見出し画像

チバユウスケに捧げた「第ゼロ感」

CDJ

12/29、COUNT DOWN JAPANに行ってきた。先行抽選では外れたものの、運よく1週間前にリセールでチケットが取れたのだ。

昼下がり、紅白目前の10-FEETを見に行く。

「ゆっくりスローのバラードやります!」からの「goes on」からメロディが琴線に染みる新曲「Re方程式」、「チバさんが褒めてくれた曲」と大好きな「その向こうへ」と「飛ばすで」と言った通り、かっ飛ばしていく。

「第ゼロ感」のイントロが鳴り響く。

ロック界とバスケ界を代表する最強アンセムとなり、誰もが知ってて誰もが歌える、熱気を帯びながらヒリッと強固な空気に変わるのを感じた。

”あの”死闘を思い出させる赤と白の照明に、TAKUMAさんが煽る訳ではなく自発的に生まれた4万人の魂がぶつかる力強いシンガロングは、あのだだっ広い会場がはち切れるかのようだった。

.

「第ゼロ感」の直後、聴いたことのある単音のベースから、次第にドラム、ギターが段々と合わさる。一気に引き金を引く直前のような独特な緊迫感が張り詰めた。

何も言わずに演奏を始めたのは「LOVE ROCKETS」のカバーだった。

「10-FEETの曲ではない」と「まさかカバーするの…?」と観客の静かな衝撃が、音楽そのものへの興奮の赤と、天国のチバさんへの祈りの青の対が両立し、粋な計らいとも追悼とも言える1曲が、一概には形容し難い渦となっていた。

ライブで「LOVE ROCKETS」を聴けたことに対しての興奮と、「やっぱり10-FEETがカバーしてくれた」という期待への安堵、しかも曲の紹介などMCをせずに「第ゼロ感」の直後の「LOVE ROCKETS」、天国にいるチバさんへの敬愛が全てあのカバーに曲に詰め込まれていた。

.

今年は様々なバンドマンがフェスやライブで自分らの持ち時間を削り、大切な自分達の曲の代わりに、バースデイやミッシェルをカバーしたのを聞いた。それも世代を超えて若手バンドまでもだ。

でもチバさんが遺した数ある名曲の中でも、「LOVE ROCKETS」をカバー出来るのは「THE FIRST SLAMDUNK」を一緒に音楽で作り上げた10-FEETしかいない。

何よりも彼らの代表曲の1つである「RIVER」をこの日演奏しなかった。

”全てはチバさんのために”、言葉ではなく音楽で、相当な覚悟を感じたのだ。

この日の「第ゼロ感」はフェスの新アンセムとして最高、チバさんへのレクイエムとして至高、直後の「LOVE ROCKETS」は祈りを捧げながらもクールで、その中にあるブレない一本柱の芯に熱気が宿り、誰がために贈る歌は、あまりにも美しかった。

紅白歌合戦

彼らのキャリアとしても最大の大舞台となった紅白歌合戦

”スラムダンクが好きな私”にとっては「出れて当然」と思いつつ、”ロックキッズの私”にとっては「あのライブヒーローのテンフィが紅白に…?」と、正式に出演決定の報道が出てからも1人で時空がバグっていた。私に限らず、バンド好きはみんなそうだと思う。

着飾らずに仲間の想いを背負い、ただ単に大舞台にライブハウスを持ってきただけで10-FEETは10-FEET、いや、ロックバンドはロックバンドだった。

自分がカッコイイと思ったことをやり続ける、伝え続ける、だから10-FEETが好きなんだ。

感情が爆発したのは、「THE FIRST SLAMDUNK」のコラボ映像が流れた時でもなく、オリンピック出場権を獲得し日本中を感動させたAkatsuki Japanの名プレイ集が流れた時でもなく、TAKUMAさんが「第ゼロ感」の歌唱中「スラムダンク、The Birthday、チバユウスケ!」と叫び、「LOVE ROCKETS」のフレーズを織り交ぜて歌ったことだ。

”魂が震える”とは、こういうことなんだなと思った。

ライブを主戦場とする彼らにとっては、フェスや対バンでも10曲前後は演奏出来るが、テレビでのパフォーマンスはたった1曲。その1曲にライブの熱量を詰め込む方が難しいのかもしれない。

一段と気合の入ったTAKUMAさんの灼熱のシャウト、大舞台でのチバさんへの追悼、バスケ日本代表へのエール、そして井上先生への感謝、優しさを根源とする全ての所作に震えた。

スラムダンクファンとしてでもなく、バスケ経験者としても、ロックキッズとしてでもなく震えたんだ、レッテルの無い本当の私の魂が。

.

CDJの時、観客から「紅白おめでとう!」の声が上がり観客同士で拍手はするものの、10-FEETはその言葉に一切触れなかった。

SNSでは日々様々なライブレポートが流れ、やはり紅白決定後の10-FEETのライブでは「紅白おめでとう」の声が客席からお祝いの言葉が飛んだと言った内容がいくつか流れてきたが、その祝いの声を拾っても対応はあっさりしていたり、もはや言及しなかったりと、主役は曲でも10-FEETではないと言わんばかりだ。

確かに「THE FIRST SLAMDUNK」の主題歌ではなければ、バスケ男子日本代表がオリンピック出場権を獲得していなければ、「第ゼロ感」がここまでの大ヒットにならなかったのかもしれない。

でもこれだけは言える、映画の世界的大ヒットにも、バスケットボールに人生を捧げる人たち全員にも、10-FEETの「第ゼロ感」と言う曲が強く背中を押した。

ジェリーの魂を永遠に

10-FEETのチバさんへの愛、しかと受けました。

ファンとして「THE FIRST SLAMDUNK」と共に駆け抜けた2023年。

CDJのリセールが当たったのは、きっと10-FEETの「LOVE ROCKETS」のカバーを聴かせてくれるためだと思う。

私は映画が大好きなただの観客、ロックバンドが大好きなただのファン。

「第ゼロ感」にも「LOVE ROCKETS」にも私の思い出が凝縮されており、作品に参加していないのにも関わらずやり切ったと感じるぐらいに、思い残すことは無い。

2023年の締めくくりとしては最高だった、でも絶対に終わらせないのだ。

2024年も、これからも、”ジェリーの魂”は持ち続ける。


この記事が参加している募集

フェス記録

最後までお読み頂きありがとうございます!頂戴したサポート代はライブハウス支援に使わせていただきます。