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三浦春馬が他界した日、家族が増えた

7月18日、三浦春馬が自ら命を絶った。

その前日の昨晩からベタを迎え入れる楽しみなのか、仕事でなんとかセーフだったがミスが発覚したためその不安からくるものだと思ったが、原因は分からないままだが胸騒ぎが止まらなかった。

胸騒ぎが収まらないまま週末は土曜日、正午、熱帯魚のベタを買いにペットショップに行った。

好きなイラストレーターさんがInstagramに投稿していたベタに一目惚れし、以前から熱帯魚を飼いたいと思っていたので、1週間ほど前についに買おうと決意、既に下見はしており、後は店員さんに「この子をください」と言ってレジでお金を払うだけの状態だった。

帰りに大好きなミスタードーナツに寄りドーナツを3つ、ベタと共に持ち帰った。

そそくさとベタのおうちを作るべく、水槽に砂利を敷き、水を入れてカルキ抜きをし、透明な正方形のガラスである彼を彼の家に迎え入れた。この子はこの家で落ち着けるだろうか、ちょっと様子見しよう。そう、私が一息ついた時だった。


いつも通りSNSを見る、いつも賑やかなタイムラインが、暗く唖然と、騒然としていた。


速報 三浦春馬 死去 


言葉が見つからなかった。

10年以上SNSをやっていて、はじめて誤報だと疑わなかった。

だけど、次から次へと目にするニュースは「三浦春馬 自殺 首吊り 遺書 マネージャー 発見 都内 病院 死亡 確認」まるでドラマのワンシーンでしか見たことの無い単語がズラリ、アナウンサーの誠実かつ力のある表情が嘘ではないと、判断した。


なかなか芝居に興味が湧かない私だが、演技と音楽は切っても切れないものだ。
好きな俳優は?と聞かれれば、三浦春馬は歴代トップ5に入るぐらい好きだった。

私が小学生の頃はケータイ小説が大ブームの「恋空」世代、三浦春馬の人気は収まらず、ドラマ「ブラッディ・マンデイ」「ごくせん」は毎週欠かさず見ていたし、映画の「君に届け」は忙しい部活のオフで友達とリアルタイムで映画館で観に行った。地元の映画館の大きなスクリーンに、分け隔てない人気者の風早くんが存在していた。

今まで花より男子の道明寺派か花沢類派かで盛り上がってた教室は「ブラッディ・マンデイ」のヒットで花男と同じくらいに三浦春馬か佐藤健で盛り上がっていた。

親が若い頃、皆山口百恵さんに熱中していたあの頃、老若男女問わずにSMAPに熱中してあの時代と同じように、学校中の女子のほとんどが三浦春馬が好きだった。三浦春馬という俳優は私の青春の1人でもあった。

あれから三浦春馬という人間を追っていた訳では無いが、どんなドラマでも映画でも三浦春馬が出演決定する度に「キャスト三浦春馬とか最高じゃん」と自然と思っていた。


今まで誰かが死んでも、何かしらワンクッションあった。

BOOMBOOMSATELLITESの川島さんがお亡くなりになったときは今までの闘病を知っていたがために「ついに来てしまった、お疲れ様でした、ゆっくり休んでください」と安らかに死を受け入れた。
バンドメンバーの中野さんがそのようなどっしりとした受け入れ方だったため、これからもブンブンの音楽を聴こうとすんなり受け入れた。

Fear,and Loathing in Las VegasのKeiさんが亡くなった時は「ライブキャンセル」の知らせが先に来た。急性心不全で死去、まさか、メンバーが25歳という若さで亡くなるとは思わなかった。

数ヶ月後、ヒトリエからも「ツアーキャンセルのお知らせ」がきた。
ベガスと同じ文面、同じ連絡内容、とてつもない嫌な予感は的中した。
ボーカルのwowakaさんの訃報だった。急性心不全。ボーカロイド時代から聴いていたwowakaさんの曲、ライブも見に行った、サインも頂いたこともある、もうあのひとの歌声もギターも新曲も聴けない。
「俺が歌わなきゃ死ぬと思った」とバントをした話していたのに、なんで死んでしまったんだ。そう思うたびに嘘だと言ってくれと、家で声を荒らげて泣いたあの日は、未だ忘れられない。


三浦春馬は、三浦春馬だけは唐突だった。

未だに三浦春馬(享年30)の表記が信じられずにいる。

遺書が残されていたため自殺だと推測されているが、遺書まできっちり残して死を選んだ。それだけ生きることに意味を見出せなくなってしまったのだと思うと、彼はどうしても死にたかったのかと思うと、救いの手すらも述べられない。けど、こんなに早くに逝って欲しくなかったんだ。


今朝、「英語日記BOY」の著者でありマスロックバンド・PENS+の新井リオさんが三浦春馬との思い出をTwitterで語っていた。

三浦春馬が自身の著書である「英語日記BOY」を読んでいたらしい。個人的にリオさんとは、本を出版する前のラストスパートをかけている時にライブに出演していて、少しだけライブハウスでお話ししたことがある。
ツイートを一気読みすると、リオさんとはほとんど同じ三浦春馬時代を生きていたために、朝から胸が苦しかった。憧れが憧れたままの美しい関係を保っていたのに、その憧れが突然居なくなってしまった喪失感どころではないやり場のない気持ちは、考えただけで自分も潰されそうになった。


