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【小説③】神さまと我が子のおしゃべり聞いちゃった。〜おかあさんが笑顔になる10の法則〜〈第一夜〉

第1話はこちら。

小さな幸せは目の前に。

この物語はフィクションです。

静かな月明かりだけの薄暗いリビングで
むむさんと神さまのおしゃべりは続いていた。

むむさん
「みんなすでに幸せ?幸せは気づくもの?」

神さま「そうじゃ。みんな幸せになろうと頑張っている。そしていつかは幸せになれると信じているじゃろ」

むむさん「それが普通じゃないの?」

神さま「悲しいことにそのいつか”はやってこないんじゃなぜなら幸せはもう目の前にあって、気づくものだからじゃ」

きょきょさんは
なんとも言えない表情でうなづいた。

確かにそう。
本やテレビやネットで何度か聞いたことあった。
幸せは常に目の前にあるってことは。

なんとなーく分かる。
でも、それが分かっててもできないの。
理由も分かってる...

むむさん「なんでみんな目の前の幸せに気付けないの?」

神さま「それはの...心の余裕がないからじゃ

うん。神さまその通り。

むむさん「心の余裕?」

神さま「世の中みんなちょいと忙しすぎる。また、いろんなものに執着しすぎてる。心の倉庫がぐちゃぐちゃの状態なんじゃな。

“心のゆとり”がないせいで、目の前の幸せに気づく余裕がないんじゃ」

心のゆとり。

そう。私の日常は忙しすぎる。

2人の子育て、家事、仕事、ママ友の関係...
考えることが多すぎて、心のゆとりなんて全然ない。

神さま「人生とはもっと楽観的でええんじゃが、大人たちは何かしら常に悩み、忙しくしておる」

むむさん「うーん。確かにぼくらからみても大人は大変そう。お母さんもお父さんもいつも一生懸命働いてる。もっとのんびりしてほしいのに」

むむさん「どうすれば大人でものんびり心のゆとりができるの?」

そう。それが知りたい。
この心の余裕がない生活から抜け出したい。

お願い。神さま教えて。

神さま「それはな...」

感謝すること。

神さま「感謝じゃ

感謝?

むむさん「感謝?感謝ならいつもしてるよ!お父さんお母さんもしてると思う!だって“ありがとうってちゃんと言いなさい”ってお父さんお母さんから習ったんだもん!

確かにそう。
人に助けてもらったりしたら
ちゃんとお礼を言いなさいってしつけはしてきた。

私たちもちゃんと感謝はしてる。

神さま「例えばどんなときにありがとうって言ってる?」

むむさん「うーんと例えば、道に迷って困って助けてもらったとき!」

神さま「うんうん。それは“ありがとう”じゃな」

むむさん「あとは〜、おじいちゃんにお小遣いもらったとき!」

神さま「おお。なるほどな」

神さま、何が聞きたいんだろう?

神さま「では毎食のご飯のとき、感謝はしてるかな?」


本当の感謝とは?

むむさん「え?ご飯のとき?...ほとんどおかあさんにありがとうって言ってないかも...」

むむさんは
なんとも気まずそうな顔をした。

神さま「そうかそうか。ぜひ次お母さんありがとうって言ってあげなさい。あとな、ご飯のとき“ありがとう”と言うのは、別にお母さんにだけじゃないぞ

むむさん「え?」

神さま「今日の夕飯はカレーだったじゃろ。カレーには、にんじん、じゃがいも、玉ねぎ、豚肉も入っていたな」

むむさん「うん」

神さま「それはお父さんが一生懸命働いたお金で買えたのものでないかな

むむさん「あ!確かにそうだ!お父さんにありがとう言わなくちゃな」

確かに。
私もお父さんに“ありがとう”って言ってなかったな。

毎日ご飯作ってるのに
誰からもありがとうって言われないなってこと
ばかり考えてた。

神さま「まだまだ感謝する人はいるぞ」

むむさん「え?誰だろ?」

神さま「にんじんやじゃがいもを作った農家さんじゃろ。あとはそれをスーパーに運んでくれたトラックの人。売ってくれたスーパーの店員さん」

むむさん「あ!その人たちがいなかったら、今日カレー食べれてないんだ!」

神さま「ふふ。その通りじゃ」

むむさん「あとにんじんさんも、じゃがいもさん、玉ねぎさん、ぶたさんにもお礼言わないと!」

神さま「さすがじゃな。その通り。生き物同士の感謝は絶対必要じゃ」

むむさん「あ!まだまだいるよ!農家さんが元気じゃないとにんじんを作れないから、農家さんたちが食べてるものを作ってる人たちにも感謝して、それを運んでいる人にも、売っている人にも、さらにその先の人にも、さらにその先の人にも感謝して...」

