。
お米だけの味、おかずだけの味、一緒になった時の味という
3つの楽しみ方をすることが醍醐味なのである。
 
だから私は吉野家では、牛皿定食一択だ。
実に、高貴で粋である。
 
それに対して、このうな重ときたらどうだ。
タレがビシャビシャ染み込んだご飯は
純朴な白米の美味しさを楽しむ余白がない。
さらに鰻だけの味わいを楽しむ余白もない。
渾然となった単調な味が一度に入ってくるのみである。
 
アメリカ人のハンバーガー、
イギリス人のサンドウィッチ、
メキシコ人のタコス、
食事の手間を省き、食の楽しみを知らないような
合理的主義の品のない人種にいつから成り下がってしまったのだ。
日本人はエスプリが効いた民族だったはずではないか?
私は残念で仕方ない。

ちなみに、念の為に、
私が死ぬ前に食べたい食べ物ベスト3をお伝えしておこう。
「ラーメン、寿司、うな重。」
以上。

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