表向きは充実していて仕事も楽しそう、芸能界の部類で言えば成功してたように思う。三浦春馬と関わった人皆「真面目 ストイック 優しい」と、誰一人彼を悪く言う人は居なかった。

ぼくのりりっくのぼうよみが「周りが作った天才という偶像に当て嵌められたくない」と音楽業界を去ったように、私も三浦春馬に対する偶像で、知らぬ間に彼を苦しめていたのかもしれない。
真面目、優しい、演技が上手、笑顔が素敵、穏やか、繊細。それが私の三浦春馬に対するイメージだ。未だにそう思ってる、まだ生きてると思っているから。

どうして自ら息の根を止めてしまったのだ、どうしてと問いかけても、きっと返事は聞かせてくれない。繊細でひとりで抱え込んでひとりで悩んでしまっていたから、そう思うのは私もひとりで抱え込みひとり息絶えるタイプの人間だからだ。


白鳥のように堂々と美しい人間が、前触れなく、ひとりで、静かに、この世を去った。キャンドルの火が消えるように、いつの間にか灯がふっと消えた。死に方まで美しいだなんて、でも、今でなくてもよかったのではないか、自分で自分を殺さなくても、よかったんじゃないか。彼なら残された人のことは考えているはず、そんな周りの人間のことも考えられないほどに追い詰められていたのではないか。

実際にお会いした事なんてもちろんないのに、三浦春馬は顔も心も美しい人だと思った。「美人薄命」という言葉がある。意味はそのまま、美しい人は短命だという意味だ。


青色のベタがドレスのようなふわりとした尾びれを揺らしながら、一匹にしては大きめの17cm角の正方形の水槽を優雅に泳ぐ。私の青春を彩ってくれた三浦春馬が死んだ日に、新しい家族を迎えた。私が生涯で初めて自ら選んで、初めて迎え入れた命だ。当たり前に偶然だが、必然だと思う。

君を迎え入れた日、私の好きな三浦春馬というこの世でもトップクラスに美しい美しい人間が自ら命を絶ったんだ。君は魚だし、人間という存在は分かっていても、どの人間が美しくて、どの人間が汚いだなんて、知るはずがない。でも、なんだか意味がある気がしたから言うよ。


私はこの子だけは「美人薄命」だなんて言わせない。

私が守る。


三浦春馬 様

今まで数ある素敵な作品を届けてくださり、ありがとうございました。特に小学6年生の時にドハマリしていた「ブラッディ・マンデイ」が大好きです。

多大なるショックで貴方がこの世を突然去ってから仕事中も、家にいる時も、なんだか上の空です。今はライブハウスの世界で生きているため、正直今人気の俳優さんやドラマ、映画などには乏しいのですが、紛れもない事実は初めて俳優さんを好きになったのが三浦春馬さんでした。私の思春期、青春を彩ってくれた俳優さんでした。ここまで情緒が左右されるほどにショックを受けているのは、当たり前だと思ってます。精神的にぐらついていると言いつつこんなに乱文を書くほどに平然としていられるのは、貴方がまだ生きていると思っているからだと思います。

この業界で当たり前に俳優の一線を走ってきた貴方がいきなりいなくなった途端、貴方の凄さと影響力を痛感いたします。何年もオタクをやっておりますので「失ってからでは遅い」と何度も教わり知ったはずなのですが、恥ずかしながら学習能力は人よりも劣っているそうです。

私は無論天国に行ったことないのでわかりませんが、一度だけ天国のような景色を見たことがあります。大好きなライブハウスで、とあるバンドのライブでした。
春の昼下がりのようなぽかぽかとしたあたたかさで、綿菓子のような真っ白のふかふかの雲、根も刺もない真っ赤なバラが一輪咲いていたように見えました。行ったことないのにあれが天国なのか、と思いました。慣れない死後の世界でしょうが、容姿も心も美しい貴方が、私が見た天国の偶像そのまま美しい世界で余暇をくつろいでおられれば嬉しいです。きっとお似合いです。

天国の貴方のためにできることは貴方の住んでいた部屋や事務所に花束を送ることでも、無理やり霊能力者に死んだきっかけを聞き出すことでもないです、貴方のお芝居を見ることです。貴方の演技は永遠です。

私たちの見えないところでひとり苦しんでおられたのでしょう、死を選択した貴方を受け入れるしか方法がありません。頑張ってくださいでも応援してますでも締め括れない手紙ははじめてかもしれません。

しばらく貴方がこの世を去ったショックは続くと思います。でも、貴方はたくさんの人にショックを受けさせたとか、迷惑をかけたとか、思わないで欲しいです。貴方が他界して私はとてもショックですが、貴方はそれ以上に生きていることが辛かったのでしょう。まだ30歳が、貴方にとってはもう30歳、かもしれません。生前の苦しみはこの世を去ってから癒えるものなのかは分かりませんが、ごゆっくり休んでください。

安らかに、穏やかに、R.I.P


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