今までと、これからのMTGアリーナ - ヒストリック環境を考える

2021年、ヒストリックはインフレの炎に包まれた!

ヒストリックホライゾンがリリースされてから早くも1週間以上が経過し、環境がある程度煮詰まってきた昨今。
このヒストリックホライゾンを含めた今日に至るまでのヒストリック環境を考え、まとめて行きたいと思う。

ヒストリック環境について

まず現在のヒストリックの構成セットを振り返ってみよう。

・MTGアリーナリリース後発売セット
→イクサランブロックからフォーゴトン・レルム探訪まで
・各種リマスターセット
→アモンケット、カラデシュ
・ヒストリックアンソロジー1~5
・Jumpstart各種
→Jumpstart、Jumpstart:Historic Horizons
・ミスティカルアーカイブ

ここまで述べてたセットによってヒストリックフォーマットは構成される。
また下記のカードは禁止/一時停止措置が施されている。


・裏切り者の工作員/Agent of Treachery
・チャネル/Channel
・対抗呪文/Counterspell
・暗黒の儀式/Dark Ritual
・悪魔の教示者/Demonic Tutor
・死者の原野/Field of the Dead
・創案の火/Fires of Invention
・稲妻/Lightning Bolt
・自然の秩序/Natural Order
・運命のきずな/Nexus of Fate
・王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns
・創造の座、オムナス/Omnath, Locus of Creation
・むかしむかし/Once Upon a Time
・剣を鍬に/Swords to Plowshares
・時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler
・タッサの神託者/Thassa's Oracle
・時間のねじれ/Time Warp
・自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath
・夏の帳/Veil of Summer
・荒野の再生/Wilderness Reclamation
・軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces
・渦巻く知識/Brainstorm

これらを踏まえて、現在環境の中心にいるであろうデッキとしては


・《ティボルトの計略》+《混沌の辛苦》デッキ
・《調和の神童》系デッキ
・上記のデッキを倒す事を目的としたデッキ
(黒を中心としたハンデス系、アゾリウスカラーを中心とした打消し系等)

上記があくまで主観ではあるが、筆者なりのヒストリック環境の分析である。
以上を踏まえて、主に不満を持ち始めたアモンケットリマスターからJumpstartの頃からの環境の振り返りをしていこうと思う。
(筆者は一応ヒストリックがランク戦対応時からのプレイヤーであるが、あくまで当初の環境を主観的に述べている事だけ注意して欲しい)


アモンケットリマスター以前

記憶に新しい環境は旧相棒ルール適用時の事だろうか。
当時はヒストリック限定の実装が『ヒストリックアンソロジー3』までであり、あまりスタンダードにごく一部のカードが足されたデッキが中心だったように記憶している。
ただし、その中でも《絶え間ない飢餓、ウラモグ》だけは飛び抜けて強力であり、色んなデッキがこのカードを踏み倒したりマナ加速をして使っていた記憶がある。
筆者も《深海の破滅、ジャイルーダ》で《ウラモグ》や各種偶数のクリーチャーを踏み倒して初めてミシックまで到達した記憶がある。
旧相棒ルール時点では色んな意味でバランスが取れており、現行のルール変更後は比較的良環境だった印象だ。


アモンケットリマスター~Jumpstart期

第一の黒船襲来である。
アモンケットリマスターで《思考囲い》や《神の怒り》、《集合した中隊》などの現在でも使われている強力なスペルを始め、赤が《焼けつく双陽》や《神々の憤怒》を獲得したり、緑が《約束の刻》を使って《死者の原野》で大暴れしていた印象がある。
ここで筆者が疑問視したのが、アモンケットブロック外からの再録である。
先に挙げた環境で使われたカードは一部を除き本来はアモンケットブロックに収録されていない、良くてMasterpiece収録のカードである。
本来の収録されていなかったカードが活躍するのは些か疑問に思った。
そうこうして環境が少しずつ煮詰まってきた段階でJumpstartの実装である。
やはりここで一番取り上げるべきは“ゴブリン“デッキであろう。
Jumpstart初収録の《上流階級のゴブリン、マクサス》を引っ提げ、《群衆の親分、クレンコ》や《ゴブリンの酋長》を獲得した“ゴブリン”は瞬く間に環境を制した。
またこの影で《集合した中隊》を用いて各種ロードや《アロサウルス飼い》を獲得した“エルフ”も環境でそこそこ見かけた。

この辺りからインフレの第一段階である「生き物の過度な強化」が始まったと筆者は考えている。
特に《マクサス》や《アロサウルス》なんかは優秀な打消しカードや軽量除去が不足する中で突如現れたエターナル向けのカードであり、

