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私は二次元の「推し」しか知らない #創作大賞感想

青豆ノノさんの創作大賞応募作・「ソウアイの星」


主人公の女性・流香は推しバンドCALETTeのヴォーカル・朔也と恋人に見られるほどの仲。でも彼女はファンとして、朔也とは一定の距離を保っている。しかし流香の中にいる実体のない友人・ルナは朔也に恋心を抱いており、二人は何度か衝突してしまう。
果たして彼らの関係はどうなっていく……?

というのが大まかなお話。
実は感想文を書かずにいようと思っていた。なぜかというと、ノノさんは大人気の作家さんで、ソウアイの星も既にたくさんの方が感想を書かれていたからだ。感想を投稿したら、ノノさんはきっとご丁寧に読んでくれる。

「でも読むのは大変だろうし、コメントでちょこっとお伝えしよう」そう思った。
そして日々は過ぎ……

いやいやいや! 好きなんだから素直に感想書けよ!
まだ読んでない人に伝えたいし、なんならノノさんには小説を書き続けて欲しい! それを伝えないと!

と、昨日急に熱い気持ちが滾り今に至る。

前置きが長くなったが、この小説には面白い設定がある。それは流香がタルパマンサーだというところ。

流香の中には「ルナ」という現実には存在していない友人がいる。流香とは別の意思を持ち、他人と勝手に会話をしたりもする。そういう人たちのことをタルパマンサーというらしい。私はこの単語を初めて知った。調べてみると、意図的にそういう存在を作り出すことができるとのこと。すごい。

だから流香とルナは性格が違うし、食べたい物が違ったりする。
当然、流香の推しである朔也に対する気持ちと向き合い方も違う。流香はファンとしてきちんと線を引きたいが、朔也が好きなルナにはそんなこと関係ない。

そのせいで彼女たちはぶつかることになるが、二人の気持ちに少しずつ変化が出てくる。気を遣わず何でも言い合って、それぞれが自分自身の心を確認できたのかもしれない。

「実在しない友達」と文字で書くとインパクトがある。だがファンタジーではなく現実でもあり得ることだと知って、驚いたし嬉しくなった。
なぜかといえば、私にタルパはいないがよく妄想をするからだ。「この歳になっても子どもの頃とやってることが変わらないな、いいのかな」と、ふと思うことがある。

流香とルナはそれとはベクトルの違う話だが「自分の中は自由でいいんだ」と思えて少し気が楽になったのだ。

そして恋愛パートは……
流香の本心がなかなか見えず、私にとってはとてもじれったく「流香! いけ!」と何度も叫びなから読んでしまった。そして焦らしに焦らされてついに!? というところで「流香ぁぁぁ!!」と思わずクッションに叫び散らしたくなる展開が待っていた。でもそれは、推しに対する愛があるからなのだけど……とにかくノノさんの手のひらの上でぐるぐるに転がった。皆さんも読んで、ぜひ転がされればいいと思う。

私は二次元オタクで、推しは基本的に二次元だ。しかも一人で楽しむむっつりタイプ。漫画を何度も読み返して、このシーンのこの表情いいなあ! とか思ったり、某所で二次創作を漁ってニヤニヤする。だから現実に存在する人を推す、というのはどんな感覚なのだろうと興味はあった。
その感覚は最後まで読むとわかってくる。「推し」とはどんな存在で、「ファン」がどんな愛情を持っているのか。
ネタバレせずにいうと、「どこまでも澄んだ色」だなと感じた。ファンの持つ愛情は、こんなにも美しいものなのかと思った。応援する気持ちが真っ直ぐで、純粋なのだ。それが私との違いか……

あとは最後に好きなシーンを。
感動的な場面や心にぐっとくる表現はいくつかあるが、私はあえて流香が職場の先輩からランチに誘われるシーンをあげたい。
先輩のお店のチョイスが最高。そのあとの会話も楽しい。私はここで先輩のことが好きになった。
本筋には関係ないが、ノノさんのこういう謎に面白いセンスが私は大好きだ。
どんなお店なのかは、ぜひ本編で🐟


推しの好きと恋愛の好きはどう違うんだ?
焦れ焦れの話が読みたい!
そんな方にぜひ読んでいただきたい作品です。

そして私は書籍でも読んでみたい。
noteさん、私の推し作家さんを何卒お願いします!





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