あ。

神さま「なにか気づいたようじゃの」

むむさん「ぼくらはみんな繋がってるんじゃない!?全員が繋がって生きてるんだ!だから会う人みんなにお礼を言わべきなんだ!」

きょきょさんは
なんか不思議な気持ちになった。

みんな繋がっている。

隣のご家族も、今日の買い物でレジ打ちしてくれたあの人も、電車で隣に座ったあの人も、道でただすれ違ったあの人も。

この人たちがいるから私たちは生きていけるんだ。

神さま「カレーを食べれることって幸せじゃろ?」

むむさん「うん!みんながいるから食べられるんだ!めちゃくちゃありがたいことだね!」

きょきょさんは
なんだか涙が出そうになった。


あるものに目を向ける。

神さま「不幸な人はの、“ないもの探し”ばかりしている。お金がない。時間がない。感謝されない。本当はすごく恵まれているのにも関わらずじゃ。

幸せになる方法は、あるものを目を向けること、小さな感謝をたくさんすることじゃ

なんか全てが幸せに感じてきた。

屋根があるところで寝れるのって幸せ。
布団で寝れるって幸せ。
毎日ご飯を食べれてるってすごい幸せじゃん。

毎日温かいお風呂に浸かれるのも
蛇口をひねって当たり前に水が飲めるのも
車や電車、バスですぐに遠くに行けるのも

全部すごいありがたいことだ。

洗濯機も掃除機も。
服や靴も。

当たり前だと思ってたものって
本当は全部すごい。

むむさん
「全部ありがとうって言いたくなってきた!コンビニのレジの人にもこれからありがとうって言う!ファミレスでご飯食べたら店員さんにも言う!

人だけじゃない!
魚や野菜、牛や豚にも言う!」

むむさんにもすごく響いてる。

神さま「それだけかい?」

むむさん「おあかさんにも、おとうさんにもっといっぱいありがとうって言う!だって2人がいなかったら、ぼくは今当たり前に楽しんでいることを楽しめてないんだから!」

神さま「ほっほっほっ。素敵じゃ!」

むむさん「あ、あと!」
神さま「あと?」

むむさん「自分にもありがとうって言う!」

自分?

むむさん「だって自分が一番自分と長く一緒にいる大切な人だから。一番感謝しないと

神さま「ふぉふぉふぉ!キミはすごいな!次に教えようとしていたことをもう分かってしまったな」

自分に感謝...
それは全然なかった着眼点だ。

そうだよな。
自分がまず自分に感謝しないだ。

すごいな。むむさん。

むむさん「そうなの?!次の話聞かせて!」

神さま「今日はここまでじゃ。また来月じゃな。最後に宿題を出すぞ」

宿題。

むむさん「宿題なんだろう?むずかしい?」

神さま「いやいや、難しくないよ。宿題は2つじゃ」

神さまはまた黒板を出現させて
そこに文字を浮かばせた。

【神さまからの宿題】
朝起きたとき、「幸せだなぁ」とつぶやくこと。
夜寝る前にその日あった感謝することを3つノートに書くこと。

感謝することをノートにか...
私も手帳に毎日書いてみようかな。

朝のやつはちょっと照れくさいな〜...

神さま「これだけで幸せになれるぞ。ぜひやってみなさい。そしていっぱい笑顔になって、お母さん笑顔にするじゃぞ」

むむさん「学校の宿題は嫌だけど、これなら頑張れる!お母さんを笑顔にするよ!」

神さまはニヤリと笑って
持っている杖を振りあげた。

目を開けられないくらいの眩しい光が
杖から放たれ、きょきょさんは思わず目を瞑った。

光が落ち着き、きょきょさんが目を開けると
布団の上だった。

横を向くといつもの風景。
お父さんとめめちゃんが寝てる。
そしてむむさんも。

あれはなんだったんだろう。
夢?でも記憶は残ってる。

時計の針はもうすぐ6時。
よし。起きて朝ごはんを作るか。

改めて3人の寝顔を見たきょきょさんは
思わず呟いた。

「幸せだなぁ」

「あ」と
自分が自然と呟いたことに少し照れつつも
すごく心が満たされていることに気が付いた。

いつもと同じ朝だけど
いつもと違う気持ちで一日がスタートした。


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