何故アリーナで許したのか分からないカードパワーを持つカード

であった。


カラデシュリマスター期

このセットは新規に登場した強力なデッキは少なく、優秀な軽量除去である《致命的な一押し》やコントロールデッキが《奔流の機会巨人》を獲得したり、環境初期には《霊気地の脅威》を使った踏み倒しデッキが居た程度だと思う、ある一枚を除いては。
《通電の喧嘩屋》、色拘束が強いが、2/3/2と優秀なP/Tを持ち、エネルギーを使って4/3トランプルになるクリーチャーだ。
これが前期に一時停止から帰ってきた《炎樹族の使者》と手を組んで早期に削り切る“グルールアグロ“を一部環境で見かけるようになった。強い色拘束も、この《使者》によって無いも同然である。
因みにこの《炎樹族の使者》、読者ももう十分存じているだろうが、今後も緑か赤で殴るならとりあえず採用されるレベルにおかしいカードである。
またその裏で今後悪さする《不屈の独創力》もひっそりと追加されている。


ミスティカルアーカイブ期

黒船、その二。
この頃に登場したデッキは《時間のねじれ》を《ヴェロマカス・ロアホールド》で踏み倒す“ドラゴンワープ“や《信仰無き物あさり》や《渦巻く知識》で動きが極めて安定していた”イゼットフェニックス“、2マナの確定打消しや《渦巻く知識》で苦手だったハンデス系に耐性を貰いつつ《稲妻の一撃》でアグロ耐性も高い”ジェスカイコントロール“、そして何より同時実装の『ストリクスヘイヴン』にて多数の2色カードで大幅に強化された”5cニヴ=ミゼット“と言った多種多様なデッキが登場、環境が一転した。
当時の新登場デッキはその多くが《信仰無き物あさり》や《渦巻く知識》と言ったレガシー級の軽量スペルを使って環境を大きく塗り替え、最終的には《時間のねじれ》が一発禁止、《渦巻く知識》が一時停止処置をされている。

これらを見るに、恐らくWotCは昨今の強力になった生き物に対抗してスペルも強化をすることでヒストリック環境を整えたいと言う目線もあったのではないかと今は思う。
だがしかし、これらの強化の行先が現代の優秀な生き物の強化であり、その結果が上記の2枚の禁止/一時停止だ。
因みに筆者は《物あさり》で落とした《根本原理》を《ミジックスの熟達》で踏み倒すデッキを使っていた。結構強かった思い出がある。

Jumpstart:Historic Horizons期

そして現在である。このセットにも結構な不満はあり、特に本来モダン向けに刷られた『モダンホライゾン』並びに『モダンホライゾン2』のカードが多数収録されているのが本当に謎である。
筆者がこのヒストリックホライゾンのプレビューの際に期待していたことは

「MTGアリーナならではのゲーム」

である。その証拠に永久や抽出、創出などには強い期待を持っていた。
けれども、実際にランク環境で使われているのは殆どがモダンホライゾン産のカードであり、精々黒が《ダブリエルの萎縮》を使っている程度に過ぎない。この結果には本当にがっかりしている。

終わりに – ヒストリックから考える、WotCの目線

ここまで状況を整理してきて感じたことが

「ヒストリックと言うフォーマットは『エルドレインの王権』から抜け出そうとしている」

と言う事である、あくまで筆者の空想ではあるが。
このフォーマットには勿論スタンダード落ちと言う影響はない。
だからこそ、公式から強すぎたと言われる『エルドレインの王権』とは、これからも付き合っていかなければならない。
そんな中で現在のスタンダードのようなパワーのカードを実装しても環境が変わらずヒストリックが飽きられるのではないかと思う。
現に、現在のヒストリック環境ではスタンダードでも禁止になった《幸運のクローバー》を中心とした出来事デッキは存在しない。それどころか《厚かましい借り手》すらも見る事はあまり多くはない。但し《砕骨の巨人》は一生見る、赤が強いからね。
そう言った意味においてヒストリックと言うフォーマットは

「脱『エルドレインの王権』」

が成功しているフォーマットであるように見ることが出来た。
けれども、1つの壊れた構築セットから抜け出した先にあるのが更なるインフレである。現に今も活躍しているデッキの多くが“既存のデッキのアップデート”ではなく“新セットのカードをふんだんに用いた新デッキ”である。
これからのヒストリックが更に突き抜ける方向で環境が進化していくのか、若しくは強くなり過ぎた力を抑える形で進化していくのか。どうなっていくのかは、恐らくまだ誰にも分らないのではないだろう。

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